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(更新: ORICON NEWS

「売れない…」森永“BAKE”自虐プロモの裏に、自社ヒット商品終売の教訓

 「かつてのアイドル、焼きチョコ「ベイク」が何をしても売れず、絶望しています。。」という森永製菓のツイートが世の中をざわつかせた。もはや自虐を通り越して大勝負に出た「ベイクを買わない理由 100円買取キャンペーン」を実施した森永製菓の、マーケティング本部・藤井えりさんに訊く。

『買わない理由』を“買い取り”企画予定外の人気 応募は「2日で5万件超」

『ベイクを買わない理由 100円買取キャンペーン』とは、森永製菓の公式アカウントが7月29日からツイッターで実施したキャンペーン。森永製菓公式ツイッタ−アカウントの「ベイクを買わない理由 買い取ります」という旨の投稿をリツイートし、「ベイクを買わない理由」を投稿すると、森永製菓側がその理由を「Amazonギフト券100円で買い取る」というもの。かつて売れ行き絶好調だったベイクだが、実はここ数年、様々な試行錯誤を凝らしても売り上げは伸びず、それどころか存在を忘れられているかもしれない…という危機的状況にストップをかける施策だ。ただ不満の声を集めるのではなく、買わない理由を“買い取る”という購入者参加型の点が支持を集め、開始直後から応募が相次いだ。

 ツイッターでの意見募集も、当初は2週間くらいを予定していたそう。しかし、いざ始めてみたらリツイートは殺到し、一日目で想定の1万件を超過。開始1日でツイートが4万を超えた。あえなく二日目の夜、7月30日22時で100円買取キャンペーンを終了した。
 その集計数、約5万2千件。『周りの部分が歯にくっつく』『名前がBAKEなのでバカと呼んでしまう』といった厳しい声も多い中、『そういえば最近食べてなかった』『ベイクなくさないで!』という好意的な声も多く寄せられた。

 藤井さん『ベイクがそんなに危機的な状況だとは知らなかった!』『もっと買わなきゃ!』と言ってくださる方も多くて、それはとても励みになりました。ただ、『どうしてもベイクじゃなきゃならないわけではない』『(似たような)べつのお菓子がある』といった声も多くて、他のお菓子では代わりが効かない存在になっていないんだなというのが、現実として最も厳しいところで。もっと独自の品質価値に磨きをかけて、唯一無二の商品にならなきゃいけないなと強く感じました。

 今回100円で買い取った理由は森永製菓内で精査し、今後ベイクのリニューアルに活かすという。

発売当初は画期的だった「焼きチョコ」現在の売り上げは「全盛期の約3分の1」

 そもそも、ベイクとは独自製法で焼いて作られた「焼きチョコレート」菓子。2003年より発売され、「夏でも溶けないチョコレート」としてヒット。「焼きチョコ」というチョコレートの新たなジャンルを確立した。広告やTVCMが大々的に行われ、人気アイドルが登場したり、女子高校生など10代、20代の女性に向けたキャンペーンが盛んに行われていた。

藤井さん「ベイクドチョコレートの技術としては、当社が特許をたくさん保有しております。例えば、常温でも手で溶けないという独自の技術。その品質かつ“外はカリっとして中は柔らか”という今の二重食感も、なかなか難しい技術なんです。2003年に発売し、数年後に”手で溶けない”というのを打ち出してからは売り上げも伸びていったんですが、最盛期の2009〜2012年頃と比べると、今は3分の1くらいになってしまいました。」

藤井さん「それでもさらなるリニューアルを目指そうということで、調査では見えないような、生の厳しいお声をいただきたいなと思ったのが、今回の意図でして。以前より広告宣伝費も減少し、プロモーションがなかなかできない中、もう一度この商品をお客様に思い出していただきたいなと思い、こういったキャンペーンに踏み切りました」

 現在のベイクはというと、アイドルがCMをやっていた時代に比べ、広告予算は減少。存在感は薄くなっていた。予算が減った中でキャンペーンを企画、実施するにあたり、担当者たちは知恵をしぼって考えたという。以前、ニュースで「不満を買取るサービス」が話題になったことから、意見を「買い取る」という姿勢の需要を頭に入れつつ、キャンペーンを企画していったそうだ。

社内の反対も説得、商品の弱みをさらけ出した企画を敢行「ロングセラーの仲間入りをしたい」

 森永製菓といえば、日本を代表するお菓子メーカー。今年で120年を迎える老舗企業で、幅広い世代から親しまれている。新興企業ではない分、会社イメージも、もちろん大事にしているだろう。いろんな戦略がある中である意味“究極”ともいえる自虐キャンペーン。今回のような商品の弱みをさらけ出した形のキャンペーンを進める上で、当然ながら社内では反対の意見もあったという。その際は、「リニューアルのための施策」であることを強く訴えて説得したそうだ。今回の自虐PRの他にも、キャンペーンサイトとして“裏サイト”も作成。店頭を追われ野生化したベイクが密林で樹液を吸ったり、火を噴きながら夜空を飛んでいる姿の目撃情報が並べられていたりして……商品の不振を嘆きながらもちょっぴりシュールな世界観で訴求をはかる。

藤井さん「とにかく予算がないので、色々面白い仕掛けをすることで、お客様の目にとまってくれたらいいなと。裏サイトの方は、キモカワイイ感じを狙っております(笑)。」

 お菓子もスイーツも、時代のブームに左右されやすいアイテム。だからこそブランドとしての安定の美味しさを維持し、時代の流れを読んでニーズに応えることが重要なのだという。1967年から発売されていたロングセラー商品「森永チョコフレーク」の終売が2018年9月に発表された際は、大きなニュースに。「長年販売されていた商品が生き残る訳ではない」という事実は、消費者にも多大な衝撃を与えた。

 「森永チョコフレーク」の販売が終了した際も、食べるときにチョコが手に付着するのが直接的な原因だったとも言われている。お菓子を食べながらスマホもさわるといった人々のライフスタイルの変化により、食品に求められるスペックも日々変わっているのだ。

藤井さん「ベイクもロングセラー商品だと言われることが多いのですが、発売から16年というのは今の市場にある商品の中ではまだまだ若いほうなんです。これを機にロングセラーの仲間入りをできるよう、みなさまからいただいた貴重なご意見を踏まえてリニューアルできるよう現在、取り組んでおります。」

 あくまでも真剣に、だけどもユーモアたっぷりに。その熱意はまるで、外はカリっと、中は柔らかなベイクそのもの。今、ひとつの商品にかける企業の情熱がもっとも熱く、おもしろく表現される時代なのかもしれない。

(文:川上きくえ)        

まるでストーリー仕立て?ベイクの「裏サイト」

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