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出川哲朗「お前は、バカか?」の変換力、 “ディスり”から“最大限の賛辞”に
汚れ役から一転、『イッテQ』での体を張ったリアクション芸が転機に
2004年に結婚すると、「出川がおとなしくなった」、「以前のおもしろさがない」などともささやかれたが、そんな風説をぶち壊したのが2007年放送開始の『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)だ。2010年2月7日放送の回では、「ペットボトルロケットで人は飛べるのか?inタイ」に挑戦。出川はペットボトルのロケットを背中に括りつけると、爆発直後に50cmほど浮上して頭から垂直落下。まさに出川哲朗がブレイクスルーした瞬間であり、今でも“神回”とされている。
さらに同番組では、「はじめてのおつかい」で放たれる「出川イングリッシュ」が爆笑を取ったり、最強の相棒ともいえるデヴィ夫人との絶妙な掛け合いが視聴者をほっこりとさせ、いつの間にか出川は“愛される出川”へと変貌を遂げるのである。
冠番組では“温かな人間性”を吐露、後輩たちがおいしくなるサポート役までこなす
今年7月の放送では、大御所・明石家さんまが「出川の頼みだから」とNGにしていたテレビ東京に34年ぶりに出演。視聴率は13.2%を記録し、大先輩からも国民からも愛される出川の象徴的な場面となった。実際、同番組の視聴率はコンスタントに10%を超えており、テレビ東京の社長をして「(出川さんには)心から感謝の気持ちでいっぱいです」と言わしめているほどだ。
また、出川哲朗のホームともいえる日本テレビの特番枠(今年7〜9月は金曜深夜のレギュラー枠で放送)で放送された『出川哲朗のアイ・アム・スタディー』は、タイトル通り「教養バラエティ番組」であり、「知ってるようで知らないトピックスや時事ネタを出川の視点で学ぶ」という内容なのだが、出演するゲストは“アンダー出川”と呼ばれる出川よりちょっと“おバカ”なタレント揃い。ここで出川の最近の必殺技ともいえる「この人たちおかしい…」のツッコミがさく裂するのだ。
ジャニーズ事務所の期待の新人グループKing&Princeの平野紫耀は、サッカー選手のイニエスタを指して「(イニエスタは)国ですか?」とのたまい(ちなみに同じゲストの滝沢カレン、尼神インター・渚もイニエスタを知らなかった)、「ZOZOTOWNの前澤友作社長が2023年に予定している旅行先は?」との質問には、「すっごく地下! B7(地下7階)くらいですかね?」と回答(正解は月)。視聴者もちょっと引く珍解答も、出川のコメントが入ることで笑いに昇華され、発言したタレントたちも救われているのである。
「お前は、バカか?」は、出川だからこそなせる“最大の賛辞”
ヘタすれば強烈に響く「お前はバカか!」は、親しい相手に冗談ぽく使うならわかるが、出川は距離の遠そうな俳優やアイドルにまで使う。しかし、なぜか出川が言うとキツくはならず、言われたほうもはにかんだ笑顔を見せ、むしろバラエティの洗礼を受けたかのような雰囲気に。共演者たちがうまく場の空気になじんでいけるという「みんなをおいしくさせる」役割すら担っているようなのだ。
俳優陣による芸人顔負けのリアクションが通例化、出川が“教育者”としての立ち位置に
ただ、それでもやはり俳優とバラエティの間には距離感があるのも事実。そこに出川の「お前はバカか!」が介在することで、俳優陣も委縮せずにバラエティになじむことができ、結果的に出川にリアクション芸のイロハを学んでいることにすらなっているのである。そうした意味では、出川の「お前は、バカか!」は、「お前はバラエティをわかってるじゃん」、「よくやれているよ」といった意味にも変換され、バラエティ対応力の“合格”を告げる“最大限の賛辞”にもなっていると言えるのではないだろうか。
今や「浜ちゃん(浜田雅功)に頭をはたかれる」、「有吉(弘行)にあだ名をつけられる」レベルの“バラエティの洗礼”となりつつある出川の「お前はバカか!」だが、出川になじられる芸能人にとっても、バラエティ界で認められた“勲章”になっている感がある。そして、その背後に隠された出川哲朗のやさしくあたたかい人柄こそが、今の“出川ブーム”の原動力にもなっているのだろう。