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加藤諒、強烈キャラを役に昇華 “バラエティ俳優”からの脱皮で唯一無二の存在感に

  • バラエティ番組での活躍を、役者としての強烈な個性へと昇華させた加藤諒 (C)ORICON NewS inc.

    バラエティ番組での活躍を、役者としての強烈な個性へと昇華させた加藤諒 (C)ORICON NewS inc.

 ドラマでもバラエティでも、テレビに出演するたびに強烈な印象を与える俳優・加藤諒。子役時代からインパクトある顔と「オネエ口調」で注目されたが、大人になってもその個性はマイルドになるどころか、ますます「変人」キャラとして強烈さに磨きがかっている印象だ。そして、バラエティへの出演を機にブレイクした一方で、役者としても出演作品が絶えず続いている。たとえ脇役であっても視聴者の目を釘付けにする唯一無二の存在感は、バラエティのみならず役者としての実力として評価されている。バラエティによる認知度上昇とキャラクターの浸透を一つの武器とし、見事に役へと昇華したと言えるのではないだろうか。

『あっぱれさんま大先生』で芸能界デビュー、人気子役として活躍

 加藤が、生瀬勝久、古田新太、山西惇、大倉孝二、中越典子、三倉茉奈、三倉佳奈などの個性派俳優が所属する芸能事務所・キューブで子役として芸能界デビューしたのは2000年、10歳のとき。明石家さんまが子どもたちとトークを繰り広げる『あっぱれさんま大先生』(フジテレビ系)のオーディションに合格し、出演していた。トレードマークの太い眉毛が明石家さんまから「マンガ顔」と言われ、子役としては珍しい「オネエキャラ」でも注目される。

 その後は『ガッコの先生』(TBS系/2001年)や、朝ドラ『こころ』(NHK総合/2003年)など、多数の番組で活躍してきた。とはいえ、事務所が学業優先だったこと、さらにインパクトが強すぎることがアダとなった面もあってか、大学時代など、仕事がないことに悩んだ時期もあったという。そんな折、人気漫画原作の『主に泣いてます』(フジテレビ系/2012年)で演じた「見た目は西郷隆盛、心は乙女の中学生」という強烈なキャラ・小桃宣親役では、見た目のソックリさや、感情表現の激しさなどの「再現度の高さ」が話題となる。

バラエティでの活躍、俳優業に還元する気概

 とはいえ、彼がブレイクするのはその先のこと。加藤諒のお茶の間知名度を一気に高めたきっかけは、なんといってもバラエティ進出だろう。2015年に出演した『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)では、深夜の自宅でホラー鑑賞をし、きゃりーぱみゅぱみゅのダンスを踊りまくる「ヤバい人」として注目され、そこから『アウト×デラックス』(フジテレビ系)に出演し、完全に「アウト」な人と認定される。「オネエ口調」「カツラ」「ダンス」など、欲張りなほど豊富な「キャラ」立ちと、子役時代に培ったバラエティ対応力は、大人になってからも存分に生かされ、活躍の場をますます広げていく。

 しかし、ユニークなキャラがバラエティで重宝されるのは、役者にとってはメリットばかりではない。インパクトある容姿やキャラクターのためか、芸人と間違えられることもあったし、かといって「お笑い」に自信があるわけでもない。加藤諒というキャラクターのブレイクには、役者として葛藤する部分もあっただろう。しかし、バラエティでのブレイクを「これから勝負できるというところまで来た」として、「役者の仕事は、今までオファーっていうよりオーディションを受けることが多くて、その仕事を次につなげないと、という思いがあります」(ORICON NEWS/2016年5月)と語っている。そのようにバラエティは「アドリブ力を鍛える場」のように考え、役者の糧にすべく活躍していく。

バラエティ俳優から実力派俳優へ、続く強烈キャラ役への需要

 バラエティで知名度を上げ、アドリブなどを含めた対応力を磨きつつも、独自のポジションを確立していったのは得意としていた「漫画実写化」の作品だ。バラエティでブレイクした2015年、舞台『NARUTO-ナルト-』で演じた秋道チョウジが好評となったほか、映画化も決まった舞台『パタリロ!』では、「人間には演じられない」とさえ言われる難役を怪演。原作者・魔夜峰央からは「彼しかできない」と絶賛されるなど、次々に漫画実写化で重要な役割を担うようになる。

 映像作品でも同じく、『僕たちがやりました』(フジテレビ系/2017年)では、いじめられっ子・ウンコ役として気弱さと狂気の瞬時の切り替えを見事に演じ、また、昨年12月にスペシャルも放送された『アシガール』(NHK/2017年)では、父親に抑圧された気弱な跡取り息子を愛嬌たっぷりに演じ、全編通しで出ていたような強い印象を与える。登場シーンはさほど多くないにも関わらず、最初の登場シーンである襖越しに見えた一瞬の姿だけで爆笑をさらう貫禄も感じさせた。他にも、映画『ギャングース』ではイケメン枠の高杉真宙、アーティスト枠の渡辺大知とともに、実力派トリプル主演の一角を堂々と務めあげている。ランドセルを背負った小学生時代も違和感なくこなし、全力の「顔芸」から漂う悲しみや孤独、怒りの表現にはただただ圧倒されるばかりだった。

 漫画や教科書に出てくる写真には似ている人がいろいろいるのに、「生きている人間」では誰にも似ていない加藤諒。その顔面の威力だけでなく、バラエティで培った対応力は、喜怒哀楽の激しい高低差を瞬時に切り替えられる瞬発力や、絶妙の「間」を生み出す。

 また、自身の浸透したキャラクターは、喜劇と相性が良く、悲劇やアクション、サスペンスなどでは、意外性から悲しさ、怖さがより引き立てられ、物語の起爆剤になる。9日放送開始の水曜ドラマ『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)の第一話にも、「炎上系YouTuber」としてゲスト出演するという加藤諒。ある意味、大物芸人がドラマなどで重用されるのにも似た面はあるかもしれない。

 わずかな登場シーンで全て持っていってしまう迫力・貫禄を持つベテランバイプレイヤーはいるし、矢本悠馬や太賀など、20代半ば〜後半の器用なバイプレイヤーもいる。だが、20代にしてすでに確立された唯一無二の強烈な個性と、笑いや怒り、悲しみなどの表現の瞬発力・爆発力は誰にも置き換えられない。一時はバラエティ俳優の印象が先行していたが、それらを吹き飛ばす爪痕を数々の映像作品で残している。これからも、ライバル不在な存在として独走していくのではないだろうか。
(文/田幸和歌子)

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