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瓶の中で舞うトランプ、蝶…華麗な“切り絵ボトルアート”にSNSで称賛の声

 ボトルを使ったアートといえば、船を瓶の中に入れたボトルシップが有名。これも緻密な工芸だが、カミヤ・ハセさんの“切り絵ボトルアート”はより繊細、そして華麗だ。和洋の文学や自然を立体切り絵にし、ボトルに入れて展開。中からLEDライトで照らし出すと、ガラスに囲まれた空間にまったく別の美しい世界が立ち上がる。元々は日本画を専攻、和風商品のデザイン・原画を手掛けてきたカミヤさん。現在の制作活動、作品に込めた思いを聞いた。

きっかけはテキーラの瓶、時代や国を超えるイメージ求め古典文学を題材に

――もともと日本画専攻で和紙の貼り絵・切り絵を専門にされていたカミヤさん。切り絵ボトルアートを始めたきっかけは?
カミヤ・ハセ たまたまお土産に頂いたテキーラボンボンが、本物のテキーラのボトルにぎっしり詰まっていたことです。どうやってボンボンを詰めたのだろうと思ったら、ボトルの底に直径4センチの穴が開けられていて、そこから出し入れする仕組みになっていて。食べ終わった後、そのボトルを何かに使えないかと首をひねっているうちに、「ボトルの中で蝶々が飛び回っていたら面白いのでは?」と閃いて、いたずら心で作ったのが第一号でした。でも、普通はボトルの底に穴などないので、それからは切り絵を折り畳んで上から入れるようになりました。

――和物から海外文学を題材にしたものまで様々な作品がありますが、テーマはどのように決めますか?
カミヤ・ハセ ご依頼があったり、各展示会のテーマに合わせることが多いのですが、自由に作る時は「共通のイメージ」ということを大事にしています。「集合的無意識」というのは、もしかしたら今では否定されている概念かもしれませんが、それでも何かしら普遍的なイメージというのは、時代や国を越えて存在しているように思います。古典文学などから材を採ることが多いのはそのためです。

「新しい和風」探った商品企画時代、今も作品ににじみ出るものが

――作品には日本らしい繊細さや情緒が漂う気がしますが、こだわりは?
カミヤ・ハセ 特に日本にこだわりを持っているわけではないのですが…。今では完全フリーランスですが、元々は便せん封筒、カレンダー等の企画製造会社に就職し、和風の商品企画に配属されていました。当時は、若者向きの便せんなどはどれも横書きで、タイトルも英語が一般的。縦書きや日本語タイトルのもの、和紙の貼り絵などは「ダサい」と言われて売れなかった時代です。私は、「日本人が日本語で手紙を書くのになぜ?」という反発心のようなものもあり、何とか自分たちにふさわしい「新しい和風」を作り出そうと工夫しておりました。

 そこに、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』人気や書籍『声に出して読みたい日本語』、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のヒット等が重なってレトロブームが続いたんです。ちょうどその波に乗って、気負いのない等身大の和風の商品が好まれ、すっかり定番になりました。それが長い間続いた結果、「新しい和風」は発展解消の形となり、今では特に和風と呼ばれることもなくなりました。SNS全盛の今、便せん封筒も売れなくなりつつあります。「新しい和風」に長い間取り組んで来ましたので、便せん封筒の舞台を離れても、それが作品ににじみ出ているかもしれません。

Twitterが呼び込んだ仕事や繋がり、とはいえ「SNSは麻薬のよう」

――たしかにSNSのお蔭で手紙を書くことも少なくなりました。とはいえ、気軽に作品を公開したり、他人とやりとりしたりと制作活動を行う人にもSNSは有効ですよね。
カミヤ・ハセ 個人が情報発信できるようになったのは、作品制作をする者にとって大変ありがたいことだと思っています。私は長い間、商業美術の業界にいて、特に自分の名前を宣伝したこともなく、商品としては自分の手掛けたデザインを町で見かけることも多いのに、全くの無名作家です。

