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いま“ヘタレ役”がもっとも似合う永山絢斗、「不憫萌え」が俳優力の証に

  • 永山絢斗 (C)oricon ME inc.

    永山絢斗 (C)oricon ME inc.

 ここにきてジワジワと視聴率を上げている深田恭子主演ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)で、ヒロインを想い続ける永山絢斗の演技が話題を呼んでいる。永山が演じるのはヒロインの幼馴染で、仕事ができるエリート商社マンだが、ヒロイン相手だと空回りしてしまう恋愛下手の“ヘタレ役”。放送後のSNSでは、「あのどこか頼りない感じのお芝居がとてもよい」、「健気でにくめなくて結果的に好き」と多くの好意的な反響が寄せられている。“ヘタレ役”かつ“2枚目だけど3枚目”という絶妙な塩梅を見事に演じきる永山絢斗の“不憫萌え力”とは?

脱“瑛太の弟”、胸キュンドラマから大河までこなし独自のポジションを確立

 永山の兄は人気俳優の瑛太だが、今回の『初めて恋に落ちた日に読む話』を機にあらためて瑛太の弟であると認識した人も多いようで、Twitterでも「永山絢斗って瑛太の弟だったんだ!」とのつぶやきがかなり見られた。3人兄弟の末っ子で、瑛太も6歳離れた永山が「かわいくてしょうがない」と発言しているし、永山自身も「小さいころは(兄たちに)おもちゃみたいにされて育った」、「いたずらされた仕返しに、ゲームのセーブデータを消したりしていた」と『A‐Studio』(TBS系)に出演した際に発言している。

 2007年に『おじいさん先生』(日本テレビ系)で俳優デビューしたころは、“瑛太の弟”として見られていた感もあったが、その後『藁の楯』や『クローズEXPLODE』などの映画作品から、民放ドラマ、NHKの朝ドラ(『おひさま』『べっぴんさん』)、大河ドラマ(現在放送中の『いだてん〜東京オリムピック噺〜』)まで幅広く出演し、今では先述のように瑛太の弟という印象を凌ぐポジションを確立している。

SNSでは“ヘタレ演技”が話題に、ダメっぷりを“称賛”に変える

 朴訥としたピュアさを持つ役や、どこか残念なヘタレ役が似合う永山だが、それも彼の“末っ子気質”が演技に説得力を持たせているからかもしれない。今回の『はじ恋』でも、深田恭子が演じるヒロインに20年間想いを寄せ続ける幼馴染役。いとこという立場からもなかなか一歩踏み込めず、相手を思いすぎるがゆえの“ヘタレ”を発揮する。そのどこか頼りなさげだが、思いの強さは痛いほどに伝わってくるという永山の演技に、SNSでは「失敗し続ける雅志が不憫」、「雅志いい男、結婚してって思わず呟いたもんな」と、逆に“ヘタレ”や“ダメっぷり”の部分に称賛が集まったのである。

 実際、ヘタレ役も度がすぎるとただの“ダメ男”になってしまうが、永山はヘタレ部分の裏に“デキる男”を感じさせるという絶妙な塩梅を見事に演じてみせる。そういう意味では、今一番ヘタレ役が似合う俳優であり、SNSでたびたび取り沙汰されている“不憫萌え(=どこか残念さを感じる人にキュンとする)”というキーワードにもピッタリ当てはまるのだ。

塩梅が難しい“不憫さ”を出す演技は、俳優としてのの力量次第

 永山のこうしたヘタレ役は何も『はじ恋』だけではない。ヒロインの夫・紀夫を演じた朝ドラ『べっぴんさん』でも、戦地から帰ると自分の娘が知らない男に懐いていて嫉妬したり、働く妻への接し方に困ったり、仕事で空回りするなど、見事な小物っぷりを披露。実際、SNSでも「紀夫嫌い」と言われるほどに反響が大きかったのだが、永山は単にヘタレを演じたのではなく、戦地を生き延びることで培った鋭さや、戦後の考え方についていけない苦悩を演じて物語に深みを与えることこそが真骨頂だったのである。

 また、テレビ朝日の人気ドラマ『ドクターX』の最新シリーズ(2017年放送第4期)でも、ゆとり世代の小生意気な若手外科医役を演じたが、クライマックスでヒロインの大門未知子(米倉涼子)から執刀医の座を奪うも、オペ中に大門に執刀を交代するというヘタレっぷりを発揮。しかし、ここでも外科医としてワンランク成長するという“芯の強さ”を観る者に感じさせたのである。

 そもそも永山絢斗にヘタレ役が似合うのも、永山にそれだけの演技の力量があるからだ。本当のヘタレやダメ人間であれば、視聴者には嫌悪感しか与えない。しかし、永山のヘタレ演技の向こうには、そうなってしまった現実の厳しさや、それに抗おうとする意志が垣間見え、ある種の“怖さ”や“深み”も漂う。そして、決して下品には見せない役者としての“品格”のようなものもあり、多くの視聴者が感情移入しやすいと同時に共感もしやすいのではないろうか。

 こうなると永山の“ヘタレ役”はもはや俳優としての“勲章”であり、映画やドラマ、舞台など、今後の永山絢斗のさらなる領域への挑戦を期待せずにはいられない。

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