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元祖“傷つけないお笑い”R-1王者・佐久間一行が見る今のお笑いトレンド

『M-1グランプリ 2019」でぺこぱが披露した「ノリツッコまない」漫才。多様性を認め合う時代にマッチし、ボケを否定して(ツッコんで)笑いを起こす従来の方程式をひっくり返し、“誰も傷つけない”がお笑い界のトレンドになった。だがこれよりずっと前、2000年代初頭から、見た人をほっこりさせる“優しいお笑い”を実践し、2011年には『R-1ぐらんぷり』で優勝を果たした芸人がいた。佐久間一行、42歳。一人語りの演劇のようなネタが持ち味の彼は、舞台上でも終始ニコニコ笑顔を絶やさず、最後は「クルッと平和解決」で締めるまさに元祖“傷つけないお笑い”の体現者。この5月に芸歴24年目に突入した佐久間は、現在のお笑いトレンドをどう見ているのだろうか?

「面白い」以外の感情を思わせることがもったいないと思い今の芸風に

──近年はお笑い以外にもイラストや音楽、さらには水族館の特任ディレクターなど、お笑いの枠を超えて幅広い活動をされている佐久間さんですが、すべてに共通しているのはほのぼのとした世界観。その"芸風"はどのように確立されていったんですか?
佐久間一行確立なんて大層なものじゃないんですけど、視聴者の方がネタを観たときに「あ……」ってなる人がなるべくいないようなお笑いをやりたいな、というのはこの世界に入ったときから根本にありました。小さい頃からお笑い番組が大好きでよく観ていたんですけど、あるとき「あ、この人かわいそう」って思っちゃったことがあったんですね。で、その瞬間、さっきまで笑ってたのに笑えなくなってしまって。

──たしかにお笑いの中には「イジリ」や「ドツキ」といった、ある種の暴力性をはらんだスタイルもありますよね。一昔前はそれがもっと顕著だったかも?
佐久間そのとき「もったいないな」って思っちゃったんですよ。お笑いってただただ面白くて笑えるだけでいいのにな、って。
──昨今のトレンドである「誰も傷つけないお笑い」を、20年以上前から意識してやっていたわけですね。
佐久間意識してやってたつもりではないんですけど、自分がやりたいネタをやってたら自然とそうなったってことですかね。もちろん、すべての人を傷つけないことは無理だと思うんですよ。だけど少なくとも自分がやられてイヤだなということは、ネタに盛り込まないようにしたいなと。それに拍車がかかったのが、「虫の気持ちになって」という持ちネタで。自分が虫になったつもりで「これやられたら嫌ですよね」というのをフリップで見せていくんです。このネタができたきっかけが、自分で飼っているタナゴという魚。あるときふと、部屋の電気をいきなり消したらタナゴ的には「え! なんで!?」って思うだろうなって思ったんです。自然界では夕方からだんだん夜になるのが普通なのに、いきなり真っ暗になるわけですから。それから電気も徐々に消すようになって。考えすぎだとは思うんですけど(笑)。

──でも、そういう感性があったからこそネタができていったんだと思いますが、お笑いを始めた当初は異端児的存在だったのでは?
佐久間そうですね、養成所でも「変わってるね」ってめちゃめちゃ言われてました。やっぱりお笑い=強めみたいなのが主流な時代だったので。でもあるとき、ぐっさん(山口智充)と上地雄輔さんが対談してる番組があって。上地さんが「お笑いの人って大変ですね。不幸をネタにしたほうが笑いになるし」って言ったときに、ぐっさんが「いや、幸せなことを笑いにしたほうがみんなハッピーでよくない?」って言ったんですよ。その言葉にすごく勇気をもらって。自分もそうありたいと思ってやってきてはいたけど、どうしても多数派のほうが正解だって思っていて、「俺ってズレてるのかな」とか考えていたので。でも、こういうお笑いがあってもいいんだって、すごく背中を押された気持ちになったんですよね。

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