ORICON NEWS
池田エライザ、自己プロデュースで存在価値高める ”マスとコア”使い分けの妙
女優として代表作がないことを”強み”に、SNS時代ならではの方法で飛躍
そんな彼女がTwitterを始めたのは2013年。2017年の『マイナビニュースウーマン』のインタビューで池田は「ツイッターをはじめるときは言って」と、事務所から忠告されていたにも関わらず、「ダメって言われる気がしたから勝手にアカウントを作っちゃった」と話している。また様々な媒体のインタビューで「それまではブログで公式な情報を発信するのが当たり前の流れでした。でもそれでは検索されないと見てもらえない。だからTwitterを始めてみた」と理由を回答。
そして池田は“自撮りの神”と呼ばれるようになった。頬を指でつまんで唇をとがらせる“エライザポーズ”は女子高生の間で大ブームに。だがそもそも自撮りには苦手意識があったようで、スタッフから「下手だね」と言われ、悔しくて1日100枚以上撮り続けて自撮りを極めたというエピソードも。SNSだけではない。池田は2014年、クラウドファンディングでモデル本『@elaiza_ikd』を出版。300万円の資金調達に成功し、人生で初めての“編集長”も経験した。
メディアの露出が少なく知名度が低いうちからSNSを中心に発信を始め、人気を手中に。セルフプロデュース的にかなりの成功を収めているといえるが、「正直いって女優としての代表作は彼女にはまだない。でも、“自分”というものをちゃんとわかってその存在を大きく見せ、価値を最大限に高める術を知っているのは、実はすごいこと」と語るのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「だからこそ主要キャストにも呼ばれるし、映画『夏、至るころ』で初映画監督にも。“モデルや女優の器に収まらない何かがある”と思わせ、“この人と仕事をしてみたい”と期待をもたせる手法は、SNS時代の今だからこそ、若手俳優が見習うべきところは大きいと感じます。さらに自分で自身のTwitterで“#エライザポーズ”を投稿して流行らせたこともSNSで自分で情報を発信できる“今”らしい現象ですね」(同氏)
王道とサブカルの中間地点、その絶妙な“塩梅”が爆発的な魅力に
このことについて、2018年の『ORICON NEWS』でのインタビューで池田は「客観的に見て、私は女性としてすごく健康的な体。パンチラシーンや、お色気演技は、もちろん恥ずかしいけど、自分のようなハーフの役者がやったほうが映像的に“生々しくない”“下品にならない”気がしている。だから、チャレンジングな役柄のお話が来たときも冷静に受け止めている」と回答。自身を客観視する“上手さ”は彼女のセルプロデュース力の高さを裏付ける。
またSNSではクリエイターとしての一面も。趣味はギターであり、Andymoriの『16』やきのこ帝国『クロノスタシス』などの楽曲を弾き語り動画として投稿している。好きなコード進行で作曲をしていることを明かしたり、自身で書いたと思われるクジャクなどの鳥の絵もSNSで公開。「多才だ」などの声が寄せられており、そのアーティスティックな立ち振舞いも魅力の一つ。
「モデルとして、憧れのアイコンとしての王道として立ち位置だけではなく、役者として色々な役柄へ果敢に挑戦し、SNSのなかで自分の世界観を完璧に確立する。好きなことにひたすら没頭するサブカル性も併せ持っている。池田さんは、王道とサブカルの塩梅を絶妙なバランスで醸し出している方です」(衣輪氏)
SNSは可能性を広げる有効手段、使用する派・しない派どちらも称賛されていい
一方で「役者である自分を守るために、あえてSNSはやらない」「SNSから距離を置くことが役者としての美徳である」とされる風潮も。その人のミステリアスさを増す効果もあり、この考え方も納得できる見解ではある。
「ですがSNS時代の現代、これは一概には言えません。まず昨今はキャスティングをするときに宣伝効果を狙ってフォロワー数が多い人を選ぶことが増えた。また、菅田将暉さん、星野源さん、上白石萌音さんなど表現者として様々な側面を持つ人が台頭している上、本田翼さんや夏菜さんなど女優がYouTuberとして活躍する場合も。このほかYouTuberが役者に挑戦する例(岡崎体育)や、のんさんのように、SNSがあったことで女優として表現者として救われた例も。役柄だけでない自身のあらたな一面をアピールする場としてSNSは有効な手段です。池田エライザさんのアカウントはSNS時代に台頭する役者の“今らしさ”を表している」(衣輪氏)
新木優子、中条あやみ、川口春奈、今田美桜など写真が主体のInstagramで100万人以上のフォロワーを持つ女優はたくさんいる。だが、Twitterだけでそれだけのフォロワーを獲得している池田はやはり稀有な存在だ。Twitterで役者の枠を超えた“表現者”として活躍する池田。彼女は次世代の俳優たちにとって、令和の“指標”となってくるだろう。
(文/西島亨)