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バイオリンの中の“鉱物ジオラマ”に反響、制作者明かすコンセプトは“明け方の夢”

バイオリンの中の“鉱物ジオラマ”に反響、制作者明かすコンセプトは“明け方の夢”

 試薬瓶、電球、アンティークグッズなどに鉱物標本とジオラマを閉じ込め、独自の世界観を表現した“鉱物ジオラマ”。どこか懐かしさを感じるその作品は、極力加工はせず天然のままの鉱物を使用しているとのこと。そんな鉱物ジオラマを制作しているのは、「時計荘」というブランド名で活動している島津さゆりさんだ。鉱物標本を眺めて暮らしたいという純粋な気持ちから作品制作を始めたと語る彼女に、鉱物ジオラマ制作にかける想いやこだわり、その魅力などを聞いた。

鉱物を守るために密閉も、「閉じ込められた世界が愛おしい」

――鉱物に興味を持ったきっかけを教えてください。
島津さゆり小学2年生の頃、家族で博物館に行った際に蛍石の美しさに見とれていると、学芸員さんが「この石はね、火で炙ると蛍みたいに光るから蛍石というんだよ」と教えてくれました。その話があまりにも印象的で、両親にねだってミュージアムショップでお土産に小さな蛍石の八面体を買ってもらいました。そこから特に鉱物が好きになり、自分でもささやかな収集をするようになりました。

――鉱物を使って作品を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
島津さゆり結婚して子どもが生まれてからは目に付くところに鉱物を置くことは難しくなり、しまっていました。しかし、辛い気持ちになったとき、ふと鉱物コレクションを思い出し眺めていると、疲れて冷え切った心が優しい気持ちになっていくのを感じました。そこから、「飾っておけば、疲れたときすぐ眺めることができる」と思うようになり、コレクションを飾るようになったのがきっかけです。

――「鉱物ジオラマ」全体のコンセプトは何ですか?
島津さゆり「明け方に見た気のする夢の光景」というコンセプトで作っています。夢の中では誰もが平等に自由です。一人きりで静かに楽しめて、目が覚めた時少しばかり気持ちが楽になれるものを作って行きたいと願っています。

――試薬瓶などに鉱物ジオラマが入った作品が多いですが、閉じ込めることの“意味”は何でしょうか?
島津さゆり基本的には「鉱物標本を安全に飾り、眺めて暮らしたい」との思いから作っています。鉱物によっては酸化したり、光で褪色したり、湿気に弱いものもあります。また、素手で触ると危険なもの、とても脆くて触れないものもあります。試薬瓶などに入れて固定し、密閉すれば劣化から守れます。ただし、箱庭やスノードームなど、閉じ込められた世界に愛おしさを感じているのもまた事実です。

鉱物やアンティークが受け継いできたものを自分の作品で終わりにしない

――これまで反響があった作品はどんなものですか?
島津さゆり光を入れた作品は反響が大きいと思います。鉱物によっては透過光が美しいものもあり、これを最大限に見せたくて、LEDを仕込んだ作品もあります。また、昨年「メルキュール骨董店」とのコラボとして、アンティークの壊れたバイオリンをリペアしてオブジェに作り替えた作品は反響が大きかったです。

――様々な鉱物があると思いますが、鉱物によって作風も変わりますか?
島津さゆり鉱物標本を眺めて暮らしたいというところから出発していますので、「この石をどう飾ったら一番素敵に見えるだろうか」ということから作品を作っています。そのアイデアによって、作風も変わっていると思います。

――鉱物の選定から配置など、制作の流れを教えてください。
島津さゆり今は世界中の鉱物がネットで買えますが、ネットなどで決めることはせず、必ず自分の目で見て選ぶことを大事にしています。また、どんなにすばらしい鉱物でも壊れたり劣化する可能性があるもの、学術的に貴重すぎるものは選びません。鉱物が一番美しく見える角度を計算して配置しています。また、安全に飾るため固定はしっかりしますが、鉱物に影響のないジオラマ素材しか使いません。アンティーク素材はなるべく次の世代に受け継げるよう、リペアを行ってから使用しています。

――制作時に気を付けていることは何ですか?
島津さゆり基本的に大好きなものをいじっている、という感覚なので大変ということもないのですが、水面を表現する際は鉱物に影響がないよう、レジンは使わずに水溶性の接着剤とメディウムを漆塗りのように何度も何度も塗り重ねて作るので骨が折れます。また作品に付属するラベルは一作ごとにすべて違うので、一度にたくさん用意するときは産地や鉱物名の正確さを損なわないよう気を使っています。

――作品制作に関してのポリシーをお聞かせ下さい。
島津さゆり鉱物やアンティークを美しく作品に仕立てるということ以上に、それらが私の手に渡るまでに長い時を過ごしてきたことを忘れずに制作をしています。その時間に敬意を払い、鉱物やアンティークを傷つけることなく作品にし、私の作品になって終わりではなく、なるべく原状復帰できるようにしてあります。受け継がれてきたものをここで終わりにしないということは、譲れないポリシーかもしれません。

――どういったところに「鉱物ジオラマ」の魅力を感じますか?
島津さゆり美しいものや魅力的な鉱物には人を慰める力があると思っています。以前お客様に、「猫と暮らしているから飾れなかったけれど、額入りなら安心」とおっしゃっていただきました。また、「入院中、景色が楽しめなくてつらいから、鉱物ジオラマを持っていく」という方もいらっしゃいました。様々な鉱物ジオラマの楽しみ方が広がっていくこと、それこそが私の喜びです。
INFORMATION
◆公式サイト http://tokeisou.jp/(外部サイト)
◆Twitter@yuri1117(外部サイト)
◆Instagram@tokeisou_zabiena(外部サイト)

4月27日〜6月2日の期間、個展『夢の裏側』が笹塚・シャララ舎にて開催

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