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主演:二宮和也×監督:瀬々敬久「本気の人は人の心を動かす」 映画『ラーゲリより愛を込めて』対談
瀬々監督は「チャーミング」
瀬々監督原作の辺見じゅんさんのノンフィクション「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」(文春文庫)を読んで興味を持ちました。僕が子どもの頃は「岸壁の母」(※)がヒットしたり、夏になると遺族がシベリアに遺骨を探しに行くことをニュースで取り上げたりしていたので、シベリア抑留の事実が近しかったけれど、最近は忘れられがち。自分たちの歴史、出来事として捉え直すことも大事なことだと思いました。
※「岸壁の母」=ソ連による抑留から解放され、引揚船で帰ってくる息子の帰りを待つ母親の呼称。これをテーマにした二葉百合子の歌のタイトル。ドラマ化もされた。
瀬々監督ごまんとはいないよ(笑)。
二宮いますよ!
二宮瀬々監督がこれまでに撮られた作品を観てきて、硬派な主人公が多いイメージを持っていました。僕は突出したもの、例えばアクションができるとか、違う言語をしゃべれるとか、そういう特徴を持っているわけではないので、インする前は、自分はどういう貢献ができるのだろう、と考えていました。ただ、実際に撮影に入ってみると、瀬々監督はひと言でいったら「チャーミングな方」だったんです(笑)。
瀬々監督は、主要キャストと呼ばれる5人(二宮、松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕)以外のキャストの名前も全員覚えていて、「君!」とか「そこの!」とかではなく、名前を呼んで指示を出して、一人ひとりに指示を出している姿を見ると、当然、役者のモチベーションは上がりますよね。
瀬々監督今回はレギュラーの抑留者を演じる役者が全部で60人くらいいたんですよね。全員、オーディションで選んでいるのでそれぞれ個性があるし、それはラーゲリの中にいた人たちもそれぞれ個性を持った人たちだった。例えば、主演の二宮くんがしゃべっている時に、ほかの抑留者たちがそれぞれどの位置にいるか、というのは非常に重要だったんです。ラーゲリ内でも日本軍での上下関係がそのままあって、二宮くん演じる山本は“下”の方だから出入口に近いところにいて、部屋の奥にいくほど位が“上”の人が座っていた。役者の個性を見極めて、奥に座ってもらう人を決めたり、手前にいてもらう人を決めたりして、役者にはそれなりの芝居をしてもらう。群像ものって、その場にいる全員が重要なんですよ。そもそも、カメラの前にいる一人ひとりが生き生きしてないと、映画に活気が生まれないんですよね。
二宮エキストラで参加してくださっている方々への演出も、助監督に任せるのではなく、瀬々監督自ら指揮を執っていられたからか、ものすごく活気にあふれていました。こんな現場、初めてでしたね。エキストラの方も設定に合わせて配置されてバランスを調整される。細かいところまで徹底しているな、思いました。
すべての出演者の意見を平等にくみ取ってくれる、そういう監督に出会えたのも、僕らにとって心強かったですね。僕ら俳優の意見もある、監督自身の意見もある、製作サイドからの意見もある。この3つがまったくかみ合わない時もある。だけどなんとか、落としどころを探ろうとして、瀬々監督は悩むんですよ。現場で、うーん、うーんって悩んでいた姿もとてもチャーミングでした。
二宮瀬々監督がこれまでに撮られた作品を観てきて、硬派な主人公が多いイメージを持っていました。僕は突出したもの、例えばアクションができるとか、違う言語をしゃべれるとか、そういう特徴を持っているわけではないので、インする前は、自分はどういう貢献ができるのだろう、と考えていました。ただ、実際に撮影に入ってみると、瀬々監督はひと言でいったら「チャーミングな方」だったんです(笑)。
瀬々監督は、主要キャストと呼ばれる5人(二宮、松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕)以外のキャストの名前も全員覚えていて、「君!」とか「そこの!」とかではなく、名前を呼んで指示を出して、一人ひとりに指示を出している姿を見ると、当然、役者のモチベーションは上がりますよね。
