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ORICON NEWS
「売れない…」森永“BAKE”自虐プロモの裏に、自社ヒット商品終売の教訓
『買わない理由』を“買い取り”企画予定外の人気 応募は「2日で5万件超」
ツイッターでの意見募集も、当初は2週間くらいを予定していたそう。しかし、いざ始めてみたらリツイートは殺到し、一日目で想定の1万件を超過。開始1日でツイートが4万を超えた。あえなく二日目の夜、7月30日22時で100円買取キャンペーンを終了した。
藤井さん『ベイクがそんなに危機的な状況だとは知らなかった!』『もっと買わなきゃ!』と言ってくださる方も多くて、それはとても励みになりました。ただ、『どうしてもベイクじゃなきゃならないわけではない』『(似たような)べつのお菓子がある』といった声も多くて、他のお菓子では代わりが効かない存在になっていないんだなというのが、現実として最も厳しいところで。もっと独自の品質価値に磨きをかけて、唯一無二の商品にならなきゃいけないなと強く感じました。
今回100円で買い取った理由は森永製菓内で精査し、今後ベイクのリニューアルに活かすという。
発売当初は画期的だった「焼きチョコ」現在の売り上げは「全盛期の約3分の1」
藤井さん「ベイクドチョコレートの技術としては、当社が特許をたくさん保有しております。例えば、常温でも手で溶けないという独自の技術。その品質かつ“外はカリっとして中は柔らか”という今の二重食感も、なかなか難しい技術なんです。2003年に発売し、数年後に”手で溶けない”というのを打ち出してからは売り上げも伸びていったんですが、最盛期の2009〜2012年頃と比べると、今は3分の1くらいになってしまいました。」
藤井さん「それでもさらなるリニューアルを目指そうということで、調査では見えないような、生の厳しいお声をいただきたいなと思ったのが、今回の意図でして。以前より広告宣伝費も減少し、プロモーションがなかなかできない中、もう一度この商品をお客様に思い出していただきたいなと思い、こういったキャンペーンに踏み切りました」
現在のベイクはというと、アイドルがCMをやっていた時代に比べ、広告予算は減少。存在感は薄くなっていた。予算が減った中でキャンペーンを企画、実施するにあたり、担当者たちは知恵をしぼって考えたという。以前、ニュースで「不満を買取るサービス」が話題になったことから、意見を「買い取る」という姿勢の需要を頭に入れつつ、キャンペーンを企画していったそうだ。
社内の反対も説得、商品の弱みをさらけ出した企画を敢行「ロングセラーの仲間入りをしたい」
藤井さん「とにかく予算がないので、色々面白い仕掛けをすることで、お客様の目にとまってくれたらいいなと。裏サイトの方は、キモカワイイ感じを狙っております(笑)。」
お菓子もスイーツも、時代のブームに左右されやすいアイテム。だからこそブランドとしての安定の美味しさを維持し、時代の流れを読んでニーズに応えることが重要なのだという。1967年から発売されていたロングセラー商品「森永チョコフレーク」の終売が2018年9月に発表された際は、大きなニュースに。「長年販売されていた商品が生き残る訳ではない」という事実は、消費者にも多大な衝撃を与えた。
「森永チョコフレーク」の販売が終了した際も、食べるときにチョコが手に付着するのが直接的な原因だったとも言われている。お菓子を食べながらスマホもさわるといった人々のライフスタイルの変化により、食品に求められるスペックも日々変わっているのだ。
藤井さん「ベイクもロングセラー商品だと言われることが多いのですが、発売から16年というのは今の市場にある商品の中ではまだまだ若いほうなんです。これを機にロングセラーの仲間入りをできるよう、みなさまからいただいた貴重なご意見を踏まえてリニューアルできるよう現在、取り組んでおります。」
あくまでも真剣に、だけどもユーモアたっぷりに。その熱意はまるで、外はカリっと、中は柔らかなベイクそのもの。今、ひとつの商品にかける企業の情熱がもっとも熱く、おもしろく表現される時代なのかもしれない。
(文:川上きくえ)