 ところがTwitterを始めてから、色んな企業様やギャラリー様、メディアの方からもご連絡を頂き、展示や仕事の機会を頂くようになりました。ハンドメイドが大人気の今、私のようにSNSで発信することにより、意外な繋がりを得る人が増えていくと思います。ただ、デメリットとしては、SNS の反応は麻薬のようなところがあり、あまりに心を捕らわれてしまうと、振り回され、迷子になってしまう部分もあると思います。適度な距離感をつかむということが大事なのでしょうが、なかなか難しいことです。

『全国カレンダー展』で銀賞受賞、改めて考えたボトルに入れる意味

――制作工程や所要時間を教えてください。
カミヤ・ハセ まずはボトルの内側を、菜箸などを使いながらアルコールティッシュで隅々まで磨き、届かない場所を確認します。
・届かない場所には、編み棒、熊手、など色々な形の棒を組み合わせて、届くように道具を自作します。
・ボトルの形に合わせて構図を考え、切り絵を作製します。
・下に配置するパーツから順にボトルに入れ、中で開き、ひとつずつ接着していきます。

 制作時間は、作品によって全くバラバラですが、複雑な構造のものは、ボトルに配置するだけで3日ほどかかりました。難しいのは幾何学的に整然と配置することです。

――特に苦労する工程、楽しい工程は?
カミヤ・ハセ 折り畳んで容器に入れたり、中で開いたりしているうちに、せっかく作った切り絵が壊れてしまうことがあって。やり直したり、構造を考え直したりしなければならないことには苦労しますね。楽しいのは、次に何を作ろうか考えながらガラス容器を物色している時間です。

――『第69回全国カレンダー展』(2018年)で銀賞を受賞されています。
カミヤ・ハセ カレンダー展の作品は、実験器具の製造販売企業様からのご依頼でした。それまではお酒と香水のボトルだけを使っていましたが、フラスコやビーカーや、見たこともないようなガラス器具を使わせて頂いたのは良い経験になりました。改めてボトルに入れる意味を考えるようになり、今ではボトルに限らず、花瓶や鉢も使っています。切り絵をボトルに入れる意味は、「ボトルに入れること」自体が目的なのではなく、切り絵を空間に配置するための手段なのだということを改めて思うようになりました。飛び回る蝶々、風に舞う羽や木の葉、降り積もる雪、襲ってくるトランプ、などの表現は、ガラスに囲まれた空間の内側だからこそでき得ることだと思います。

ボトルに詰めるということが、まさにボトルネック

――ほかに、お気に入りの作品や力作と言えるのは?
カミヤ・ハセ ボトルに詰めるということが、まさにボトルネックになっていて。なかなか作品の密度が上がらず、まだ力作と言える作品までたどり着いていない感じがします。今取り組んでいるのは、中の「切り絵の立体化」。まだまだ小作品ですが、これから深掘りしていきたい方向性が「桜天女」です。

――カミヤさんによって、使い終わったビンも新たな命を吹き込まれ、作品として再生します。
カミヤ・ハセ 捨てられる運命のビンですが、私が作品として再生しても、その作品もまた、いずれは捨てられる時が来ます。私の作品を捨てる時には、一体何ゴミとして出せばいいの? と自分でも考えます。中の切り絵を取り出して、燃えるゴミとガラス瓶とに分別しないといけないと思いますが、大変面倒で申し訳ないことです。

――最後に、今後挑戦したい作品・活動を教えてください。
カミヤ・ハセ まずは目前に迫っている『八百万之紙&切藝展・参』(4/13〜21上野)です。神業と言われる切り絵、紙工作をはじめ、レジン、ソープカービングもあり、実力のある作家さんが揃う大人気企画ですので今準備に追われています。今後は、平面や半立体の切り絵作品も、もっと制作したいと思っています。切り絵ボトルアートと平面の切り絵、和紙コラージュでそれぞれ得た技術やセオリーが統合されて、より高い次元を目指せたらいいなと思っています。

カミヤ・ハセ
和紙の貼り絵切り絵(和紙コラージュ)作家。 1996年より便箋封筒、カレンダー、グリーティングカード、立体カード等のデザイン、原画。 代表作:カレンダー「花摘暦」1998年〜(日本ホールマーク社)
4月13日(土)〜21日(日)上野・ギャラリー心で開催される『八百万之紙&切藝展・参』に出品。

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