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こんな世界に住んでみたい… 盆栽模型が魅せる匠の技「子どもの頃の空想を形に」
盆栽が誘う小宇宙 制作のきっかけは「盆栽の中に家を作って、自分が中に入りたい」
――相羽さんが盆栽へ興味を持った原体験とはなんだったのでしょうか?
相羽氏盆栽への興味を持ったのは小学生の頃です。ビール瓶のキャップに土を入れて、小さな苗木を植えて盆栽を作り遊んでいました。その盆栽を見ているうちに、自分がいつの間にかその中に入り込み、数センチほどの木が大木へ変容し、私はそれを見上げたり、木のまわりを歩いたり幹に登ったり……空想上のツリーハウスで遊ぶこともしばしばでした。
盆栽という小宇宙の中で物語を想像する面白さ――。それこそが「盆栽」の魅力だと相羽氏は語る。
――「BONSAI ART」を作ろうと思ったきっかけはなんでしょうか?
相羽氏盆栽の中にツリーハウスを作って、自分がその中の入りたいと思ったのがきっかけです。
――「BONSAI ART」が海外で話題となった理由は何だと思いますか?
相羽氏盆栽自体の人気や認知度が海外では非常に高く、「BONSAI ART」にそれぞれの想像力を刺激する世界観が加わりアートの領域に高められていた点が、非常に高く評価していただいたポイントではないかと思っています。
アートディレクター、空間プロデューサーとしてだけでなく、迷図作家としての肩書きも持つ相羽氏。迷図作家の第一人者でもあり、氏の多才ぶりが伺える。コンピューターがない時代、1ミリ方眼紙に手書きで緻密な迷図を描く光景は、まさに匠の技というイメージにピッタリ。
――迷図の作品が「BONSAI ART」を制作する上で影響を与えた部分はありますか?
相羽氏「BONSAI ART」が完成したとき、作品を眺めていると、自然と迷路のように作品の中まで追っていけるような作品になっており、私の作品は迷図がベースとなっているんだなと実感しました。随所に影響を与えていると思います。
「BONSAI ART」を見た人の反響は様々ながら、やはり圧倒的に多いのが「楽しい」「ワクワクする」「何時間でも眺めていられる」といった声。ある有名な映画監督が相羽氏の作品の1つ「アイスクリームパッケージタワー」を鑑賞した際にこう語ったそうだ。「この作品で、映画が1本作れる」と。それを聞いた氏は、自分と同じ思いを抱いてもらえたことがとても嬉しかったそう。
――ファンタジックな世界観が特色だと思いますが、その“源”はどこにあるのでしょうか?
相羽氏私が描く作品は、全て私が「現実に作りたい」という思いで描いたものばかりです。現実に建てるにはコストも時間もかかるので模型を制作しました。それと、絵は2次元なので3次元での表現が必要でした。本来は実際に人が住むサイズでのイメージを想定してデザイン画を起こしています。日本で難しくても、世界のどこかでいつか実際に建てることができたらな、と常に願いながら作品を手がけてますね。
本物にしか見えない盆栽も実は模型「木、枝、葉まで、ひとつひとつ手作り」
――「BONSAI ART」制作の手順を教えてください。
相羽氏まず、私の頭の中に浮かんだ構想を絵で表現します。その絵を元に造形チームの方に形にしていただく手順ですね。納得のいく形になるまで何枚もデザイン画を描き、私が思い描いているイメージを伝え、作品の完成イメージに擦り合わせていきます。
――模型と聞いた今でも信じられないほど、本物の盆栽にしか見えません……。「BONSAI ART」制作で最も難しい作業はなんでしょうか?
相羽氏私が思い描いている世界観を造形チームに理解していただき、確実に表現してもらうための意見交換、キャッチボールにはかなり時間を割いています。とにかく細部まで緻密にこだわっていますので、造形作家の方は作業も大変かと思いますね。木や枝、葉っぱまで、作品内の細かいパーツも全て、ひとつひとつ手作りです。本物らしく、自然に見えるよう意識して作っていただいています。
――「BONSAI ART」を鑑賞する際、どういったところを見てもらいたいですか?
相羽氏自分がツリーハウスの世界に入り込んだように、目で追いながら楽しんでいただけたら。1日中楽しめますよ。
影響を受けたのはウォルト・ディズニー ジャングル・クルーズの平面図を描いていたという学生時代
――「BONSAI ART」においてのこだわりはどんなところでしょうか?
相羽氏“想像を超えたリアル感。リアルだからこそ見える想像力”です。いつも私の目の前にある夢の世界、そして見るたびに新しいストーリーを発見できる。そんな最高の空想を具現化したもの、それが「BONSAI ART」です。
――相羽さんがアートディテクターとして心がけている点はどこでしょうか?
相羽氏全てにこだわることです。特に、誰が観てもワクワクな世界に入っていけるよう、全てのディレクションや表現にこだわる。そういった積み重ねの結果で、「BONSAI ART」を本物にしていきたいですね。
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Photo : Kenji MASUNAGA(Nacasa&Partners)