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LGBTへの理解深まるも…30代で性転換した元女性が明かす“オナベ”の生きづらさ

 心と身体の性が一致しないLGBTへの理解が深まりつつある近年。テレビやネットなどのメディアに当事者たちが登場することも少なくない。ところが、その多くは女性の心を持ちながら男性の体で生まれてしまったニューハーフたちだ。心は男性で身体は女性というオナベを見かける機会はあまりない。そこで今回、“元女性の男性”でニューハーフクラブを経営する新井紳ノ丈さんに話しを聞いた。なぜ、LGBTの中でオナベは少数派なのか。男性として生きることを選んだ元女性たちの生きづらさとは?

「オナベはメディア受けしない。だってキレイとは別だから」

――女性から男性へ性転換されて約20年、今では“関内のオナベの母”と呼ばれているとうかがいました。そんな新井さんがオーナーを務めるお店はニューハーフ(元男性の女性たち)クラブですよね?

【新井さん】 オナベは数が少ないんです。でもニューハーフさんだってなかなか集まらない。他店でもそうですが、うちの『アドレナリン』もニューハーフクラブだけど、オナベ、ゲイさんも在籍しているんですよ。

――LGBTの中でも“元女性の男性”は特に少ない、と感じます。メディアで活躍されているのもニューハーフばかりの印象です。

【新井さん】 それは、やっぱりオナベがメディア受けしないから、というのが一番の要因だと思います。男女関係なく、人はキレイなものが観たいんです。ニューハーフさんは「キレイ」を目指すけど、オナベが目指しているのは「より男臭い男」。どうしてもキレイとは言い切れないですよね(笑)。だからメディア需要がないんです。

――“元女性の男性”でもキレイだったら状況は違いますか?

【新井さん】 そうですね、オナベとは違うけど、最近、中性的でキレイな男の子が受けているのはそういうことだと思います。それと、男装が好きな女性。これもキレイだからメディア受けしますよね。オナベの世界も多様化していて、あえてホルモン注射は打たずに中性的でキレイなオナベを目指す若い子も増えているみたいですけど、それは本当に少数派。だから、今後もオナベがメディアを賑わすことはないと思いますよ。

――メディア露出が少ない結果、少数派に見えているだけでしょうか?

【新井さん】 いえいえ、昔からニューハーフが100人いたら、オナベはひとりと言われるくらい、そもそも数が少ないんです。今はもう少し増えてるみたいですけど。生物学的にも、男の子より女の子が生まれる確率のほうが低いので、元男性のニューハーフが、元女性のオナベより多いのは当然なんです。

性転換手術に関しても、オナベはニューハーフの40年遅れ

――新井さんは30代半ばで男性になられたそうですが、この世界で参考になるような先輩方はいたんですか?

【新井さん】 ほとんどいなかったですね。性転換手術に関しても、オナベはニューハーフの40年遅れと言われているんです。実際、日本人で男性器をつけるという手術を初めて受けた10人のメンバーのうちのひとりが私なんですから。

――新井さん達こそが、先駆者だったというわけですね。それ以降、性転換手術を受けられる元女性の方は増えているんでしょうか?

【新井さん】 それが、まだまだ費用が高すぎて、あまりやる人はいないみたいです。私達のときでひとり1000万円。今は350万円くらいでできるそうですが、それでも高額なことに変わりない。受けたいと思っても、そう簡単には受けられないですよね。男性が女性になるための性転換術は130万円くらいでできますから、費用面でも格差があるんです(笑)。

――元女性の男性として生きるうえで、一番の悩みはなんですか?

【新井さん】 外見が男性でも元は女性なので、力が弱いこと。あと、ホルモン注射で無理矢理骨を太くしているうえに、カルシウムも自力で作れないから、オナベの骨は80歳くらいのおばあちゃん並に弱くてポキッといきやすいみたいなんですね。内臓も弱いし、本物の男性相手に何かあったときは一目散に逃げろって病院の先生からも言われてます。向こうも男だと思って加減しないだろうから、万が一、とっつかまったら、死んじゃうよって。

――新井さんご自身が理想とするのはどんな社会でしょうか?

【新井さん】 LGBTに対して、こんなに世の中が寛容になるとは思わなかったので、いつかLGBT専用の老人ホームでも作ろうかって、お客様ともよく話しているんです。だけど今、世の中がこんなに様変わりして、いずれはLGBTであろうが、ふつうの人であろうが、関係なくなると思うんです。そんな世の中で大切になっていくのは、ひとりひとりの個性や人間力なんじゃないでしょうか。ただし、私自身は自分が性同一障害のオナベなので、同じ悩みや苦しみを抱えている人達に対しては、誰より寛容で、何かあったときは助けてあげたいという気持ちをつねに持っていたいですね。

(インタビュー・文/今井洋子 撮影/徳永徹)

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