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【ガンプラ ビフォーアフター】武者ガンダムに“魂”を吹き込んだ匠の技術とは?「一目で分かるストーリー性と意外性のフュージョン」

 1980年代、ちびっ子から大人まで空前の“ムーブメント”を巻き起こした「ガンプラ」。その後、発売から38年間で累計4億5000万個以上を出荷。HG、MG、RG、PGといったカテゴリー分けで試行を繰り返しながら今なお進化を続けている。そこで今回、人気模型雑誌で模型作成やライターとして活動する“ジオラマの申し子”市川貴秀さんにインタビューを実施。「ガンプラ」進化の一翼を担ってきたモデラーの匠の技術について、その真髄を聞いた。

◆【ガンプラビフォーアフター】毎週更新・トップモデラーインタビュー特集→

より長く作品を見てもらうための仕掛け作り「実物を参考にした“汚し”や“塗装”がこだわり」

――ガンプラ歴を教えてください。
市川貴秀30歳くらいの時から本格的に始めました。それから模型誌が主催するガンプラのコンテストに参加したのがきっかけで、編集の方から声をかけて頂き模型誌のライターとして活動を続けてきました。かれこれガンプラ歴としては17年ほどになります。
――ガンプラを制作するうえで、市川さんがこだわっている箇所は?
市川貴秀造形や改造をやる時、もっと言うと塗装やウェザリング(汚し)もですが、実物を参考にして工作や塗装をする事が多いです。実物の塗装表現やウェザリングなどを上手く取り入れる事で、現実には実在しないガンダムをリアルな物として認識して見られるのではないかと考えています。

――今回紹介いただいた『武者ガンダム』も、ウェザリングや塗装によって実物かのような存在感を感じます。
市川貴秀武者ガンダムのヴィネット(小型のジオラマ)は、自分が頭の中で考えたイメージに一番近い作品に仕上げられました。制作期間は1ヵ月ほどで、ダメージの表現とガンダムが激戦の後にゆらりと歩く姿にこだわりました。

――市川さんは、1作にどれくらいの費用と期間をかけますか?
市川貴秀ジオラマであれば3〜4ヵ月、単品であれば2週間〜1ヵ月。費用は作品によってまちまちです。3000円も掛からない物もあれば何万円と掛かる物もあります。

――ジオラマの話が出ましたが、情景描写でのこだわりを教えてください。
市川貴秀ぱっと見てわかるストーリーにする。それに加え意外性を持たせるようにする事も心がけています。そうする事で見てくれる人に親近感が沸き、意外性でさらに近づいて見てくれるようになります。より長く作品を見てもらえるための仕掛けを作る事を意識して制作しています。 

合作は自身のイメージを超えた作品に仕上がる「互いのイメージの共有で勝負は決まる」

――情景描写で得意な技術を教えてください。
市川貴秀建物や橋など大きめのストラクチャー(建造物)だったり、室外機や電話機などの小さい小物をプラ板、スチレンボード、木や石膏などいろんな材料で作るのが得意です。
――ここは他の人に負けない、と思う“匠の技”はなんですか?
市川貴秀大きめのストラクチャーを作るのが得意です。今回の作品でいうと、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』(小学館)のジオラマのコンテナ船や1/35ファンファンなどです。

ーーサンダーボルト、61式戦車「M61A5」のジオラマは、モデラー・あにさんとの合作だそうですね。あにさんと合作を始めたきっかけを教えて下さい。
市川貴秀ジオラマのコンテスト(浜松ジオラマグランプリ)に出場するために1人では期間的に製作が間に合わず、2人で合作しようという事になったのがきっかけです。

――合作の難しさは?
市川貴秀お互いの作品イメージの共有です。これがちゃんとしていないと、お互いが対等ではなくなるため制作を続けるのが難しくなると思います。なので、あにさんと合作する時は作品の“イメージ作り”をお互いに一致するまでやります。そこが一致しない限り、一切作業はしないようにしています。

――合作の達成感は普通の作品とは違いますか?
市川貴秀先ほど言った作品イメージの共有が出来ていれば、自分のイメージした100パーセント以上の物が出来る事があることですね。

――モデラーにとって一番必要な技術とは何でしょうか。
市川貴秀その質問は難しいですね…。自分は技術に“一番はない”と思っていて、技術は何個でも持っておいた方がいいと思います。ただ、やみ雲に技術をたくさん持っていればいいというものでもなくて、大事なのは自分の持つ技術がどれほどのもので、どんな時に使えて、どんな応用が利くのか理解する事。自分の技術を目的に合わせた選択をする事が出来ていたなら、例え少ない技術でもいい作品は出来る、そう考えています。

――次はどんな作品にチャレンジしたいですか?
市川貴秀合作もこの先続けていきたいですし、個人作としての本格的なジオラマもやりたいです。
 
――最後に、市川さんにとって「ガンプラ」とは?
市川貴秀自分らしさをだす表現の一部だと思っています。
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