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視聴率1位『テセウスの船』担当Pが明かす、主人公に息づく“大映ドラマ”の遺伝子

テセウスの船

 今期、最高の視聴率を誇る日曜劇場『テセウスの船』(TBS系)。企業モノ、ヒューマンドラマの印象の強い日曜劇場の枠では、SF要素のあるミステリーは異色だ。にもかかわらず、SNSでは犯人の“考察”のほか、重厚感と外連味ある展開、クセのある登場人物たちにツッコミが入れられるなど、大きな盛り上がりを生んでいる。なかには、1970年代から1980年代かけて人気を博した「大映ドラマ」を思い出す人もいるようだが、果たしてその真相は? 制作を手掛ける渡辺良介プロデューサーに聞いた。

キムタク後、半沢前…異色ミステリーに「プレッシャーもあった」

 日曜劇場『テセウスの船』は、死刑囚の父を持つ田村心(竹内涼真)が、過去と現代を行き来しながら、父の無実を証明しようと奮闘する物語。次々に襲い来る困難に立ち向かう主人公と数々の謎、テンポの良い展開で人気を博している。初回で11.1%を記録して以来、右肩上がりで視聴率を上げ、8話では15.3%を記録(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。視聴者の満足度も非常に高い結果となっている。

 日曜劇場といえば、近年は企業ドラマやヒューマンドラマのイメージが強く、実際にそれが成功を収めることも多かった。本作のようなSF的要素のある作品も、遡れば『JIN-仁-』(2009年)、『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』(2013年)、『流星ワゴン』(2015年)などがあるが、非現実的な設定が少ないのは確かだろう。しかも今期は、前クールで木村拓哉主演の『グランメゾン東京』が話題になり、次クールに『半沢直樹』続編が控えるという、なかなかハードなタイミングである。注目度の高い作品に挟まれた今回、これまでとは違った方向性のドラマを制作するにあたり、プロデューサーの渡辺良介氏も当初は不安があったと語る。

 「テレビドラマ界を代表する、伝統ある日曜劇場を任されたことは嬉しかったですが、やはり不安やプレッシャーはありました。しかも、ここまでのサスペンス、ミステリー作品は、日曜劇場ではあまり取り扱ってこなかったジャンル。私にとってもチャレンジでしたね。ヒューマンドラマのイメージもある中、原作の良さを損なわず、日曜劇場でどう料理するか…。ただ、懐の深い枠でもあるので、日曜の夜に家族みんなで楽しんで観られるという点を外さなければいいのではないか、と考えて臨みました。今はなんとか成果も出て、ほっとしています(笑)」

“大映ドラマ”は意識せず、だが不器用な主人公像は『スクール☆ウォーズ』とリンク?

テセウスの船 竹内涼真

9話、あのノートで何かを見つける竹内涼真(C)TBS

 原作は、青年漫画誌『モーニング』で2017年から2019年まで連載された、東元俊哉氏の漫画作品。ドラマでは、この原作を元にしたストーリーの面白さに加え、重厚感や外連味ある演出が独特の空気を生んでいる。その一方で、クセのある展開やキャラクターにはついツッコミを入れたくなるようで、SNSの賑わいも凄まじい。本作の特色から、「大映ドラマ感があって懐かしい」「ノリが今どきとは違って大映ドラマっぽく、色々言いながら観られるのがいい」との声も上がっている。

 この“大映ドラマ”とは、1970年代から1980年代にかけて大映テレビ株式会社が制作し、社会現象を巻き起こした人気作品のこと。10作以上続いた『赤いシリーズ』や『スチュワーデス物語』(1983年)、『スクール☆ウォーズ 〜泣き虫先生の7年戦争〜』(1984年)などがあり、40代以上の人にはお馴染み。再放送や、ドラマ配信サービスで目にした若い人もいるかもしれない。実際、『テセウスの船』の制作は大映テレビが手掛けており、渡辺氏も同社の所属。「制作クレジットに大映テレビとあるのを見て納得した」と目ざとい視聴者もいるが、渡辺氏に聞くと、「とくに意識はしていない」という。

 「私も世代ではありますが、そこまで大映ドラマを観て育ったわけではありません。むしろ、大映ドラマというブランドを作った大先輩方とは、ほとんど一緒に仕事をしたことはなく、あのテイストを意図したわけでもないんです。ただ、日曜劇場には『半沢直樹』(2013年)や『ノーサイド・ゲーム』(2019年)など、泥臭くて熱い作品もヒットしています。それこそ、大映ドラマっぽいとも言えるし、それらが一周回って受け入れられるのであれば、作品の傾向や好みにも時代の周期があるんじゃないかと思います」

 主人公・田村心についても、「観ていてハラハラする…」「どんくさい」「なんで一人で行こうとするんだ!」と、声を上げずにいられない視聴者が多いようだ。このように、一生懸命なのにどこか不器用な主人公像もまた、ある意味、大映ドラマ的であると言えるだろう。

 「『スクール☆ウォーズ』のプロデューサーだった故・春日千春さんは、『とにかくテレビはエンタテインメント。徹底的にお客さんを楽しませなきゃいけない』というポリシーをお持ちの方。当時、春日さんはひたむきに頑張ることを“ひたぶる”と表現していて、主人公はそうあるべきだとおっしゃっていました。心さんもまさに、ひたむきに頑張って、振り回されるという意味では一緒。そこが、当時の大映ドラマとリンクしているのかもしれません」

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