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tofubeatsが音楽業界以外のオファーにも応える理由「音楽一本で食べていくのは難しい時代」

 1990年生まれ神戸在住の音楽プロデューサー、tofubeatsのマルチタスキングぶりに驚かされる。先日発売されたアルバム『RUN』でのソロアーティストとしての活動のほか、『電影少女』『寝ても覚めても』といった映画やドラマ、他アーティストへの楽曲提供にリミックス制作、またSONY、CONVERSEといった企業のTVCMやWebCMの音楽制作なども多数行う。それだけではない。動画メディア『McGuffin』ではMCを務め、自ら様々なアーティストの自宅へ訪問してロケを行うほか、『WIRED』『CINRA』にコラムを寄稿することもある。人気アーティストの裏付けにもなる、音楽業界以外の引き合いにも応える理由を聞いた。

音楽でずっと食べていけるとは思っていない

――もともと大学在籍中、Web制作会社から内定をもらっていたんですよね。
tofubeatsそうですね。いろいろやるプロダクションみたいなところで、「音楽も作れるのならそれも仕事に活かせるよ」という会社でした。なので「ちょっと音楽作れます」っていうアプローチをして内定をもらって。結局体調を崩して就職を取りやめちゃうんですけど。

――それを知っていたので、メジャーデビューした際に「就職活動の甲斐あって、ワーナーミュージックジャパン/unBORDEさまから無事、内定をいただくことができました」とコメントしていたのも、冗談っぽく感じませんでした。
tofubeatsクラブミュージック界では特に多いんですが、基本的には仕事しながら音楽活動しているのが当たり前で、専業の方は一握りなんです。だからもともと就職することに対して何にも抵抗は無くて。というか、普通に就職したくて大学も経済学部に入学しましたし。楽器メーカーとか、音楽活動ができて残業が少ない会社にエントリーシートを送っていました。

――では今の「音楽一本で食べていける状況」は想定していたものと違いますね。
tofubeats全然違いますね。メジャーデビューして6年目になりますが、こんなに続くとは思いませんでした。1年か2年でメジャー契約は辞めるつもりでいましたし。でももう少しで30歳を迎えるので、やり直しがきかないところまで来ましたね(笑)。

――ずっと音楽で食べていこうとは思っていなかったんですか?
tofubeats“かまし”とかじゃなくて、本当に無理だと思ってるんですよね。たとえば一回リミックスをして数万円だとしても、そんな仕事は月に何回も来ないし、税金とか色々払ったらアルバイトよりも安くなる。以前音楽活動で溜まったお金で下宿とかしていましたけど、その時から「これを長くやっていくのは難しいかな」と感じていて。

気持ちよく音楽活動をするためには安定した収入が不可欠

――先ほど言っていた「仕事しながら音楽活動するのが当たり前」という環境にいたことが大きいのでしょうか。
tofubeats東京でしか音楽で生計を立てていく人を見たことないから想像できないんですよね。たとえば、ライター一本で暮らしている人も周りにいないし、同級生でタレントやモデルをやっている人も、それだけで生計を立てていない。というかみんな「考える選択肢に入っていない」と言う方が正しい。

――2016年に個人事務所を作ったのもなにか関係があるんですか?作るにあたって大学で受けていた「会社法」の本を読んで勉強したとか。
tofubeatsもともと事務所にいたときに「違うな」って思う部分もあったので。マルチタスキングの話もそうだけど、なんで就職したかったかというと、「気持ちよく音楽活動をするためには安定した生活があった方が良いから」でしかないんです。会社を作ったのも、著作権を自分の会社で管理した方がいいという自然な流れであって、いまの日本の法律の中で気分よく音楽をやるための手段の一つです。

――でも今後も仕事が増えていったら、制約が生まれて自分の好きなように活動できない可能性もありそうですが。
tofubeatsそこはうまい具合にバランスとっていきたいです。何でもかんでも思い通りにいくわけはないので、優先順位をどうつけるか。

――現在でもバランスの良さは感じます。いろいろ手がけているのに、自分のスピードでやれているように映っていて、すごく忙しそうには見えません。
tofubeatsそう見えてるのならこちらのイメージ戦略通りです(笑)。

好きな音楽を守るために前に出ていく

――では「売れたら生活スタイルを変える」なんてこともなさそうですね。
tofubeatsメジャーデビューして、映画の楽曲もやらせてもらって、周囲から「評判良いね」なんて言われるけど、僕は10年前からやっていることが変わってない。今の評価は全部これまでの積み重ねの結果です。だから今後も自分が増長することなんてまずないし、出来上がったものに対して100点満点なんてつけられない。やっぱり自分で作ったものを自分で客観的に見なくちゃいけない仕事なので、自分が浮ついちゃったらどうしようもないんですよね。

――tofubeatsさんが考える「キャリア到達点」ってどこなんでしょうか。
tofubeats目先の話ですけど、「良い曲をどんどん作りたい」っていう、ただそれだけですね。結果として世間に評価されたら嬉しいですけど、最終目標が賞を取りたいとかではない。以前小室(哲哉)さんとお話した時「自家用ジャンボ機乗りたい」とか「色んな人をプロデュースしたい」というより、「ただ良い曲を作りたい」というミュージシャンとしての欲求を感じました。音楽作っている人で“モノ目当て”な人は長く続かないと思う。

――では自分が表に出ること自体、本来の趣旨とはずれているわけですね。
tofubeats本心はそうですね。でも、自分が前に出て行かないと作った音楽が世間と接触できない。そこは昔からの悩みのタネ。「なぜ音楽を宣伝するために自分が出て行かなくちゃならないんだ」と言うのは昔から思っていて、世間では文字だけの宣伝ツイートより顔写真が載っているインスタの方が反響良い。それありきで聴いてくれる人がいるなら、どんどん動いていくかと。これでめっちゃ男前に生まれていたら、もっと顔を使っていくとは思うけど(笑)。

――ここまで多岐に渡って仕事をしているトラックメイカーはtofubeatsさん以外浮かばないです。
tofubeatsでもそうしないと自分が損するんですよね。「クラブで遊ぶ人やクラブミュージックが好きな人が増えたら良いな」と思ってはいても、クラブDJやってるだけではリスナーも増えないですし。だから“自分が本来いるポジションではない所”にも出向いて行って、存在を覚えてもらうようにしています。メジャーレーベルにいること自体そうだったりしますし。ある程度、結果を出して聴いてもらわないと、自分がずっと好きだった打ち込みの音楽が減っちゃう。僕が色々やっている意味はそこにあるんです。

(取材・文/東田俊介、写真/山口真由子)

Information

tofubeats
『RUN』(CD)
2018年10月3日(水)発売
価格:3,024円(税込)
WPCL-12943

1. RUN
2. skit
3.ふめつのこころ
4. MOONLIGHT
5. YOU MAKE ME ACID
6. RETURN TO SENDER
7. BULLET TRN
8. NEWTOWN
9. SOMETIMES
10. DEAD WAX
11. RIVER
12. ふめつのこころ SLOWDOWN

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