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柳原可奈子、「幸せになってほしい」の声多数 女芸人で唯一無二の“清廉性”
「女ピン芸人」カテゴリー、柳原の一人芝居で拡大
「その先人として山田邦子さんなどがいましたが、柳原さんはそれをよりソリッドな芸に昇華した」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「柳原さんは女性や体型など属性への笑いではなく、その笑いの対象は女性の“自意識”。ある意味普遍的で、『総武線の女子高生』など細かすぎる設定のものまねにも関わらず、日本全国の人に“いそう、いるかも”と思わせる技術がずば抜けている。山田邦子さんも似たポジションの芸をされていましたが、メジャーとマスに寄り添った山田さんと比べ、柳原さんの笑いは、よりサブカル色が強いといった印象です」(同氏)
「女を演じつつもオンナを感じさせない」 キャラとは裏腹の清廉性
16年9月4日に放送された『ぼくらの時代』(フジテレビ・関西テレビ系)では「ネタがすべったとしても自分がかわいく映れば良い」と発言。「この“かわいい”というのが彼女を語る上でのキーワード」と前出の衣輪氏。「柳原さんは過去に『笑っていいとも!』(フジテレビ系)で、一般人の自身のそっくりさんが登場する前、『私、結構かわいいけど大丈夫?(笑)』とハッキリと口にしていた。もちろん冗談交じりなのだが、ガリットチュウ福島さんのダレノガレ明美さんのものまねのような、“その体型の人がそれを言うか/するか”といった堂々とした、言い切る/やり切る愛嬌と潔さが同性からも嫌悪されない彼女の最大の魅力」(同氏)
これらを支えているのが彼女の“清潔感”だ。まずこの結婚報告前に浮いた話がない、ゼロに近い。また女を使ったセックスアピールはせず、お色気を笑いにすることもない。下品な下ネタを発することなく、男性芸人がいる場では、男性芸人より前に出ることもない。そのくせ後方からスナイパーのように男性芸人のコメントの隙を撃ち抜き、一瞬で自分をその場の中心にする巧さも持ち合わせている。「芸人なら体を張れよ!」というアンチの声はあるものの、彼女の“自分かわいい”発言とは裏腹の奥ゆかしさや“清廉性”は女芸人の中でも稀有で、唯一無二の存在ともいえる。
あふれる温かさは自己研鑽の賜物 自分も周りも尊重した笑い
柳原の笑いは、先述したように「明るい笑い」が中心であり、女性を武器にしているというより、“女性であることを大切にしている”といった印象も。しかし、ただニコニコしている女性というわけでもなく、母親が19歳で他界していたり、慕っていた父親が急逝したりとほのかな闇も併せ持っている。16年には「激ヤセしたことでデブキャラとしての需要がなくなり仕事が減った」と悩んでいると報道されたり、先述の『チマタの噺』では、鶴瓶に「本当に自分がつまんなくてショックだった時期がある。子供の頃からお笑いが大好きで、稽古して一生懸命作ったのに出たらあまりいい空気ではなく、とことんつまんないと思えて、それが何回も続いた」と涙まじりで告白したことも。だがそれも宇垣美里アナや田中みな実アナのような明け透けな“闇キャラ”でなく、基本的に「明るい笑い」を貫いている点でも唯一無二だ。
昨今は横澤夏子を始めとして、柳原のように「明るく、女性であることを大切にした芸風」の女性芸人が続々と登場している。柳原は、女性を武器としたり、男以上に体を張らなければならなかった女性芸人の立場を、変えていった功労者の一人なのかもしれない。
(文/中野ナガ)