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著名人タレントの日めくりカレンダー需要拡大のワケ タレント本衰退から“パワーワード”のみを簡潔に提示する“金言”がトレンドに
従来のカレンダー市場ではなく、「ニューメディア商品」枠組のため各出版社もこぞって参入
「勇気が出る」「元気が湧く」と評判になり、発売3ヵ月で10万部を突破、一時は生産が追いつかない事態にまで発展した。当時、書店販売カレンダートップのAKB48超えも果たし、『2015 ユーキャン新語・流行語大賞』ではトップ10にも選ばれ、日本中を応援する言葉として評価された。以降、昨年9月には第5弾『まいにち、つながろう』が発売されるほどの“ロングセラー”となっているのである。
従来の「日めくり」は、月と日付と六曜(大安、先勝、仏滅など)のほか、せいぜい昔の格言や諺、“オヤジの小言”的なものが付記された365枚の紙を一日一枚ずつ切り離していくといったもの。
一方、カレンダーは、きれいな風景や名画、男女のアイドルや可愛いペットの写真・イラストなどがメインであり、書店などで購入したり、年末に企業がお歳暮代わりに配る(無料で貰える)など、入手手段もさまざま。実は、書店などではカレンダーは昔から手堅く売れることもあって、市場が固まっており、新規参入は難しい。しかし、日めくりカレンダーの場合は、従来のカレンダー市場ではなく「開発品」や「ニューメディア商品」の枠組みで販売できるため、出版社などが新規参入しやすく、『まいにち、修造!』を後追いするような商品を作りやすいという側面もあった。
現在では、アンミカ、 原田龍二、ぺこぱ、ずん・飯尾和樹、フワちゃん、有吉弘行、江頭2:50、ヒロシ、NON STYLE・井上裕介等々、多くのタレントたちが日めくりカレンダーを発売している。中には、松岡系ポジティブ型ではなく、ヒロシの『まいにち、ネガティブ』や、有吉弘行の『365日くらやみカレンダー』といったネガティブ型も登場。そうした言葉を反面教師にしたり、哀愁漂う言葉が心に沁みるなど、前向きな言葉ばかりではないカレンダーにも人気が集まっているようだ。
自社宣伝ツールとしてのカレンダーは激減…一方、リモート普及により卓上版は急成長
そんな中、リモートワークの増加によって、自宅のデスク周りを充実させるアイテムとして卓上カレンダーの需要が伸びており、さらには在宅時間が長くなることで、毎日の日課としての日めくりカレンダーが好まれるとの傾向もあるようだ。気が滅入りがちなリモートワーク中、背中を押してくれる、勇気をくれる、少しでもクスっと笑わせてくれるような金言・格言入りのカレンダーは、たしかに今の時代にマッチしているといえるかもしれない。
ひと昔は一発屋など話題性重視も…近年は息の長いタレント起用が顕著に
実際、有吉やヒロシ、ぺこぱ、飯尾、フワちゃん、江頭など、一見すると一発屋“関係者”ともいうべき面々が名を連ねるが、“ガチ”な一発屋はいない。一発屋芸人の第一人者たる有吉などは今や天下取りであり、ヒロシ、飯尾も復活を果たし、自分のポジションをしっかりと確立したいわばベテラン枠。ぺこぱやフワちゃんもブレイク当初は一発屋の匂いがしていたが、今ではすっかりお茶の間に定着している。
また、長州力も名言日めくりカレンダーを2017年に出しているが(現役時代の尖った発言中心)、昨年には引退後の『ハッシュドタグ』などのおとぼけ発言を中心に発売。つまり、そのとき一時的に話題になるだけではなく、本人の実力がともなった説得力を持っているかどうかがカギとなるようだ。
日めくりカレンダーになるということは、最低でも31の名言が必要。やはり、ネタやパワーワードたりうる“言葉の数”が勝負なのである。一昔前までは、影響力のあるタレントであれば、“タレント本”を出版するのが定説だった。だが、出版不況の煽りもあり、社会現象となるようなタレント本は、2000年代以降なかなかお目に掛かれないのが現状だ。その点、日めくりカレンダーならば書籍出版よりもハードルが低いし、自身の持ち味・ギャグ・生き様などを端的なワンワードで表現できるという利便性もある。なによりユーザー自体が、回りくどい書籍よりも直ぐに“答え”として提示してくれる金言を望んでいる。
上記のようなトレンド移行を推察すると、実際は一発屋では難しい側面もあり、カレンダー化するタレントにはそれなりの実力・発言力が求められるし、逆に日めくりカレンダーは、そのタレントの能力を図るバロメーターになるともいえるだろう。