アニメ&ゲーム カテゴリ
(更新: ORICON NEWS

「大腸ガンのステージ4」余命宣告されたBL漫画家、それでも描き続ける理由「絶望するのはまだ早い」

 BL漫画家の「ひるなま」さんは、創作活動中に大腸ガンのステージ4と診断され、自らの闘病生活を描いた漫画『末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸がんになる』を発表、話題を呼んでいる。5年生存率は18%程度、術後の予後平均は30ヵ月と、厳しい現実を見据えながらも、創作活動を続けるひるなま先生。病気による心境の変化や現在の思いなどを聞いた。

「余命を聞いたからと言って、今すぐ死ぬわけではない」

  • 『末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸がんになる』扉絵

    『末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸がんになる』扉絵

 もともとは、和装や歴史関連の技法書の執筆、イラストレーターをしながら趣味で同人誌を描いていたという、ひるなまさん。漫画家デビュー作『陰の間に花』(芳文社)の単行本作業をしている最中に、ガンが発覚。日本で毎年約15万人が診断されるという大腸ガンのなかでも、約7%のみという珍しい「横行結腸ガン」だったという。現在公開されている『末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸がんになる』(COMICポラリス)1、2話では、あるとき異変に気づき、検査を受けたところまでが描かれているが、今後は手術、余命宣告、抗がん剤治療などのエピソードが予定されているという。

――最初にガンと診断されたときのお気持ちは?

【ひるなまさん】1話で描いたように、2つ目の病院で異変を指摘されたときが一番動揺しました。その後、確定診断までの3週間、レントゲンやCT、胃カメラ、大腸内視鏡などの検査画像をずっと見ていくにつれ、じわじわと「これはガンだな」と確信が強まってきて。ガンの確定診断はその末のことですから、ショックではありましたが予想通りでしたね。

――その後、現在の状況はいかがですか?

【ひるなまさん】進行中の病状ですし、来月には変わっているかもしれないですが、現在、抗がん剤治療16回目です。それなりに抗がん剤が効いているようで、食事や散歩に支障がない程度に体調は安定しています。

――1、2話の時点ではガン告知を淡々と受け止められているように見られます。でも実際は、ショックを受けたり、絶望したりするようなことはなかったんでしょうか?

【ひるなまさん】さすがに二晩ほど泣きました。このあと漫画にも描くんですが、私の人生で一つだけ、悔しくてたまらないことがあって。悲しいからではなく、悔しさや怒りで泣きました。でも絶望はしていませんね。余命を聞いたからと言って今すぐ死ぬわけではなく、実際には何ヵ月後か何年後かもわからないわけで。それまでは普通に働き、貯蓄し、食べて運動して、心身を維持して生き続けないといけません。そのことこそがガン患者にとっての一つの課題であり、この連載で伝えたいことでもあります。

「せっかく漫画家がガンになったんだから」、必ず描くという強い信念

  • 1話より

    1話より

 本作では、ひるなまさん本人がウサギの姿に描かれ、さしずめ『鳥獣戯画』を彷彿とさせる絵柄に。プロレス好きの夫はウサ耳付きのレスラーとして描かれるなど、シリアスな題材ながらも読む者にポップな印象を与える。

――ご自身の体験を漫画にしているわけですが、葛藤はなかったんでしょうか?

【ひるなまさん】描くきっかけとなったのは、病名がわかってから情報収集した際、思った以上に「横行結腸ガン」の手記が見当たらなかったことです。「これは私が描いてもいいのでは?」と思いました。漫画にすることへの葛藤はありません。手術前後の苦しくつらいときは、「せっかく漫画家がガンになったんだから、必ずこの体験を描いてやるぞ」と強く念じることで痛みに耐えていました。今は描くことが生きるモチベーションになっています。

――なぜ、このような絵柄になったのでしょう?

【ひるなまさん】私がもともと、小筆で絵や漫画を描いているからです。また大腸ガンは経肛門的検査が多く、排便や肛門の話もちゃんと描きたいので、生々しさをマイルドにするために擬獣化しています。基本的には「何によって助けられたか」を伝えたいので、闘病されている方がこの漫画によって極度につらくなったり、不利益を被ったりすることがないように気をつけています。

――ファンの方からは、どんな反応がありましたか?

【ひるなまさん】以前から私を知ってくださっていた方は、ショックを受けた方が多いようでした。なので、少なくとも今は私も楽しく生きていて、「絶望するのはまだまだ早いですよ!」と伝えたくて漫画を描いています。本作にメッセージをくださる方は、ガン患者の方やそのご家族・ご友人の方がとても多く、皆さんいろいろな苦しさや迷いを伝えてくださいます。同時に「笑って少し気が楽になった」「患者本人に話しかける勇気が出た」といったコメントはとてもうれしくて、「やっぱり描いてよかった!」と励まされています。

あなたにおすすめの記事

 を検索