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“色気”ある二人が対談、原色の女優・石原さとみが感じる吉田鋼太郎の「そこにいるだけで漂う香り」
吉田鋼太郎 舞台は、カットがかからない。そこから生まれるものはたくさんあります。長い掛け合いでどんなものが生まれるのか。それが舞台の現場なんですよね。
石原さとみ 全然違います。舞台は稽古ができる。試せるし、恥もかける。私は稽古の時間が一番好きなんです。稽古だと、正解じゃないものをあえてやってみることができるじゃないですか。遠回りすることで得られるものって、すごく多いと思うんです。
――稽古の場で、俳優さんがアイディアをどんどん出してくるというのは演出家としてはどうなのですか?
吉田鋼太郎 実際そういうことができる俳優は多くないですが、演出家としてはありがたい。僕も俳優として、提示できる人間でありたいと思っています。共演者という意味でも、しっかり提示してくれる人が相手なら、こちらのエンジンもかかりますよね。僕は絶対に必要なことだと思っています。
――舞台というのは本番が何日も続きますが、日々進化していくものなのですか?
吉田鋼太郎 普通だと演出家というのは、初日の上演が終わると2〜3日様子を見て、次の仕事に行ったりするんです。でも本当は、“常に前日より良いものを”という思いがあるので、千秋楽までいたいものなんですよね。今回、僕は演出だけではなく出演もしているので、毎日現場にいられます。それはすごく良いことだと思うんだけど、役者にとっては嫌かな、と。なぜなら、最後までダメ出しされるから(笑)。
石原さとみ 私は全然嫌じゃないです(笑)。
吉田鋼太郎 さとみちゃんは珍しいタイプだと思う。役者にとっては面倒くさいと思いますよ(笑)。でも演出家の立場になると、毎日変えてみたくなるんです。
――俳優にとって、舞台を続けるというのはどんな意味があるのでしょうか?
吉田鋼太郎 僕は舞台からキャリアをスタートして、舞台しかやっていない時期が長かった。芝居イコール舞台だったので、映像との違いを意識したことはあまりないんです。でも半年ぐらい映像の仕事をして、また舞台に戻ると、やっぱり大変だなと思いますね。セリフの量も半端ないし、汗はかくし声も枯れます。ノイローゼみたいになるし、ストレスだらけですよ(笑)。でも本番になると、快感まではいかないまでも、スッとする。競走馬が走っている感じかな。
石原さとみ 私にとって舞台は、インプットの場という意味も大きいです。成長するため、発見するため、心と体の筋トレのように感じます。1ヵ月オフをもらうより、1ヵ月稽古していた方が、数倍インプットできる。私はとにかく稽古が好きだし、逆に本番は1日でいいくらい(笑)。
舞台で何が起きるのか? 「みんなで石原さとみを追い詰めていきます」
吉田鋼太郎 作家の僕、飲んだくれの山内圭哉、警官の矢本悠馬、やり手ババアの水口早香、この人たちは災害の起きた町で、なんの必要もない人物。そのなかで、一人だけ役に立とうとするのがさとみちゃんが演じる麻希子。僕はさておき、芸達者な役者たちがみんなで石原さとみを追い詰めていきます。いじめられた石原さとみが、どういうものを出してくるのか――。明るくても落ち込んでもいい。泣いてもいい。稽古をしてみて生まれてくるものが、新しい石原さとみだったらいいなと思っています。
石原さとみ 追いつめられたい(笑)。とにかくすべてを出し切って、臨みたいと思っています。
(写真:田中達晃/Pash 文:磯部正和)