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四角が丸に見えるのは、脳の思い込み? 世界1位の識者が語る“立体錯覚アート”の世界

 たびたびSNSなどで話題になる“だまし絵”や、錯覚を利用した不思議な図形。止まっているのに動いて見えたり、真っすぐなのに曲がって見えたり、みる人によって全然違った色に見えたり、世の中にはさまざまな“錯視”がある。そんな錯視を世界的にコンテストする『ベスト・イリュージョン・オブ・ジ・イヤー』2018年優勝者である明治大学の研究特別教授、工学博士の杉原厚吉さんに、杉原さんの研究する「立体錯視」の魅力について聞いた。

立体錯視とは、脳がもたらす錯覚「ありそうな形を勝手に思い浮かべてしまう」

――先生が立体錯視の研究を始めたのはいつ頃ですか? また、研究をはじめたきっかけを教えてください。

【杉原教授】研究を始めたのは、1970年代の後半です。大学院を出て、国立の研究所(現・産業技術総合研究所)に就職したとき、ロボットの目を開発する研究グループに配属されました。そこで、写真や絵から立体を読み取る情報処理の方法を研究しているうちに、“不可能図形”と呼ばれるだまし絵の中に、立体として作れるものがあることを見つけ、立体錯視の分野に興味が広がりました。

――だまし絵から想起したものだったのですね。丸く見えていたものが、鏡を通すとギザギザに見えるなど、立体の錯視は、なぜ起こるのでしょうか?

【杉原教授】網膜に写る画像には、奥行きの情報がありません。そのため瞳から見えたものをもとに、脳がそこから奥行きを読み取ろうとして「この立体はこういうものだ」とありそうな形を勝手に思い浮かべてしまうのです。“立体錯視”は、それが実際と異なるときに起こります。

――実際に『立体錯視アート』と呼ばれているようですが、アートとしてとらえたくなるほど、視覚的に面白いですよね。立体錯視の魅力はどんなところにあると思いますか?

【杉原教授】“あり得ない現象が目の前で起っている”という状況を作り出せることですね。本当の立体の形を理性で理解していても、特別な視点から見ると起こるものもあれば、至近距離で両目を使って見ても起こる、両眼立体視が役に立たないほどの強いものも存在するなど、“錯視”はとても奥が深いものなんです。

“不動産広告”に“サッカー中継” 日常の中でも活躍する錯視

――日常の中で、実はこれは立体錯視を利用しているという“隠しネタ”みたいなものはありますか?

【杉原教授】Jリーグのサッカーのテレビ中継のとき、ゴールの横に看板が立っているのはわかりますか? あれは立っているように見えて、実は地面に敷いた平行四辺形のビニールシートなんです。錯視を利用して、カメラの視点から見た時に立っているように見えるように計算されています。また、不動産広告の写真では、部屋が実際より広く見えることがありますよね。あれも錯視です。広角レンズで撮影することで、そのような写真を作ることができます。

――立体錯視は、視覚的に不思議や驚きを与えるだけでなく、普段の生活でも視点を変えて見たり、考えたりすることにつながりそうですね。今後、立体錯視をどのようなことに役立てていけると思いますか?

【杉原教授】私は、道路などの事故の防止に役立つと思っています。錯視は、状況を間違って認識することで起こります。ですから、錯視がさまざまな事故の原因となることがあるんです。しかし、錯視の仕組みを理解することによって、錯視がなるべく起らない生活環境を整備できるようになり、事故の防止に貢献できると思います。

――先生は数学者として立体錯視を作られていますが、数学ができなくても立体錯視を作ることはできますか?

【杉原教授】言葉だけだとわかりにくいと思うのですが、私は数学を使って錯覚の仕組みを調べ、その数学を使って新しい錯視の存在を予測し、計算をしたうえで作品を作って、作った立体で錯視が起こるかを確認する……というスタイルで研究しています。ですから、数学なしでは、立体錯視を作ることは私にはできません。

――ちょっと試してみようと思って簡単に作れるものではないのですね! 立体錯視を通して、先生が伝えたいことはありますか?

【杉原教授】「見れば物の形はわかる」という素朴な判断は、実は危ういものであるということを、立体錯視を体験して感じてもらいたいと思います。とくに、物を直接両目で見るのではなく、それを撮影した画像や動画を見るときは注意が必要です。錯視の仕組みを理解したり、新しい錯視立体を創作したりするのに、数学が役立つ…言い換えると,数学なしではできないという数学の力も感じていただきたいと思います。

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