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テレ東が“飯テロ”ジャンルを独占するワケ 『女子グルメバーガー部』で新たな層獲得へ
ターゲットを徐々に若年層にシフト、“おやじごはん”主軸とする“飯テロ”ドラマに新たな潮流
しかし昨今は、OLを主人公とした『忘却のサチコ』を皮切りに、2020年には女子高校生のキャンプを描き、その中でのキャンプ飯が話題になった『ゆるキャン△』や、高校生の姉妹が主演の『新米姉妹のふたりごはん』など、若年層の女性を題材としたグルメドラマが登場。“グルメ情報番組的要素”や長い料理単体のシーンと言った“テレ東らしさ”は受け継ぎつつも、主役が若い女性へと移行しているのだ。
現在放送中の『女子グルメバーガー部』も、高校生から20代半ばの12人の女性が主役であり、視聴者のターゲットが30代以降の世代から10〜20代に変わってきているようにも思える。『孤独のグルメ』がSeason8まで続き、“テレ東飯テロドラマ”に固定ファンがしっかりとついたことによって、これまで届かなかった層の獲得に踏み出したのかもしれない。
「ドラマの企画会議に顔を出していると感じるのですが、ある程度数字が約束されている=ヒットしたジャンル、ヒットした原作がある企画が通りやすい。通りやすいので、発案者も企画しやすく、企画書の数自体が多い。そんな中で目立つためには、他とは違う切り口が必要となってくる。
また、テレ東グルメドラマにはフォーマットがあり、例えば『絶メシロード』は“グルメ×車中泊”など、掛け算で作られていることが多い。他企画と一線を画すために、この方程式に代入するxやYに、新しい要素が感じられる原作選び、または独自のアイデアを入れることによって、結果として、若い世代を取り込む形になったとも考えられます」(衣輪氏)
「うまそう」だけじゃない、「映えそう」を武器にした“バーガー”の妙とは
これまでのおじさん世代に向けた作品であれば“映え”はむしろ不要だった。しかし、主人公が若い女性である本作は、以前のグルメドラマにはあまり見られなかった、料理を写真で撮影するシーンが多い。「おいしそう」と「映えそう」の両立を意識したグルメバーガーという料理を題材として扱っていると考えられる。
また、“映え”要素を組み込むことによって、これまで主に中年男性のイメージが強かった深夜の飯テロドラマに若い女性が食いつくきっかけとなるのではないだろうか。また、映え王道の“スイーツ”などではなく、がっつりとした食べ応えのあるグルメバーガーを題材とするのは、料理をほおばる姿が魅力であるテレ東深夜の飯テロドラマの“らしさ”が出ているとは言えるのではないだろうか。
『孤独のグルメ』や『きのう何食べた?』を放送している時間帯全体を統括しているプロデューサーは以前、テレ東のグルメドラマは「誰にでも手の届くものを描いている」と語っている。本作でもその描き方は変わらず、実際にあるグルメバーガーのお店を取材し、ドラマに仕立てている。
誰にでも手に届くものを描くことによる“親近感”がテレ東の良さ。『女子グルメバーガー部』は、飯テロドラマにしては珍しい原作なしのオリジナルドラマになっており、リアルタイムで制作できるため、時代に合った登場人物像やストーリー展開、お店をドラマに組み込めている。その“リアルタイム”がさらなる“親近感”を呼び、テレ東グルメドラマの“らしさ”を、より進化させたという見方もできそうだ。
(文/中野ナガ)