• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • 趣味
  • “リケジョ”作る「消しゴムはんこ」が話題 “生態学”をベースに緻密に再現
ORICON NEWS

“リケジョ”作る「消しゴムはんこ」が話題 “生態学”をベースに緻密に再現

“リケジョ”作る「消しゴムはんこ」が話題 “生態学”をベースに緻密に再現

 “リケジョ”の「消しゴムはんこ」作家として話題の京楽堂さん。理科の講師としても活動しており、その専門知識を活かした作品を制作している。惑星といったスケールの大きなものから、鉱物、生命、元素というミクロの世界までも表現、写実的で繊細な作りが特徴だ。そんな京楽堂さんに、「消しゴムはんこ」との出会いや、その魅力、こだわりなどを聞いた。

モチーフはシアノバクテリアやグソクムシ…、特徴を把握した上で制作

――「消しゴムはんこ」を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

中学生のころ、友人の小刀が偶然、私の消しゴムに刺さってしまいました。試しにその小刀で消しゴムを彫ってみると、サクサク削れていく感覚が心地よく、消しゴムを彫るのに夢中になっていました。その後、学校の先生が提出物などに捺すオリジナルはんこをリクエストしてくれるようになり、人のためにはんこを彫る楽しみを知りました。そのときの感覚が現在の制作の原点になっています。

――“京楽堂”というペンネームの由来は何ですか?

今日(京)を楽しく(楽)過ごせるような、はんこをつくるところ(堂)という意味で、中学生のときに友人がつけてくれました。

――理科の講師としての知識を活かして、図柄を考えているとのことですが。

シアノバクテリアや、グソクムシのような珍しいモチーフを扱えるのは、基礎生物学のバックグラウンドがあってこそだと思います。クラゲのような身近なモチーフでも、具体的な生物種を取り上げるようにしています。また、ただ単にシャチやイルカを可愛く彫るのではなく、生態学をベースに、その食性にからめて表現しています。生物を外形のイメージのみで描くのではなく、骨格や特異な器官など、特徴を把握した上で描画しています。

――先日出版された書籍『京楽堂の消しゴムはんこコレクション 星屑のかけらを彫る』では、「惑星・鉱物・太古の生物と海・生命・花火と金魚・元素」がモチーフとありましたが。

学生時代、鳥が好きで生物学の道へ進みましたが、結果として研究室ではバクテリアを扱いました。そこで、顕微鏡を用いて肉眼では見えない世界に触れました。また、宇宙規模、地球規模、はたまた原子レベルの世界にも触れ、同じものを観察していても、見る目のスケールで対象物は大きく姿を変えるということに気がつきました。その視点を意識し、惑星という巨大なスケールからはじまり、元素という小さなスケールに向かう構成にしました。

――これまでに反響があった作品はどんなものですか。

宝石のカットを彫った、Jewelという作品シリーズです。「まるで本物の宝石のよう」「消しゴムはんことは思えない」などのお声をいただき、複数のWEBニュースに取り上げられ、それが海外のサイトにも波及したため、今まで接することのなかった海外の方のお声も頂くことができました。

――作品制作において、影響を受けた人はいますか?

作品制作の中で、全ての基本になるのは、自分の彫りたいものは何か、はじめに見極める観察眼だと思っています。それを一番養ってくださったのは、大学時代に解剖学実習でお世話になった先生です。形、色、質感、組成、規則性など…、様々な角度から対象を捉える訓練と、それをアウトプットする方法の基礎を教えていただきました。

構想だけで2週間!? モチーフの下調べで英語論文を読み解くことも

――作品によるとは思いますが、1つの作品を作るのにかかる時間を教えて下さい。

はんこ作りの工程は大きく分けて、モチーフの下調べ、図案制作、転写、彫刻、色選び・捺印、に分けられます。モチーフの下調べでは、数日〜長くて2週間程度かかることもあります。英語論文などを読み込む場合は特に時間がかかります。図案制作には、2、3日〜1週間、転写には、鉛筆転写だと10数分〜数時間、除光液転写だと5分ほど、彫刻に、15分〜丸1日、色選び・捺印に、丸1日〜3、4日かかります。

――作品は全部で何個くらいありますか?

現在手元にあるのは500点ほどですが、中学生時代のものや過去に販売したものを含めると、少なくとも2000個は確実に彫っていると思います。

――制作時に大変なことは何ですか?

“こんなハンコみたことない!”という図案を考えるのは、いつも苦労しています。販売用の作品に関しては、はんことしての実用性を担保していないといけないので、デザイン性はもちろんですが、それに伴って、インクが詰まったりしないか、捺しやすい面と線のバランスになっているか、などを気にしながら制作をしています。また、耐久チェックのために、試作品ができるとわざと雑に200回試し捺しをして、欠けたり模様が変化したりしないかを見ています。ただ、そういった表には見えない工程を踏んでいるからこそ、皆さんの元へお届けできるクオリティのものになると思っているので、手を抜かずに今後も制作していきたいと思います。

――デザインカッター1本だけで作品を作っているとのことですが。

よく目にするのは、デザインカッターと合わせて、複数種の彫刻刀を使っている作家さんです。はんこを彫り始めた中学生当時は、あまり道具をたくさん学校に持っていけなかったので、デザインカッター1本で彫っていました。その後、彫刻刀も使えるように色々試したものの、結局1本だけで彫ったほうが、線がシャープに出て思い通りの印面になるので、元の方法に戻しました。

――作品制作に関してのポリシーをお聞かせ下さい。

はんこ作品のモチーフに学術的バックグラウンドを盛り込むようにする場合が多いので、元となる生物などへの理解度は常に高めていきたいと思っています。また、はんこという、ある程度制約がある表現方法のなかにあっても、見る人があっと驚くような、新たな工夫や美しさを作品に盛り込んでいけるように、常に探求しています。

――今後挑戦してみたい新たな作品テーマなどはありますか?

無機物、特に歴史的建造物にはチャレンジしてみたいです。

――どういったところに「消しゴムはんこ」の魅力を感じますか?

消しゴムという、誰もが一度は触れるとても身近な材料でありながら、突き詰めると様々な表現が可能になる、立派な芸術のツールであり工芸品になりうるという点に魅力を感じます。
INFORMATION
■Twitter:@kyouraku_stamp
■公式サイト:「京楽堂」

あなたにおすすめの記事

 を検索