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実は汎用性の高い“極道コンテンツ” リアル&ファンタジーを内在させエンタメ化に拍車
高倉健に菅原文太…生々しさや裏切り、哀しさを描いた60〜80年代
当時の男性群は、骨太で硬派な男気溢れる登場人物たちの姿に共感し、憧れ、感情移入した。映画が描く男の美学の物語は、一般人が普段見ることも知ることもできない別世界であることも人気の理由だった。1970年代に入ると、菅原文太主演『仁義なき戦い』(1973年〜)など、それまでの任侠映画とは一線を画す“実録もの”が人気に。実際の暴力団同士の抗争や発砲事件に基づき、裏社会に生きる男たちの生き様や葛藤をリアルに描いて人気を博すのである。
女性視点の極道作品増 数々の流行語も登場しエンタメ色濃く
以後、極道の女性の“決めゼリフ”はキラーコンテンツとなり、岩下志麻主演『極道の妻たち』シリーズ(1986年〜)の「女の惚れた腫れたはタマのとりあいや、あんたら腹くくってモノ言いや!」へと続き、「極道×女」は新潮流となっていく。
また同時に、薬師丸ひろ子主演『セーラー服と機関銃』(1981年)では、普通の女子高生が遠縁の弱小暴力団の四代目となる…というストーリーが大いにウケ、配給収入邦画1位となる大ヒットになった。機関銃を撃ちまくりながら主人公が吐く「カ・イ・カ・ン」というセリフも流行語となり、1982年には原田知世、2006年には長澤まさみ主演でTVドラマ化され、2016年には橋本環奈で再映画化されるなど、「女子高生×アイドル×組長」は時代を超える定番コンテンツとなるのである。
90年代以降はコメディ路線のアプローチへ 極道賛美から時代錯誤感をコメディへ昇華
以降、1990年代に入って極道コンテンツは多様化し、『静かなるドン』『ミナミの帝王』などの劇画がドラマ化・Vシネマ化されたり、同じマンガ原作の『ごくせん』は仲間由紀恵主演で2002年にドラマシリーズ化され、社会現象にもなった。
また韓国映画が原作で、ヤクザの組長を父に持つ「関東鋭牙(えいげ)会」の若頭・榊真喜男(長瀬智也)が高校に通うという『マイ ボス マイヒーロー』(日本テレビ系)も人気になるなど、コメディ要素を多分に加えることでエンタメ色を強くし、視聴者の男女区別なく楽しめる極道作品が多く作られていった。
基本的に極道にあるのは“怖い”“犯罪”といった反社会的イメージ。しかし、映像の世界で描かれてきた“仁義”や“人情”などの要素が確立していることで、「ヤクザなのにちょっとかわいい」的なギャップを活かすなど、時代に合わせてパロディ化・ポップ化しやすくなっているともいえる。
実際、60年代的な極道をストレートに美化する作品は今の時代、適当とはいえず、さまざまなアレンジを施し反社会性を中和していく必要がある。しかし、一般人にはいまだ知られざる「最後のファンタジーの聖域」ともいえるだけに、今後も“極道もの”は時代時代の意匠をほどこされながら、経年劣化しないコンテンツとして生き続けていくのではないだろうか。