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『なつぞら』、名作アニメのオマージュが新たな楽しみ方に、 オタク層引き込む朝ドラの可能性
名作アニメのオマージュに見えるシーンに反響、視聴者参加型の新たな楽しみ方
さらに初回放送の本編がはじまると、「なんかこれ、○○っぽくない?」との投稿がタイムラインに殺到。内容としては、「草刈正雄の存在自体が『アルプスの少女ハイジ』のアルムおんじを思わせる」、「主人公のなつが絵を描いている描写が『風立ちぬ』」、「空襲後に妹をおんぶして、お恵みをもらうヒロイン子役の姿が『火垂るの墓』」、「東京から北海道へ行き、大人たちに“ここで働かせてください!”と頼み込むヒロインの姿が『千と千尋の神隠し』」、「ヒロインを育てる夫婦の夜の会話で、妻の“ふじこ”を夫が“ふ〜じこちゃ〜ん”と呼ぶ姿が『ルパン三世』」等々、随所に過去の名作アニメへの“オマージュ”と思えるシーンが散りばめられていることが指摘されている。
しかも、ストーリーの中で“自然”に挿入されているので、無理やり感もなければ“狙いすぎ感”もない。たとえ演出にその意図がなかったとしても、「今日のなつぞらは○○ぽかった」、「これの元ネタは○○?」といった憶測を含めた盛り上がりを見せ、視聴者参加型の“新たな楽しみ方”となっているのである。
マンガにプロレス…過去にはサブカル層の琴線に触れる朝ドラ作品も
また、『半分、青い。』もマンガ家が主人公であり、その師匠・秋風葉織が描くマンガは少女マンガ家のくらもちふさこ氏がモデルで、ヒロインが描いた設定のマンガが実際に別冊マーガレットに収録されるなどして話題となった。
朝ドラ以外でも、一連の宮藤官九郎脚本作品や福田雄一監督作品に見るように、オタク&サブカル層の琴線に触れる作品はあったが、アニメ好きの層まで掬い取ることは“できそうでできなかった”のである。しかし今回の『なつぞら』では、全世代に愛されリスペクトされる“アニメ”をテーマにした形が功を奏したのか、視聴者たちがSNSで盛り上がっている様子が伝わってくる中で、これまで取り込めなかった“オタク層”をもしっかりと巻き込んでいるようなのである。
「アニメ=国民的コンテンツ」の共通認識もとに、全世代を取り込む朝ドラへ
そうした配慮の一環なのか、かつての朝ドラヒロインを劇中に登場させるという、いわば「朝ドラ女優を探せ」的な“仕掛け”も用意されているようなのだ。たとえば、第2話では“初代・朝ドラヒロイン”の北林早苗、第5話では『ふたりっこ』のヒロインを務めた岩崎ひろみが登場、ほかにも小林綾子(『おしん』)、山口智子(『純ちゃんの応援歌』)、比嘉愛未(『どんど晴れ』)、貫地谷しほり(『ちりとてちん』)の出演が発表されている。「朝ドラ100作目」を記念して朝ドラ自体の歴史も楽しめる工夫がほどこされており、今作はエンタメ業界全体への尊敬と貢献に対する自負をも感じさせる作品となっている。
国民的名作アニメへのオマージュといった“遊び心”を取り入れ、視聴者もSNSで盛り上がり、結果的にドラマへの興味が拡散されていく。『なつぞら』に起きている現象は、まさに今の時代にフィットしているともいえるが、そもそも『なつぞら』自体、ヒロインが日本アニメ創成期にアニメーターになっていくというストーリーだ。今回の“アニメ推し”にも必然性があるわけで、そこにはあざとさやわざとらしさはいっさいない。今後の『なつぞら』ではどんなアニメへのオマージュが飛び出し、拡散されていくのか期待したい。