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YOSHIKIも開催、もはや高齢層向けではない「ディナーショー」の多様化

 X JAPAN・YOSHIKIの“ディナーショー”が好調だ。開催5周年を迎えた今年は、ディナーショー公演に予約が殺到したため、朝に開催する「ブレックファーストショー」3公演を急きょ追加したほど。だが、そもそもYOSHIKI自体、“THEロックスター”的なイメージが強く、ディナーショーと言えば“大御所ベテラン歌手”、参加者も“年配の富裕層”という一般的なイメージとは真逆である。最近のディナーショーは、ひと昔前と比べると多様化しており、タレント色の強いプレミアムな“ライブイベント”と化している傾向にある。

ロックスターYOSHIKIのディナーショーが絶好調、ディナーショーが再評価

 YOSHIKIのディナーショーは、正式名称が「EVENING WITH YOSHIKI 2018 IN TOKYO JAPAN 4DAYS 5TH YEAR ANNIVERSARY SPECIAL」。今年は5周年記念として、当初は7月13日〜16日の4日間、グランドハイアット東京で開催する予定だった。ところが発売開始直後にソールドアウトしたことから、急きょ14日〜16日の午前中に「ブレックファーストショー」を3公演追加し、全7公演となったのである。

 チケット料金は、「5万円を超えるのは超大物クラス」とされるディナーショー界の常識をはるかに凌駕する「8万6400円(税込)」。だがその内容は、料理はすべてYOSHIKIプロデュース、キティちゃんとコラボしたYOSHIKITYが登場し、YOSHIKIMONOのファッションショーも行なわれ、極めつけはYOSHIKI自作のワインがお土産につくなど、まさにYOSHIKIずくめ。

 ショーの内容はピアノ演奏だけではなく、ドラムソロも披露。ラストのカーテンコールでは超至近近距離でファンたちが囲む…となれば、ファンにとってはこの値段でも“お買い得”なのかもしれない。ちなみにこのディナーショーには、元メジャーリーグのスター選手であるバリー・ボンズや、元FCバルセロナでスペイン代表サッカー選手、ジェラール・ピケもゲストとして来場し、セレブ感満載のショーだったようだ。

高額のディナーショー、今も昔も、そのお値段はタレントの“格”で千差万別

 日本におけるディナーショーの草分けは、五木ひろしと言われている。以降、美川憲一や石川さゆりなどの演歌歌手に続き、加山雄三、さだまさし、鈴木雅之といった大御所シンガーもディナーショーを開催、郷ひろみのほか松田聖子、工藤静香などの“80年代アイドル組”も進出すると完全に定番化した。とは言え、ディナーショーは基本的に“格”のあるタレントでなければできないものであり、逆に言えば、ディナーショーが開けるということは、一流芸能人に仲間入りしたという“基準”でもあったのだ。

 そして、その“格”もディナーショーのチケット料金に反映され、五木ひろしや松田聖子などのトップクラスは4〜5万円レベルで“高値安定”、2016年に7年ぶりにディナーショーを開催した中森明菜もプラチナチケットとなり、最高5万円のチケットは即完売した。年末ともなると、その年のもっとも高額なディナーショーがメディアで話題に上がることが今や年末の“風物詩”ともなっているのである。

 しかし、若い世代にとっては、ディナーショーはあくまで年配が参加するものというイメージがあり、実際、チケット代も若者が気軽に参加できる額ではない。YOSHIKIの8万6400円にしても現時点では今年の最高額であり、仮に1公演300席とすると、7月の7公演で1億7000万を売り上げたことになる。それでいてハコ(会場)は小規模、コストがかる大がかりなステージセットも物理的に設置できず(ホテルの宴会場ではスペース的に限界がある)、あくまでもタレントと客の“距離が近い”ことを最大のウリにするという、制作側やタレントにとってディナーショーとは、大切な“稼げるコンテンツ”でもあるのだ。

タレントの本気が見られる“プレミアムライブ”化

 しかも参加者側にとっても、ライブやコンサート大会場の最前席のSSアリーナ席ですらステージまではかなりの距離があり、見上げるような形で観覧しなければならないところを、ディナーショーはアーティストと“同じ目線”かつ“至近距離”で観ることができる絶好のチャンス。それも高級ホテルの食事を楽しみながら、ゆったりとした空間で楽しむことができるのだから、ファンにとってはたまらない魅力があるわけだ。

 一方、タレント側もライブやコンサートとは異なり、やりたいことをやれる小回りのきく場でもあるため、普段よりいっそう“タレント色”の強いステージを披露することができる。それだけに、人気ものまねタレントのコロッケが「25年間、ディナーショーをやっているけれど、いまだにプレッシャーを感じる」と告白しているように、タレントにしてみれば客との距離が近いぶん、いつもとは違う意味で“全力”のパフォーマンスが求められる。ディナーショーを“プレミアムライブ”と言えば納得の金額、クオリティーと言えるだろう。

 近年、CDが売れないといわれる音楽業界においては、ディナーショーは野外やホールに次ぐ“第三のライブイベント”として、本格的に見直されつつある。ディナーショー限定と銘打てば、多少高額でもグッズが売れるだろうし、CD販売の収益も見込まれる。会場を提供するホテル側にしても、空いている会場は埋められるし、宿泊につながる宣伝効果も期待できる。ディナーショーは、ファン側、タレント側、会場側が三者三様に“おいしい”コンテンツなのである。

“若返り”の兆候も…ディナーショー多様化による更なる可能性

 さらに言えば、このディナーショーは音楽業界のみならず、芸人やタレント、モデル、文化人までをも巻き込み、年齢・ジャンルを超えたエンタメ界の救世主的なイベントに化ける可能性すらあるかもしれない。たとえば、現役アイドルのHKT48・指原莉乃は、2016年に“さしこ”の愛称にちなんで3万4500円のディナーショーを開催した。また、ラグビーW杯で盛り上がった2015年には、五郎丸歩選手がホテル椿山荘で「五郎丸選手のスクラムトークの夕べ」(1万6000円)を開催し、ドアラ(中日ドラゴンズ)とつば九郎(東京ヤクルトスワローズ)もディナーショーを開くなど、スポーツ分野においてもディナーショーの“実績”が作られている。冒頭で紹介した通り、ロックスター・YOSHIKIの参戦からもわかるように、長らくディナーショーは“演歌歌手と歌謡曲歌手のもの”とされていたイメージを覆しつつある。

 もちろん音楽の分野でも、2012年に松任谷由実、2013年に矢沢永吉と大物アーティスト勢も新たに参戦。また、及川光博やL’Arc〜en〜CielのTETSUYA、つるの剛士、中川翔子、平原綾香等々、ディナーショーの出演者がしだいに若返っていることもあり、ひと昔前までの“渋い”ディナーショーはどんどん“スタイリッシュ”になっているのだ。

 このままいけば、K-POPアーティストやアイドルのみならずモデル、さらには若者向けのYouTuberまでが参加する可能性も十分考えられる。また、ライブよりは豪華だが価格を抑えた“ぷちディナーショー”や“カジュアルディナーショー”が登場し、十代の女性が列をなす…なんて光景も見られるかもしれない。そろそろディナーショーの最盛期である年末に向けた情報が出てくるころ。今後のディナーショーの展開と多様化に注目していきたい。

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