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市中での爆弾処理、土地高騰で空中生活…モデラーが作品を通じて伝えたい現代社会の問題点
技術の進化と土地の高騰が“空中生活者”を生む?(さいそう)
さいそう「バブル景気は未だ弾けず、人口増、不動産価格高騰は止まらない。地上に土地を持つことが出来なかった庶民は居住地を空に移すほか生きる道はなかった。そんな斉藤家は家族四人で今日も元気に楽しいスカイライフを送るのである…。」というのが簡単な設定です。当初は、特に深く考えずに作り始めたのですが、作りながら作品としてのリアルさを出すために現実社会でもあるような問題をイメージして設定に盛り込んでいったら面白いのではないかと思い、結果的にこのような形になりました。
さいそうロンドンでは住宅費の高騰によって船上生活者が増えているというニュースを見たことがあって、それもヒントに膨らませていきました。
日本では、今でも都心の人気のあるエリアに個人で土地を持つのはとてもじゃないけど難しい。だからその利便性を大勢でシェアするためにマンションがどんどん建っていますし、いずれそのマンションを建てる土地がなくなってきたら、最終的にはスペースコロニーに移住みたいな時代が来てもおかしくはない。
また、いくら科学技術が進歩していってその恩恵を受けることができたとしても、生活の彩りとしての部分、具体的には娯楽など生きていく上で必ずしも必要でないものは、結局経済的な格差が如実に表れていく。例えば、昔は、車は高級品だったけど今ではみんな乗ってますいる。でもその車は、価格や性能は比べたらピンからキリまでものすごい差がある。そういう部分を作品に落とし込んでいけたら面白いかなという思いもありました。
「浮遊邸」は、住宅を空に飛ばす技術が一般化した時代、家だけでなく、犬小屋だって飛ばしちゃう。土地を購入することに比べたらかなり安く済ませることができるんだけど、結局家屋の部分は普通にお金が掛かるので、新築や新しめの家ではなく、中古で買った長屋の一部分を強引に乗せているといった感じです。
さいそうジオラマってある瞬間や空間を切り取って表現するのが主で、そうすると大体は四角い舞台に切り抜いて、その舞台で色々表現していくことになると思うんです。でも、そういう従来通りの舞台を切り抜く方式ではなく設定で独立した空間として分離させることができたらジオラマとしては新しい表現になるのかなという思い制作していました。
――最後に、さいそうさんにとって模型とはどのような存在ですか?
さいそう私は、普段はCMやMVなどの広告のCGを作る仕事をしています。幸運にも自由に楽しく仕事させていただけていますが、とはいえ仕事なのでやはりいろいろな事情が重なって、お客様ありきのものを作ることが多いです。そんななか誰からも制約を受けないし、ある種、自分は実在しない「さいそう」というネット上の存在なので、失敗しても関係なくプレッシャーもない。そんな自由な創作活動ができる自分にとっての良い表現媒体に今はなっているかなと思います。