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ORICON NEWS
SNSで話題、“子どもが主役”の『子ども科学電話相談』なぜ大人に刺さる?
毎日が“神回”! 演出ナシは「子どもたちの“空気を読まない感じ”を壊したくない」
「できる限り多くの質問を受けられるようにしていますが、放送があった今日も取れない電話が1500件近くありました。きっとその中にも素敵な質問がたくさんあったと思うのですが…ご縁あってつながった方の中から、内容や年齢に偏りがないようバランスを考えて選ばせていただいています」(大野氏)
番組では、子どもたちが本当に聞きたいことは何かを探りながら質問を選ぶと同時に、心掛けていることがある。
「放送開始当初から、“子どもたちの質問の電話をつなげて、先生方に答えていただく”というシンプルな形式は変えていません。先生とのやり取りや、子どもたちの空気を読まない感じが持つおもしろさを損なわないように、過剰な演出はしないよう心掛けています」(大野氏)
そんな約4時間の生放送では、子どもならではの視点から生まれた素朴な質問が続出。「クワガタとカブトムシは結婚できるの?」、「恐竜の肉はおいしいの?」、「宇宙人は悪い人なの?」、「世界は朝から始まったの?」など、純粋な質問に専門家がそれぞれの観点からわかりやすく答えていく。放送では毎回名言が飛び出し、大野氏も「聞いていただければ、必ず自分にヒットする質問があると思います」と太鼓判を押す。
秀逸な会話は、先生たちの「子どもの純粋な知的好奇心を育てたい」という願いから
「子どもたちとの会話がおもしろいのと同時に、好奇心に対して、現代の一流の先生方が科学的な見地を踏まえてわかりやすく噛み砕きながら教えるのも魅力だと思います。大人も子どもの質問に笑いながら、先生の答えにうなずく。2つの意味でおもしろいのではないかと思っています」
各分野の専門家が研究対象への愛を持って子どもに回答するのも魅力のひとつ。
「どの先生も、ご自分の研究を愛している様子がにじみ出ています。専門分野を広く知ってほしい、子どもの純粋な知的好奇心を育てたいという思いでやっていただいているのを感じています」(柴氏)
連日、SNSでトレンド入りも「“子どもたちが主役の番組”は変えない」
今年7月の放送中は、連日「#夏休み子ども科学電話相談」がTwitterでトレンド入り。子どもたちと先生のやり取りや、名言・名解説などが話題になり、朝8:05〜11:50の約4時間の放送中、リアルタイムで大きな盛り上がりを見せた。また、Twitterで見かけた質問を聴き逃し配信で聴くユーザーも急増。この現状について大野氏は、
「その日話題になった言葉を探して聴き逃し配信を聴いていただくことも増えて、再生回数は1万回を超えました。ラジオを聴いていただける方が増えて、みなさんの話題になることはとてもありがたいし、嬉しく思っています」と語る。
「30年以上愛されてきた理由を、未来に繋げていくのが私たちの願いです。未来の子どもたちが聞くときも変わっていないよう、現状に浮足立つことなく変わらない番組作りをしていきたいですね。ただし、この番組を好きでいてくれる大人の方たちにもお応えできるように『大人のための科学電話相談』を特別番組で制作してみようかとスタッフで話し合っています。参加条件はただ一つ。大人になってからの疑問ではなく、子どもの頃からずっと抱え続けてきた質問をしてもらうことです(笑)」(大野氏)
幼少期を回顧、時代を超えても変わらぬ“純粋さ”が大人に刺さる
番組誕生から約35年が経ち、気軽に検索できるネットが普及。子どもたちを取り巻く環境も大きく変わってきた。しかし、子どもたちから寄せられる質問に、それほど変化はない。
「大人は、今の子どもたちと自分が子どもだった頃を照らし合わせて聞いているのではないでしょうか」(大野氏)
放送からは、いつの時代も変わらない純粋でまっすぐな子どもたちの思いが伝わってくる。きっと誰しもその思いを持った記憶があるはずだ。だからこそ今、この“子どもが主役”の番組が大人たちから注目され、「自分にもこんな頃があったな」と回顧し、癒されているのだろう。また、子どもたちの素朴な疑問に、愛を持って誠心誠意答える専門家を見て、「子どもの頃、こんな大人と話してみたかった」という思いもあるのではないだろうか。
「“AI”など30年前は考えられなかった分野も、現在は番組に取り入れています。未来には僕たちが想像しないようなテーマに、子どもたちが好奇心を持つこともあると思うので、時代に合わせて変わっていくかもしれませんね。ただ、“子どものための番組”という原点は、忘れずに持ち続けます」
テーマは変わっても、“子どもが主役”という番組の根本は変えない。子どもの純粋な思いと、大人たちの愛が織り成す夏の風物詩は、これから先の未来も途切れることなく続いていくに違いない。
(取材・文/辻内史佳)