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「ケチャップついてるやん!」「まだ伴奏です」 大人気アフレコCMが12年ぶりに復活したワケとは?
アフレコCMは、いかに原作の世界観を壊さずに取り入れるかが課題
またアフレコは、アニメーション作品の制作においても取り入れられている。今年放送されたNHK連続テレビ小説『なつぞら』でも、主人公のなつ(広瀬すず)たちが制作したアニメに声をのせるアフレコシーンが多く展開されたので、記憶に残っている人も多いだろう。
近年では、CMなどにもアフレコが多く使われている。2012年から始まった「家庭教師のトライ」のCM「教えて!トライさん」は、アニメ『アルプスの少女ハイジ』の原画と“トライさん”の絵の合成に合わせてアフレコが採用されており、ネット上では「おじいさんがかわいいw」「トライさんのハイジCMおもしろい」などの声が寄せられている。
一方、7年以上も続くなどシリーズ化していることに対し、「ハイジをリアルタイムで見た世代としては、小馬鹿にしているとしか思えない」「パロディがしつこい」といった否定的な見方もあり、いかに原作の世界観を壊さずにアフレコを取り入れるかが課題となっている。
“マッドマックスのワンシーン”ではなく、実は全てオリジナルで制作
当時の状況について、萩原氏はこう語る。「当初、弊社では違うテイストのCMを考えていたようですが、担当してくださったクリエイティブディレクターの山崎隆明さんの提案で、アフレコCMに決まりました。山崎さんは幼少期から、ニュース映像などの音声をオフにして、自分でセリフを考えてアフレコに挑戦したりしていたそうなんです」
2002年4月に放送された最初のアフレコCMは、「食べました」篇だ。ある車内にいる男女の「スパゲティ食べたでしょ?」「食べてないよ」「ケチャップついてるやん!」「食べました!」といったコミカルなやりとりが、当時大きな話題を集めた。また同CMは、第42回ACC全日本CMフェスティバルで金賞を受賞するなど、映像作品としても高く評価された。「放送された当時、僕は学生でしたが『HOT PEPPER』のアフレコCMは、まさに伝説のCMだと思って見ていましたね」(萩原氏)
一方、12年ぶりに復活したアフレコCMに対し、SNS上では「ホットペッパーのマッドマックス使ったCM見た」「ホットペッパーの新しいCMって、完全にマッドマックス だよね?」といったコメントが相次いでいる。だが萩原氏によると、アフレコCMの映像は“映画のワンシーンを採用”しているのではなく、全てオリジナル作品で制作されているという。
また映像のチョイスからセリフの内容、アフレコの“声”までも、全て山崎氏が担当していると、萩原氏は明かす。「もともと山崎さんは関西出身ということもあり、緩い関西弁で制作されたそうです。標準語でのアフレコにも挑戦したそうですが、面白くなかったみたいで…(笑)」
原点回帰の気持ちで、あえて“資産”であるアフレコCMに挑戦
地球ではないどこかの惑星で、荒野をひた走る車…。ピエロ風の男が外から運転席にしがみつき、主人公のドライバーと何やらやりとりをしている…。そんな緊張感のある映像とは裏腹に、聞こえてくるのはおなじみの“脱力系”関西弁。3本とも、思わずクスっと笑ってしまうようなコミカルな内容に仕上がっている。
撮影秘話について、萩原氏はこう話す。「絵コンテで見たときに、一番アフレコを入れてギャップがあるような、意外性のあるシーンが良いと思い、今回の作品に決まりました。撮影場所は海外で、現地の役者さんに出演していただきました。役者さんには、あくまでアフレコとは関係ない英語のセリフをしゃべっていただいているのですが、いかんせん無音での撮影なので(笑)。現場ではどんなCMに仕上がるのか、全く想像ができませんでしたね(笑)」
「山崎さんも僕たちも、とてもプレッシャーがありましたね。前回のようなCMが、果たして今の世の中に受け入れてもらえるのかなと考えたり。また前回と同様に、古風な映画風で制作してもダメだと思ったんですよね。当時の『HOT PEPPER』はフリーマガジンが主でしたが、現在はネットがサービスの中心です。機能が改善している中でCMだけが昔のまま、というのは逆行している気がして…。世間では『HOT PEPPER』CM=アフレコCMと認知していただいています。いかに現在の『ホットペッパーグルメ』が進化しているのか示すためにも、原点回帰の気持ちで、今回はあえて“資産”であるアフレコCMに挑戦しました」(萩原氏)
最新CM3本の累計動画再生数は110万回を超えており、SNS上では「復活してくれて、密かに喜んでる」「ほんとホットペッパーCM好きすぎる」と高評価なコメントが多く寄せられている。12年前の前シリーズを知らない世代にも、その面白さは伝わり、アフレコCMの新たなスタンダードを築き上げた『ホットペッパーグルメ』CM。クリエイティブなCMは、時代を超えて愛されていくということを証明してくれた。