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コンプレックス? チャームポイント? 芸能人の“ホクロ”の存在意義とは
宮沢りえのホクロがないと話題に 過去にも除去した芸能人が多数
【比較写真】スッキリ? ホクロをとった宮沢りえ
こうした“ホクロ除去”で視聴者が違和感を覚えたタレントは以前よりいた。特に有名なのは千昌夫で、特徴的過ぎたおでこのホクロがなくなったことで、本人と認識できない視聴者が現れたほど。これにより、「運気が落ちた」とメディアで揶揄されることもあった。FUJIWARAの藤本敏史、道端アンジェリカなどは除去を公表しており、沢口靖子や木村文乃も。また、椎名林檎も特徴的なホクロだったことから、除去の際にはSNSなどで賛否両論の意見交換が行われていた。
「昨今は水沢アリーさんや『私の何がイケないの?』(TBS系)で話題になったヴァニラさんのように美容整形をカミングアウトしたり、ウリにすることも少なくなく、整形が身近な存在となっているために、ホクロ除去をすることも増えているのかもしれない」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「一般にも、メイク感覚でメザイク(二重にするテープ)やカラコンをするのは当たり前だし、メスを入れないヒアルロン酸系やメイクによるプチ整形で美しくなるという考え方は、“生まれたままでいい”という価値観と双璧をなすほど身近な存在になっています」(衣輪氏)
セクシーさにも一役 “付けボクロ”文化の誕生も
「そうした印象から生まれた、“つけボクロ”という文化もあります。文献に“つけボクロ”という言葉が初めて現れたのは16世紀後半といわれ、17世紀から大流行。当時のヨーロッパでは“肌を白く魅せるアイテム”としても使用されていたようで、1888年に出版されたオーギュスト・ラシネ著『服装史』にも白粉を塗り、つけボクロをするフランス女性の絵が掲載されています。日本でも数年前に流行し、メイク感覚でホクロを付ける若い女性が増えていました。今は“セクシー”や“運気向上”などやや意味は変容していますが、海外セレブはもちろん、数年前に日本でブームが起こったことは記憶に新しい」(衣輪氏)
レディー・ガガや1950年代のセックスシンボル、マリリン・モンローもつけボクロといわれるほか、現在放送中の『リーガルV』(テレビ朝日系)では、島崎遥香が魔性の女役で出演した際に口元にホクロが。Hey! Say! JUMPの山田涼介もそう。気合を入れるとき(ライブなど)に目元にホクロを書くことがあり、メンバーからいじられる一面もあるが、山田本人は“セクシーさの演出”としているようだ。
一方でコミカルな印象にも ホクロはものまねでも使われる“記号”としての役割も
また、ものまね四天王・コロッケも、ホクロをコミカルな小道具として使用している。例えば先述の千昌夫のものまねではホクロがないとしっくりこないほどの“記号”となっている。早変わりの技法としても機能しており、千昌夫のときはおでこ、ちあきなおみのときは鼻の横など、高速で付け替えることで笑いを取っている。
ホクロの場所も大きさも自分では選べない。だからこそ気に入らない場合はコンプレックスとなる一面もあるが、「コンプレックス的なものをパロディ・ネタ化することで“愛されポイント”とする方法もある。そのパイオニアがムロツヨシとそれを演出する福田雄一監督」と衣輪氏。
ムロの鼻の下には目立つホクロがあるが、それをふたりは『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)では、メレブを演じるムロ自身に「愛くるしいセクシーなホクロ」などといわせている。現在放送中の『今日から俺は!!』(日本テレビ系)でも、椋木先生演じるムロのホクロを「変な場所についた変なホクロ」などといじっており、恋愛ドラマ『大恋愛』(TBS系)でも、主人公の尚を元気づけるためにホクロを押すと変な声が出るなどの芸にも使用することで、チャームポイント化している。これはムロにしかできない芸当かもしれないが、もしムロにあのホクロがなかったら、ここまで売れていたかどうかちょっと怪しい(!?)ともいえるほどの“個性”なのだ。
“美しくなるためにいろいろ努力したい”という想い自体は、程度はあれど、美しいこと。コンプレックスや悩みは人それぞれなので、除去を責めるつもりは毛頭ないが、魅力やチャームポイントのひとつとして活躍してきたホクロ。それが存在意義を失っていくのはやはり寂しく、ホクロは個人のアイデンティティであってほしいと心から思う。
(文/中野ナガ)