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50周年『サザエさん』過去最大の危機は“今”「変わらない日常」と「タブーへの挑戦」

 アニメ放映50周年を迎え、様々な記念事業が行われている『サザエさん』。全国巡回展「サザエさん展THE REAL」では、特殊メイクでサザエさん一家を表現。あまりにリアルな仕上がりに、ネット上では「怖い」「狂気を感じる」「完全にサイコパス」と話題になっている。これまでもドラマ、舞台、展示会と幅広く展開してきた同作品だが、今回これまで守り続けてきた、サザエさんの“タブー”に挑戦したという。その理由を制作担当に聞いた。

相次ぐ「怖い」の声は狙い通り「サザエさんの“不自由さ”に縛られたくなかった」

「ホラー」「狂気」と話題になっている特殊メイクで作られた磯野家

「ホラー」「狂気」と話題になっている特殊メイクで作られた磯野家

 先月、「サザエさん展THE REAL」(現在はコロナ禍で休止中)で展示されていたカツオやワカメの姿にネットがざわついた。特殊メイクで再現されたサザエさん一家はアニメ比率のまま等身大で作られており、波平のホクロやシミ、シワ、白髪、マスオの髭剃り負けの具合まで緻密に表現されている。

 当イベントプロデューサーの大山鐘平氏によると、来場者からの相次ぐ「怖い」という声は「狙い通り」だという。「アニメ50周年という節目のタイミングで、あえて今まで見たことがないエッジを効かせた磯野家を見せることで、“あれ!?”という違和感を与えたかった。その感情こそが更に注目して作品を見ていただくきっかけになるのでは、と考えました」
 コロナ禍で休止しているとはいえ、話題という意味では大成功となった「サザエさん展 THE REAL」。これについて大山氏は、「50周年だからこそ出来る挑戦」だと胸を張る。では、何に対しての“挑戦”だったのか。『サザエさん』コンテンツを統括するフジテレビ編成部の渡辺恒也氏にも話を聞いた。

 「サザエさんには“いつまでも変わらない”というイメージがあります」と渡辺氏。「ですがそれは、サザエさんだからアレはダメ、コレはダメというベクトルへの誘因につながる恐れがある。もちろん変えてはいけない部分では変えたくありませんが、その“不自由さ”に抗するが如く、50周年はこれまで出来なかったことをやろうということがテーマになりました」(渡辺氏/以下同)

一度は磯野家に液晶テレビ導入も検討 50年で変わった所と変わらない所の線引きとは

 「変えてはいけない部分では変えたくない」。当然だが、『サザエさん』のスタッフは同アニメをこよなく愛している。ゆえに、時代の変化に合わせてのサザエさん一家のあり方、生活風景には強いこだわりがある。

 例えば、磯野家の茶の間にあるテレビ。「一度液晶に変えてみる試みをしたことがあるのですが、茶の間の空間が冷たいものになってしまった。そのため、使えるうちはあのテレビで行こうということになりました」

 現実には、生活のデジタル化は年々進んでいる。波平が務める会社のデスクにパソコンがないことは、しばしばネットで揶揄されている。だが、実はこれにも理由がある。「パソコンを設置してしまうと波平の視線がパソコンの画面に行ってしまいます。その絵では、彼のキャラクターを描く際に不自由なことが多々。同僚と話す波平、仕事をしている波平、これらを波平らしく自然に描くために、パソコンは敢えて置いていません」。だが、よく見ると別フロアにはパソコンがある。つまり、決してパソコンがない世界ではないということらしい。

 スマートフォンもそうだろう。渡辺氏は、磯野家にネットが通じているかどうかは「ご想像にお任せします」とした上で、こう解説してくれた。「脚本家には4コマ原作を必ず1〜数本入れることを条件に発注しています。例えば、もしスマートフォンがあることを前面に出すと、原作にあるカツオが波平を駅に迎え行く際のすれ違い…といったネタが使えなくなってしまう」。
 『サザエさん』はドキュメンタリーではなければ、日本の平均的な家族観を描こうとする作品でもないと語る渡辺氏。「アニメ作品にはそれぞれの世界観や設定があるように、『サザエさん』も同様です。原作にある“磯野家の生活を描くこと”を第一に、その時々でベストなマイナーチェンジを考えています」

 ドライブシーンで言えば、カツオやワカメが以前はしていなかった後部座席のシートベルトを今では必ず締めている。しかし、夏も冬も冷暖房は出てこず、暑い日は窓を開け、寒い日にはこたつを出す風景はいつまでも変わらない。原作の世界観を損なわないことを条件に、時代に合わせて違和感がある物は変え、原作の面白さを活かす物は変えずに残しているのだ。

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