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アイドルなのに“いいお父さん”、井ノ原快彦が築いた稀有な立ち位置
グループ内のバランサーとなるも、まだ尖っていたV6初期
この秋には、息子のために3年間弁当を作り続けるという“いいお父さん”役の映画『461個のおべんとう』が公開。生命保険や『アリナミン』、最近ではSUBARUの車『アイサイトX』のCMも始まり、若年層女性だけではなく、老若男女を対象とする大企業のCMも任されている。さらには、先日の『24時間テレビ』(日本テレビ系)のメインパーソナリティーなど、『あさイチ』MCの任を全うした後も、“いい人”である安心感に担保されたような仕事が続く。12歳のときに芸能活動を始めて現在44歳。V6としてデビューして25周年。アイドルでありながら、“いい人”かつ“いいお父さん”というこの位置に、どうたどり着いたのだろうか。
「ジャニーズは美少年じゃないとなれない」といった言葉をつきつけられたときに、生前のジャニー喜多川氏がよく例えに出していたのが井ノ原の名前だった。「顔で選ぶんですかとよく聞かれますが、たとえば井ノ原はジャニーズ顔ですか? 彼も朝の番組でがんばっていますが、要は本気で闘っているかどうか」(*1)と語るほどで、たしかにいわゆる“ジャニーズ顔”として多くの人が想像するものとは、離れた顔立ちだ。
井ノ原がジャニーズ入りした80年代後半は、光GENJIの全盛期。光GENJIをはじめとする先輩のバックの仕事も多く経験し、時にはマイクを持たされ、トークをさせられることも。ジュニア時代から“空気を読む練習”をし続け、場の掴み方を体で学んでいった。
同世代のTOKIOやSMAPが先にデビューする中、19歳でデビュー。年上組のトニセンと、年下組のカミセンとでV6という構成だったが、年上組の中では1番年下ということもあり、グループのバランサーとなった。ヤンチャなカミセンに乗っかるときもあり、“年上”と“年下”を自由に行き来していた印象だ。当時はカミセン人気が先行した印象だったが、「嫉妬なんてしてたら、たぶん20年もやれてない」(*2)と、あくまで自分のペースで、歩みを進めていった。
とはいえ、まだこの頃は、「調子に乗ってたかも」「なめられたくないと思ってた。(中略)結局自分に自信がなかったからなんだけど」(*2)と、尖っていた自認があり、今のいい人像とはちょっと遠いところにいた。
『あさいち』で見せた“芯のあるいい人”の顔、女性への理解で主婦層から支持
語り継がれるのが、2017年5月の“ワキ汗回”だ。「女性のワキ汗どう思う?」というアンケートに対して否定的な答えが並ぶ中、「ランキング自体が信用できない」「いいじゃん、人間らしくてね。動物なんだから」と、番組の企画にそのまま乗っかるのではなく、自分の考えもきちんと表明。また、女性に対して年齢や未婚をいじる流れがあると苦言を呈するなど、単に頷くだけの“いい人”ではない、おかしいことがあれば自分の頭で考えてきちんと言う、芯のある姿も垣間見える8年間だった。今のテレビの潮流を少し先取りしていたともいえる、女性や多様性への配慮。一緒にMCを務めた有働由美子も太鼓判を押すほどだったし、メイン視聴者である主婦層にとってみても、理解のある“いい旦那”像として、受け止められることもあっただろう。
さらに2015年からは、愛川欽也から『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)の司会(あなたの街の宣伝部長)を引き継ぎ、ジャニーズの“先輩”でもある薬丸裕英と共演した。この夏には、『24時間テレビ』のメインパーソナリティーを担当。NEWS・増田貴久やKing & Prince・岸優太など、ジャニーズの“いい人”の匂いのする後輩たちを引き連れての出演だった。先輩としても後輩としても、その場にうまく適応するのが“イノッチ”なのは、初期のV6の中での立ち位置のようでもある。
そうして、前述した映画『461個のおべんとう』では、父親役に。関西ジャニーズJr.の“なにわ男子”道枝駿佑の父親役であり、ジャニーズ事務所内で親子のキャスティングができるのも、なかなか稀なことだろう。