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「好きなものを好きと言っていい」ドラクエへの思いを描いた女性作家に聞く“ゲームが教えてくれたこと”
漫画投稿が「思い入れのあるゲーム」を思い出すきっかけに
漫画には、喘息がひどくて学校に通うのも大変だったというかずささんの幼少期が描かれている。体調を崩しがちだったかずささんのもとに親戚の叔母さんが訪ねてきて、「息子が受験だから」とファミコン本体とたくさんのゲームソフトを譲ってくれたのがゲームとの出会いだった。そこからは憑りつかれたかのようにファミコンに夢中になったそう。
「昔のゲームはエンディングが豪華ではなくて、キャラがちょこっと動いて終わりというものもあったんです。初代パネル職人の『ボンバーマン』の100面をクリアしたときも、30秒くらいのエンディングを見た後、すぐにまた1面に戻ってぽかんとしたのを覚えています。『スーパーマリオ』なんかもそうだったかもしれません。体力がないなりにやり込んだのですが、あっけないエンディングで笑ってしまいました。それでも楽しかったです」
そして、かずささんが最高に面白いと感じたソフトが「ドラゴンクエスト2」だった。
「主人公が白兵戦なのに敵が複数出てきて、城から出た途端にとても心細くなる感じや、仲間を集めるのに結構やきもきする展開があって、仲間にできたときにとても嬉しい感じ。そういった感情を『ロールプレイ』で楽しめるのが、小説と違い面白かったんだと思います。主人公と一緒に苦労する感じとか。そして、とても難易度が高かったことも、思い出に残る要因です」
漫画の投稿に2.2万件ものいいねが集まったことについては、「コメントでは『私もそうだった』とか『このゲームやった』とか、実経験をよく話されているので、反響というよりも、それぞれに思い入れのあるゲームがあって、当時どうだったのかを思い出すきっかけになったのかなと思います」と心境を語った。
「好きなものを好きでいいんだ」そう思わせてくれたのがドラクエだった
「男の子たちがそう言ってくるのは、ドッジボールや野球とかの延長線上に考えているのかなと思ったのですが、母親からの言葉には驚きでした。未だにそのフレーズをはっきりと覚えているくらいなので…」とかずささんは当時を振り返る。同時に、ゲームの中で冒険に出るのはいつも男の子。女の子は後からくっついて行くか、助けられるような役回りばかりであることにも気づく。それ以来、かずささんにとってゲームは“一人でこっそりと楽しむもの”になってしまった。
転機となったのは、かずささんの弟が誕生日に「ドラゴンクエスト4」を買ってもらったときのこと。このゲームでは、主人公のキャラクターを男性・女性の両方から選ぶことができた。「勇者が女の子でもいいんだ」「女の子が大きな化け物を倒してもいいんだ」――女だてらに…と言われたかずささんにとって、「ドラクエ4」は最高の答えを与えてくれるゲームとなった。
「おかしな風潮や、よく分からない偏見は、ちゃんと変えられる。好きなものを、ちゃんと好きでいていいんだと思わせてくれたのが『ドラクエ』でした。私は家にこもりがちで本ばかり読んでいたので、物語はもともと好きだったのですが、お金を貯めて買い物ができたり、遠くへ旅をして苦労をしたりなど、リアルではできないトライアンドエラーができるのは、小説とは違う面白さがありました。以前やっていた『PlayStation4』のCM『できないことができるって、最高だ』という言葉に、すべてが集約されていると思います」
時代とともに男女を隔てることなく楽しめるコンテンツの幅が広がってきているとはいえ、「男は男らしく」「女は女らしく」の考え方はいまだに話題となるトピックスではある。だからこそ、かずささんの漫画で発信されたように”好きなものを当たり前に好きでいいんだ”と肯定できるエンタメ作品との出会いは、大きな意味を持つのだろう。