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視聴率1位『テセウスの船』担当Pが明かす、主人公に息づく“大映ドラマ”の遺伝子
キムタク後、半沢前…異色ミステリーに「プレッシャーもあった」
日曜劇場といえば、近年は企業ドラマやヒューマンドラマのイメージが強く、実際にそれが成功を収めることも多かった。本作のようなSF的要素のある作品も、遡れば『JIN-仁-』(2009年)、『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』(2013年)、『流星ワゴン』(2015年)などがあるが、非現実的な設定が少ないのは確かだろう。しかも今期は、前クールで木村拓哉主演の『グランメゾン東京』が話題になり、次クールに『半沢直樹』続編が控えるという、なかなかハードなタイミングである。注目度の高い作品に挟まれた今回、これまでとは違った方向性のドラマを制作するにあたり、プロデューサーの渡辺良介氏も当初は不安があったと語る。
「テレビドラマ界を代表する、伝統ある日曜劇場を任されたことは嬉しかったですが、やはり不安やプレッシャーはありました。しかも、ここまでのサスペンス、ミステリー作品は、日曜劇場ではあまり取り扱ってこなかったジャンル。私にとってもチャレンジでしたね。ヒューマンドラマのイメージもある中、原作の良さを損なわず、日曜劇場でどう料理するか…。ただ、懐の深い枠でもあるので、日曜の夜に家族みんなで楽しんで観られるという点を外さなければいいのではないか、と考えて臨みました。今はなんとか成果も出て、ほっとしています(笑)」
“大映ドラマ”は意識せず、だが不器用な主人公像は『スクール☆ウォーズ』とリンク?
この“大映ドラマ”とは、1970年代から1980年代にかけて大映テレビ株式会社が制作し、社会現象を巻き起こした人気作品のこと。10作以上続いた『赤いシリーズ』や『スチュワーデス物語』(1983年)、『スクール☆ウォーズ 〜泣き虫先生の7年戦争〜』(1984年)などがあり、40代以上の人にはお馴染み。再放送や、ドラマ配信サービスで目にした若い人もいるかもしれない。実際、『テセウスの船』の制作は大映テレビが手掛けており、渡辺氏も同社の所属。「制作クレジットに大映テレビとあるのを見て納得した」と目ざとい視聴者もいるが、渡辺氏に聞くと、「とくに意識はしていない」という。
「私も世代ではありますが、そこまで大映ドラマを観て育ったわけではありません。むしろ、大映ドラマというブランドを作った大先輩方とは、ほとんど一緒に仕事をしたことはなく、あのテイストを意図したわけでもないんです。ただ、日曜劇場には『半沢直樹』(2013年)や『ノーサイド・ゲーム』(2019年)など、泥臭くて熱い作品もヒットしています。それこそ、大映ドラマっぽいとも言えるし、それらが一周回って受け入れられるのであれば、作品の傾向や好みにも時代の周期があるんじゃないかと思います」
主人公・田村心についても、「観ていてハラハラする…」「どんくさい」「なんで一人で行こうとするんだ!」と、声を上げずにいられない視聴者が多いようだ。このように、一生懸命なのにどこか不器用な主人公像もまた、ある意味、大映ドラマ的であると言えるだろう。
「『スクール☆ウォーズ』のプロデューサーだった故・春日千春さんは、『とにかくテレビはエンタテインメント。徹底的にお客さんを楽しませなきゃいけない』というポリシーをお持ちの方。当時、春日さんはひたむきに頑張ることを“ひたぶる”と表現していて、主人公はそうあるべきだとおっしゃっていました。心さんもまさに、ひたむきに頑張って、振り回されるという意味では一緒。そこが、当時の大映ドラマとリンクしているのかもしれません」