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高知東生、”自死遺族”の胸中語る 加熱報道に「SOS出すまで待って」
誰かの赤裸々な告白に、自らも救われている
――ご自身の経験を交えて語るツイートが大きな話題となっています。この反響をどう思いますか?
「驚いています。僕自身は本当に素直に、自分が日々過ごしていくなかで思った内面を率直にコメントしているだけで。だけど、生きづらさを感じた人とか、機能不全家族であった僕のように親との関係で苦しんでいる人とかが、どんどん僕のTwitter内の話題に入って、自身の想いをさらけ出してくれるようになりました。その方々も『誰にも言えなかったことをここで話すことができてすごくうれしいです』と。いや逆ですよ。僕のほうがうれしく思っているんです」
――高知さんご自身も、その方々の赤裸々な告白に「救われている」と?
「そうです。その文章を見て僕も共感し、何か感じることもある。例えば僕も自死遺族なので、芸能界での自死報道などが出ると、辛さがフラッシュバックします。そういう時、僕なんかは『余計な声をかけず放っておいてくれよ』とか『今は苦しいから本格的にSOSを出すまで待ってよ』とか思ってしまうんです」
――でも報道は加熱していく…。
「ええ。悲しさは見守ってくれているだけでありがたいと思うんです。自死報道が過剰になった時、そういったコメントも寄せました。するとフォロワーさんたちから『実は僕も自死遺族で…』との告白が。抱えた思いをさらけ出し、その結果、僕ひとりじゃない、私ひとりじゃないと思えると、人は楽になっていく。最近そんな“場”に僕のアカウントがなれているようで、うれしいですね」
Twitterを始めたきっかけは、憶測記事への反撃
「事件後、僕は世間から隠れるように過ごしていました。僕は本当に謹慎していたんですが、どこからの情報なのか、僕が夜な夜なお姉さんのいるお店で飲み歩いているとの報道が…」
――それは憶測記事だったんですか?
「はい。だって、そんなわけがない。僕は本当に反省していたし、逆に外に出るのが怖かったから。当時の僕はマスコミや他人から言われる言葉に恐怖を感じていた。反省しているのをどうしたら分かってもらえるのか、その答えがなく苦しんでもいた。数少ない僕を支えてくれていた仲間からも『なにやってんだ』と叱られた。そういった報道を皆、信じてしまうんだなと」
――過去のインタビューでも「何度も死にたいと思った」と話されています。
「人に言われなくとも、自分が自分を一番責めていた。どうしたら分かってもらえるんだろうという苦しみと孤独のなかで妄想が肥大していき、『これなら死んだ方がいいのかな』『死んで償えばいいのかな』とも考えてしまったんです。そんな深い悲しみをのなか、『これは自分で発信していくしかないぞ』と思い立ちました。Twitterを始めたのは、自分の本当の“今”を伝えるためです」
――すると、出元のよく分からない報道は…?
「なくなりましたね。他ならぬ僕本人が語っているわけですから。SNSがあったことがすごく救いでした」
過去も今も、そのすべてが“僕”という存在
「そういった一面はあります。でももともと僕はTwitterではさりげない日常をつぶやいていたんです。ですが今年3月に周囲のアドバイスもあって、徐々に内面をさらけ出すようになって。するとどんどん人が来てくれるようになりました。助けることは助けられることなんだとも学びました。僕のアカウントが自助グループのようになっていることがうれしいですね」
――その自助グループについてもう少し詳しく教えて下さい。
「ある時、国立精神・神経研究センターの松本俊彦先生とお会いし、薬物とアルコールで壊れた脳の回路は同じだと教えていただきました。僕は薬物依存症という心の病気だったんです。そういった依存症の方々が体験を語り合い、回復を目指していくのが自助グループ。これまで僕は無償の善意について懐疑的でした。そんなもの、本当にあるのかよって。何かしてもらっても、この人の裏には何かあるんじゃないかと勘繰って。ですが自助グループの方々からは無償で善意を受け取れました。ある人は悩んでいる僕のために無償で、山梨県からかけつけてもくれました。そういった先輩方のおかげで、ここまで自分は回復できたのだと感謝しています」
――Twitterで、薬物依存の芸能人だけで作られた自助グループについてもつぶやいていましたね。
「自助グループの重要性について色々と僕なりに伝えているつもりです。僕に自助グループを教えてくれた、ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんとよく話をするのですが、『SNSがあって本当に良かったね』と。例えばピエール瀧さんが逮捕された時、マスコミは『再犯率が高い』『信用できない』といった報道をしました。ですがそれは依存症の専門的な知識が欠けた意見で、その欠けた面を依存症界はSNSがあったことで『回復も治療もできる』と反論ができた。それがバズったことでマスコミの方々にも注目してもらえるようになりました。結果、薬物報道のあり方そのものが変わったように思います。SNSは我々の唯一の武器でもあるんです」
――高知さんご自身の憶測記事への反撃もSNSで。
「それで僕への憶測記事が消えていったという事実もあります。今の僕は日々、感じたことをさらけ出している。そして皆さんのお役に立てている。それが何よりもうれしいんです。最近は『自分をさらけ出し過ぎじゃない』と言われることもあります。でもそれでいい。過去も今も、すべてが僕なんですから」
――最後にメッセージを。
「生きづらさ、苦しみを抱えながらもそれを隠して頑張っている皆さん、皆さんは頑張る必要はありません。素直に、自分をさらけ出せる人がいたら話すべきだし、話すと楽になることがあります。ネットで調べれば相談窓口だってあります。勇気を持って助けを求めてほしい。きっと、正しい知識を持ったあたたかい人たちが待っているはずですよ」
(取材・文/衣輪晋一)