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熊本の被災地で見えた“ペット防災“”の今、批判あれど「同行避難こそのメリット」
被災地の現実を知る片野氏が提言、同行避難を想定した準備
フードと水の用意
「普段より食べる量が減ることが多いので、フードは5日分くらいを用意しておけば、救援物資が届くまでもつでしょう。水については、人間用の物資を転用すると批判が起こりかねないので、ペット用はできるだけ飼い主が用意したいところ。ある避難所では、人間用とまったく同じ水でも、『ペット用』とマジックで大きく書かれていました。しっかり区別がついているだけで、ペットにまつわるトラブルは減るかもしれません」
普段使っているケージで避難
「災害時には動物もショックを受けるため、慣れた環境に少しでも近いものを用意してあげる必要があります。ケージはいわば自分専用の部屋であり、ベッドごと移動しているようなもの。慣れたケージに入って避難するだけで、ペットの安心度も違います」
常用薬や療法食を準備
「病気療養中のペットにとって、一番大切なもの。避難時に薬も持ち出せればいいのですが、できないこともある。そんなときのために、薬の銘柄と量をあらかじめ控えておく。または写真を撮っておくと良いでしょう」
迷子札とマイクロチップを装着
「ペットが驚いて家から飛び出してしまうこともあるので、首輪に迷子札をつけたり、マイクロチップを使うことをお勧めします。飼い主と離れて迷子になってしまった子は、痩せて首輪も外れてしまうので、マイクロチップの併用をお勧めします」
外の環境に慣らしておく
「犬は日頃からドッグカフェなどに行っておくことで、家とは違う室内でも静かにしていられるようになります。他にも、ドッグランなどで多くの犬と触れ合ったり、いろんな経験をしておくといいでしょう。猫であれば、ハーネスをつけて散歩の練習をすることも有効です。避難所では猫はケージに入れっぱなしになってしまうので、リードをつけた状態でも運動ができるようにしておくといいと思います。いつもと違う環境でも怖がらない、そういう訓練が災害時に犬猫の命を救うことにもつながるんです」
飼い主同士での連携
「災害発生から数日すれば、同伴避難所や動物病院についての情報がネットなどでも伝わってきます。ただそれも、受け入れや救出に限界があるため、普段から近所の飼い主同士で連携をとれるようにしておくと、何かと心強い。飼い主が外出中の被災や、自分が怪我をして迎えに行けないとき、ペットを託せるような協力体制を築いておくといいと思います」
ペットの預かり先は自治体などに相談
「災害時、動物を無料で預かってくれるボランティア団体もありますが、中には後になって費用が必要だと言われたり、ペットを返してもらえない…といったトラブルも発生しています。どうしても預けなければいけない場合には、自治体や動物病院から紹介してもらったボランティアにお願いすることをお勧めします」
閉塞感漂う避難所の癒しに…守るだけでなく、動物から得られるメリット
「私が訪れた熊本の避難所では、性格が穏やかなゴールデンレトリーバーが避難所の人気者になっていました。誰もが不安で傷つき、やることもなく閉塞感が漂う避難所では、動物に癒されることも多いんですよね。守るだけではなく、大変なときだからこそ動物から得られるメリットがあることを、たくさんの方に知ってもらいたいと思います」
(文:川上きくえ)
『竜之介先生、走る! 熊本地震で人とペットを救った動物病院』
片野ゆか著
片野ゆか:
2005年、『愛犬王 平岩米吉伝』で第十二回小学館ノンフィクション大賞を受賞。『北里大学獣医学部犬部!』(ポプラ社)、『ゼロ! こぎゃんかわいか動物がなぜ死なねばならんと?』(集英社)など著書多数。10年間にわたり熊本の動物愛護について取材。