瀬々監督今回はレギュラーの抑留者を演じる役者が全部で60人くらいいたんですよね。全員、オーディションで選んでいるのでそれぞれ個性があるし、それはラーゲリの中にいた人たちもそれぞれ個性を持った人たちだった。例えば、主演の二宮くんがしゃべっている時に、ほかの抑留者たちがそれぞれどの位置にいるか、というのは非常に重要だったんです。ラーゲリ内でも日本軍での上下関係がそのままあって、二宮くん演じる山本は“下”の方だから出入口に近いところにいて、部屋の奥にいくほど位が“上”の人が座っていた。役者の個性を見極めて、奥に座ってもらう人を決めたり、手前にいてもらう人を決めたりして、役者にはそれなりの芝居をしてもらう。群像ものって、その場にいる全員が重要なんですよ。そもそも、カメラの前にいる一人ひとりが生き生きしてないと、映画に活気が生まれないんですよね。
すべての出演者の意見を平等にくみ取ってくれる、そういう監督に出会えたのも、僕らにとって心強かったですね。僕ら俳優の意見もある、監督自身の意見もある、製作サイドからの意見もある。この3つがまったくかみ合わない時もある。だけどなんとか、落としどころを探ろうとして、瀬々監督は悩むんですよ。現場で、うーん、うーんって悩んでいた姿もとてもチャーミングでした。
俳優の勘を信じている
瀬々監督僕は俳優の意見をまず信じます。俳優って、勘が鋭い。だから俳優をやれているんだと思うけど。
二宮なるほど、なるほど。、
瀬々監督現場で俳優が言うことには一理あるなと思う。だから、思ったとおりやってもらうことはある。やってもらって、僕が違うな、と思うこともあるけど、やってみないとわからないから。
二宮1回でもやらせてもらえるというのが俳優としてはうれしいんですよ。結果、採用されてもされなくても、検討してくれたことが励みになります。
瀬々監督ありました。劇中で山本が「戦争って酷いもんですね」と松田(松坂)に向かって弱音を吐くシーンがあるんだけど、それは二宮くんからこういうことを言いたい、という話を聞いて、最終的にああなったシーンですね。
二宮僕が演じる山本を完璧な人、ヒーローとして描いてほしくなかったんですよね。人はどこかしらダメなところ、弱いところがあるものでしょう。不完全だからこそ、戦争が起きてしまうわけで、そういうことを突き詰めていくと、ラーゲリで一筋の希望の光であった山本でも、完全ではないから、どこかで毒を吐いたり、人間らしい弱音を吐くところもちゃんと描いてほしいとお話しました。
僕は実話をベースにした作品で実在した人物の役をやらせてもらう機会が多いな、と思っているんですが、その人がすごかった、すばらしかったと、美辞麗句を連ねるだけではなく、僕らと同じ人間なのに、こんなにもすばらしいことができた人がいたんだ、自分も山本さんみたいになりたい、なれるんだ、と観客に思ってもらえるように描かないと、映画にする意味がないと思っていたので、撮影に入る前にそういうお話をさせていただきました。
瀬々監督エンタメというか、本気の人は人の心を動かすんですよね。本気で言っている人の言葉は響いてくるんですよ、やっぱり。
二宮確かに、そうですね。エンタメの世界でも、本気な人ほど多くの人に支持される。でも、震災の時やコロナ禍でも「不要不急」と言われるのがエンタメじゃないですか。「不急」ではあるかもしれないけれど、「不要」ではない。絶対に「必要」だし、その必要をつくっていくのが僕らの仕事でもあるし。僕らがエンタメの力を信じて、瀬々監督のおっしゃる本気になれるか、ですよね。『ラーゲリより愛を込めて』の現場は、瀬々監督をはじめ、出演者もみんな本気でしたし、結果的に観客の皆さんの心をポジティブな方へ動かせるんじゃないかと思っています。
予告編
原作:『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(著:辺見じゅん/文春文庫)
監督:瀬々敬久
脚本:林民夫
企画プロデュース:平野隆
出演:二宮和也 北川景子 松坂桃李 中島健人 寺尾聰 桐谷健太 安田顕 ほか
制作プロダクション:ツインズジャパン
配給:東宝
公開日:2022年12月9日(金)全国東宝系にて公開
(C)2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 (C)1989清水香子
公式サイト:http://lageri-movie.jp/