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好調の『バイキング』、坂上忍が批判覚悟で「ギリギリ」を攻める理由
年間平均視聴率3年連続アップ、「ニュース番組で言えないことを意識」
さらに、関東をネットするフジテレビのほか、関西、名古屋、福岡、札幌、仙台、静岡、広島の全8地区で、年間平均視聴率が2016年から3年連続でアップ。この好調に、MCを務める坂上忍は「ありがたいとしか思えない」と語り、『バイキング』の変遷、MCとしての覚悟を明かした。
「『バイキング』は、バラエティだから踏み込めること、つまりニュース番組では言えないことを意識してやってきました。例えば2016年、清原(和博)元選手が逮捕された際に、僕は“刺青して、覚醒剤やって、家族に帰ってきてほしいと願い、高校野球の監督もやりたい、なんでも欲しがる人”と7分ほど1人で語ったことがあります。もし局アナだったら、その局としての意見になってしまうから、ここまでは語れない。でも、個人事業主のような存在の僕らだからこそ言えることがある。僕や出演者、それぞれの立場から生まれる言葉を大切にしたいと思ったんです」
低迷するも「何もやらないで終わるのは嫌」、坂上の提案により大きく方向転換
「月曜MCの頃から僕は、『何もやらないで終わるのだけは嫌なんだ』と言い続けてきた。時事ネタを扱うというのは180度の方針転換だったので、戸惑う出演者もいました。でもその空気も、先述の清原選手の回ぐらいから変わってきた。皆さんも、腹をくくってくれたんじゃないかと思います」
腹をくくったのは、共演者だけではない。スタッフとのコミュニケーションを大切にする坂上は、月に一度はともに飲みに行き、どうすれば番組が面白くなるか、じっくり話し合った。こうして、現在に近い形で再スタートを切った『バイキング』では、「うるさくて細かい僕の話を聞いてくれるスタッフのおかげ」もあり、2016年7月には都知事選候補だった小池百合子、増田寛也、鳥越俊太郎の3候補が生出演。この3候補が揃って生出演したのは『バイキング』のみであり、そのブッキング力に業界からも驚きの声が上がった。最近では「紀州のドン・ファン不審死」で、その妻に坂上が独占インタビューを行い、話題になった。
「お声がけするのはタダ(笑)、しっかり話を聞きたいという熱意だけです。小林旭さんや和田アキ子さんら大御所の方にも出演していただけたのは、そうした熱意の積み重ねがあるからでは」
批判あっても言い切る、「生で自分の考えを言うことがどれだけ怖いことか」
「テレビに出ただけで賛否の対象になってしまう昨今。僕も弱い人間なので、インターネットは極力見ないようにしています。見たらブレるかもしれないし、調子に乗る材料にもなる。だから僕は、テレビや紙媒体から扱う情報だけを頭に入れて、あとは視聴者の方の受け止め方だけを考えます。俯瞰する目線は持つべきですが、基本は言い切った者勝ち。俯瞰ばかりだと甘いコメントになるので、『あれ、言っちゃった!』ぐらいの方がいい」
共演者とはある意味で“勝負”、「馴れ合いが見えることにプラスはない」
「野々村真さんのように、振られて泡を食う人がいたらそれでいい(笑)。人間性が出るのが生放送のいいところだと思うんです。また専門家の方でも、中途半端な回答をしたら僕は追い込みますよ(笑)。視聴者に、出演者同士の馴れ合いが見えることに僕はプラスを感じないんです。みんな仲はいい。でも、どこか勝負でもあるんです」
とはいえ、連日の生放送。時には間違うこともあるそうだ。
「しゃべり出してから、『この発言、間違ってないか?』と思うこともあるけど、そこで日和っちゃいけない。むしろ、逆にエンジンがかかりますね(笑)。僕の意見が少数派でも、見てくださる方の中には共感する人がいるかもしれない。中途半端な物言いが一番共感できない。だから言い切った方が良いのです」
各局で活躍する坂上はフジテレビをどう見る? ネット時代への持論も
「良くも悪くも一番話しやすい局(笑)。やりやすいですが、逆に意見が通り過ぎるので、自分に責任が負えないところまで踏み込まないよう気をつけていて。『シンソウ坂上』(同局)でも、月イチの全体会議で言いたいことを言っています。まだ結果が出ていないこと、試すことはあるけど、同じ意志のもとでやれるのは気持ちがいい。番組作りとは、“ハマるところを探していく”ことでもあります。だから、過去にすがらず、フジテレビ特有の演者と近い距離での向き合い方で、ノリや時代とのマッチではなく、戦略を練って“ハマる場所”を見つけにいくのが正解ではないかと僕は思います」
インターネット全盛の現在、テレビを舞台に勝負する坂上ならではの持論も語った。
「今時、フジだTBSだと言ってるのはどうかと思うんです。これだけネット全盛なのであれば、局がどうこう言ってる場合じゃないし、僕はどの番組でも、“テレビって面白い”と思ってもらいたいと考えてやっている。『バイキング』もやっと裏番組とも肩を並べられそうなところに来ました。1人でも多くの方に見ていただきたいので、そのためにも自分が思ったことを言い続けたい。コンプライアンス的にも厳しいこの時代、ギリギリのところで、生感、ライブ感を出していけたら。今後も事故らない程度にやっていこうと思います」
(文:衣輪晋一/メディア研究家)