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(更新: ORICON NEWS

みんな大好き『警察24時』、各局が手掛ける“鉄板コンテンツ”を維持する理由と課題

柳沢慎吾が「ひとり警視庁24時!」をCDドラマ化した『実録!? 緊急特番 柳沢警察密着24時!!』

柳沢慎吾が「ひとり警視庁24時!」をCDドラマ化した『実録!? 緊急特番 柳沢警察密着24時!!』

 秋の改変期となり、通例どおり各局が新コンテンツを模索する中、いわゆる『警察24時』系の番組が放送され話題となっている。普段決して見ることができない、警察官と犯罪者の“生々しい”攻防。そして、市民と警察官の間で起こる予期せぬ“アクシデント”による笑い。ほぼ定型フォーマットながら、ついつい見てしまう人も多いだろう。昨日27日も『列島警察捜査網THE追跡 2018秋の事件簿』(テレビ朝日系)が放送され、女性の下着を盗む犯人、怪力スクリュー男、自転車ぶん投げ男などに密着。SNSでは「ほんとこの番組は毎回パワーワード量産しまくってんな」「編集した人絶対ストリートファイター好きやん」といった反響で賑わいを見せた。なぜ『警察24時』系の番組は経年劣化せず視聴者に愛されているのか? “鉄板コンテンツ”を維持する理由と課題について考えたい。

各局がこぞって手掛ける“鉄板”番組 新たな息吹をもたらす「新演出」も登場

 タイトルや放送タイミングは異なるが、警察官に密着する『警察24時』系の番組は各局で放送されている。日本テレビは『全国警察追跡24時』、テレビ朝日は『列島警察捜査網 THE追跡』、TBSは『最前線!密着警察24時』、テレビ東京は『激録・世界の警察密着24時』、フジテレビは『逮捕の瞬間!密着24時』のタイトルで放送。内容は、交番勤務の密着、覚醒剤摘発、自動車警ら隊、万引きGメンなど各局に強みがあり、名物企画が放送される際は、毎回SNSがザワつくのが通例だ。

 実際、8月25日に放送された『列島警察捜査網 THE追跡』では、置き引きを行った教師の犯行の模様をCGで再現した“置き引き先生”の映像が放送され、「置き引き先生の再現CGがくっそ面白いんだけど」「再現CG次も楽しみ」といった風にネット上で大きな話題となった。さらに、置き引き先生のジャンプからの着地を映画『マトリックス』のような表現で再現した一般ユーザーが登場すると、別ユーザーがBGMやキャラを変えた動画をYouTubeに公開。現代ならではの盛り上がりを見せた。

 また、8月26日放送の『逮捕の瞬間!警察24時』では、番組史上最長10カ月にわたる湾岸署の執念の捜査に密着。都会の住宅街に潜む「覚醒剤密売人夫婦」が逮捕されるまでを放送した。ここにきて各局が新企画や新演出を打ち出し、人気番組にあらたな息吹をもたらしている。

普段は見られない非日常に釘付け “生々しい”緊迫感と笑いのセッション

 『警察24時』系の楽しみどころは多い。見る人によってツボが違うのも特長だ。犯人のモザイク演出や酔っ払いの珍騒動、過激な暴走族など、タレントやお笑い芸人のネタにされることも多く、鉄板演出で視聴者の笑いを誘っている。俳優の柳沢慎吾は「ひとり警視庁24時!」のモノマネを得意とし、『実録!? 緊急特番 柳沢警察密着24時!!』のDVDを発売するほど。このネタが鉄板なのも、『警察24時』系が老若男女に浸透しているからこそと言える。

 何より、普段密接に関わっている生活圏の中に“事件”が起きているというハラハラ感と“生々しさ”が人気の秘訣。連続通り魔事件、悪質チカン逮捕の瞬間、スリの巧妙な手口、怒号飛び交う逮捕劇など、一癖も二癖もある犯人と対峙する警察官とのやり取りはいつ見ても新鮮で刺激的だ。

制作作費を抑えたい局側と広報に役立てたい警察、双方がウィンウィンな関係

 安定した人気の『警察24時』系番組だが、TV局側としてはバラエティやドラマなどに比べて制作費が格段に安く済む。制作会社のスタッフが現場に張り付き密着取材を行う手間と費用はあるが、取材対象は公僕である警察のため、出演費などは無料のはず。警察サイドは、日々の警察の奮闘ぶりを世間に広報できる点は大きく、双方にとってWIN-WINな関係ができているのだ。

 また、麻薬密売人に熱い説教をする熱血先生風の警官、酔っ払いを優しくなだめる東京下町の人情派警官、渋谷を守る美人警官、美人白バイ隊員のバイク練習から取り締まりに成功するまでのドキュメンタリーなど、警察官一人ひとりに“人間味”を付与させることで、警察官のイメージ向上に役立っている点も大きい。

一方でメディアと警察の関係性が癒着や忖度に繋がるとの指摘も

 一方で、メディアと警察が近しいことで「癒着や忖度に繋がる可能性がある」と指摘する識者もいる。13年、鹿児島市で会社員男性が警察官に取り押さえられ死亡する事件があり、業務上過失致死罪で2人の警察官が有罪判決を受けた。だが、その事件は警察に密着取材するTV番組の撮影中に起き、一部始終が撮影されていたという。だが、この映像を県警が押収。その映像は放送されないばかりか、押収に対するTV局側の抗議もなかった。同件について、上智大学教授で元日本テレビ『NNNドキュメント』ディレクターの水島宏明氏がメディアで厳しく糾弾したこともあった。

 昨今は、コンプライアンスが厳しくなったことにより、警察官による現場の対応が厳しくチェックされる風潮もある。したがって、犯人検挙のシーンであっても、そこに過剰な暴力、暴言などがあると見られれば、批判の対象になる可能性は高まっていくだろう。

 “生々しい”現場感がウリだった『警察24時』系番組も、社会全体のチェックにより、これまでのような個性派警官の登場は少なくなる可能性も考えられる。それゆえ、最新CGを用いた事件の再現など、現代ならではの新たなチャレンジも行われているのだろう。ネット犯罪なども巧妙化していく昨今。今後、どんな切り口の新企画や“名物警官”が誕生するか見守りたい。

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