ORICON NEWS
尖っていたジャルジャルが丸くなった5年前の変心「トークで認められなくてもいい」
芸人と小説家の仕事は地続き “芸人なのに良い本を書く”フリになる
福徳秀介 そもそも芸人は普段ネタを書いているから、仕事上書くことが得意な人も多いと思います。僕は学生時代、恋愛小説ばかり読んでいたんですけど、書くことも好きでした。芸人になってから小説執筆を勧められて、気づいたら2年くらい書き続けていたなか出版のお話をいただき、挑戦することにしました。そこから改稿に改稿を重ねてようやく出版へ。4年間をかけた渾身作です。
――芸人として人を笑わせる、小説で自身の思いを伝える。表現の違いはどう意識していますか。
福徳秀介 小説では自分を表現するという感覚はないです。小説に本気で取り組めば、良い本ができると思う。真面目な良い本を書けば、“芸人なのに良い本を書くやつ”っていうフリにもなるし、ネタに良い役目を与えることもあります。それがより笑いを増幅させる。そういう意味では、お笑いも小説も地続きで、双方に良い影響を与え合います。基本的に僕は100%芸人ですが、ネタも小説も“ものづくり”をしているという感覚は同じ。頭のなかで仕切りはありません。
――『キングオブコント』は13度目の挑戦での頂点。毎年競争の場に出続けてきた裏にある思いとは?
福徳秀介 「コントの賞レースでタイトルをとらないことには、この先ずっとやり続けることはできない」という意識がモチベーションになっていました。1度だけでもコントのチャンピオンという称号が欲しかった。高校時代ラグビー部で体育会系のジャルジャルとしては、負けたままでは終われない。優勝するまで出続けると決めていました。
――頂点に立って変わってことはありますか?
福徳秀介 周囲の評価ですね。以前はジャルジャルって尖っていて扱いにくいというイメージがあったと思うんですが、「13回挑戦し続けるただのコント好き」とわかってもらえた気がします。ぜんぜん尖ってない(笑)。ただ、いろいろなお仕事のお話をいただけるのはありがたいんですが、僕らはネタ番組を中心に出演したいです。
――そういうスタンスがジャルジャルらしい尖った姿勢に思えますが…。
福徳秀介 トークやバラエティに出ないのは、苦手だからです。芸歴18年目ですから、コンテスト優勝をきっかけにメディア出演を増やしたり、仕事の幅を広げたりという時期は過ぎています。10年目までそのスタンスでいろいろやった結果、僕らは向いていないということに気づいて。出演しても盛り上げることができないですし、それでギャラをもらうのも申し訳ないなと。
ナインティナイン以降のスターが育たない? チャンピオンの賞味期限が1年、賞レース至上主義の弊害
福徳秀介 同期のプラス・マイナスは、劇場では誰よりも笑いを取っている。『M-1』決勝に出たことはないけれど、ファイナリストたちよりも圧倒的におもしろい。でも、それを知っているのは劇場に足を運ぶごく一部の人たちだけ。テレビでは伝わらない事実ですよね。ただ、彼らがネタ番組で劇場と同じ爆笑をとれるかというと、ネタとテレビ尺などの相性もあって、また別の話になる。芸人それぞれの特性があって、メディアとの相性もあります。今ネタ番組が増えていますが、テレビが芸人の特性にあった見せ方をするように変わっていったら、本当におもしろい芸人がもっと世の中に知ってもらえるようになるんじゃないかと思います。
――お笑い界のトップスターの系譜を見ていくと、ナインティナイン以降、スターが生まれにくいように感じます。昨今のお笑いシーンにスターを育む土壌がなくなってきていることはないでしょうか。
福徳秀介 賞レースは毎年チャンピオンが生まれて、年々数が増えていきます。それも変な話ですよね。チャンピオンの賞味期限が1年になってしまっている。ただ、賞レースはあったほうがいいと僕は思っています。お笑い界が盛り上がりますから。一方、お笑いに点数をつける難しさが何よりもあります。お笑は、0点、50点、100点の3つしかないと思うんです。おもしろいは100点、ちょっとおもしろいは50点、あわないは0点。そこそこおもしろいとかはない。いつかこの3つしかないコンテストができたらいいなと思ったりします。