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進化をする“ものまね芸” あえて”似せない“ことで生まれる新たな笑い

  • 白塗りものまねでブレイク中の野生爆弾・くっきー

    白塗りものまねでブレイク中の野生爆弾・くっきー

 1980年代後半から何度かのブームを経ながら、テレビのゴールデンタイムを彩り続けているコンテンツが「ものまね」だ。最近では野生爆弾・くっきーの白塗りのように“あえて似せすぎない”ものまねまで登場するなど、そのスタイルは多種多様化している。そんなものまねのトレンドを振り返りながら、改めてものまね芸の強度と汎用性を探ってみよう。

対象を知らなくてもつい笑ってしまう“デフォルメものまね”が主流の80~90年代

 “ものまね”の認知度を高めたのは、1980年代後半〜1990年代前半にかけて活躍した“ものまね四天王”(清水アキラコロッケ、ビジーフォー、栗田貫一)であることは間違いないだろう。『ものまね王座決定戦』(フジテレビ系)という人気の“ネタ見せ特番”もあり、四天王を中心に“歌唱モノマネ”で競い合うのが主流だった。

 基本的には、ビジーフォーのようにとことんネタもとの歌手に似せるわけだが(ただし洋楽などはほとんどの視聴者が元ネタを知らないので、本当に似ているかどうかは不明)、コロッケが扮する野口五郎の“鼻ほじり”や岩崎宏美の“あご強調”、清水アキラの“テープ芸”による研ナオコなど、きついデフォルメのものまねも多く、元ネタを知らなくてもその容姿や言動で笑ってしまう芸が人気を博した。

 そして、“後ろからご本人登場”という形で妙にムッとした元ネタの歌手が現われて、ものまね芸人が謝罪する…というのもお約束だったし、”ご本人登場“がウケて”復活劇“が巻き起こった美川憲一のような新トレンドすら築くのだが、そのあたりからものまねは単なる形態模写かられっきとしたお笑いの一ジャンルとなり、「審査員の淡谷のり子に嫌われた清水アキラが優勝して号泣」的な状況も含めて、“笑いあり涙あり”のドラマティックな優良コンテンツとなったのである。

“ものまね新生代”がクオリティを高める タレントとしての“出世コース”の入り口にも

 2000年代に入ると、コージー冨田原口あきまさ神奈月ホリなどの“ものまね新世代”が登場してくる。彼らはものまねショーパブ(東京・新宿の『そっくり館キサラ』など)で鍛えたステージパフォーマンスを武器に、レパートリーの広さとクオリティの高さで一気に人気者に昇り詰める。

 この新世代になると、コージー富田のタモリや原口あきまさの明石家さんま、神奈月の武藤敬司、ホリの木村拓哉など、歌手“以外”のネタで、細かい描写までしっかり似せることで“高いクオリティ”での勝負となった。その流れは『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の番組内企画「細かすぎて伝わらないものまね選手権」へとつながり、マニアックなものまね芸が完全に市民権を得ることに。その延長で柳原可奈子の“ショップ店員”や横澤夏子の“ウザい女”など、ある種のコントなのだろうが、ものまねの対象が“一般人の日常”にまで及ぶようになったのである。

 もちろん、有名人のものまねも定番化するが、キンタロー。の前田敦子のように本人の顔やスタイルとはまったく違うのに、その動きやセリフ回しでウケたり、はるな愛の松浦亜弥や、渡辺直美のビヨンセのように、口パクながらステージパフォーマンスを徹底して模写するなど、ものまねの手法はどんどん広がっていき、はるなにしろ渡辺にしろ、ものまねを入り口にマルチ的なタレントとして活躍するというひとつの“出世コース”まででき上がっていくのだ。

モノマネの新トレンドは、あえて“似せすぎない”?

 そんなものまね界の最先端とも言えるのが、2018年上半期ブレイク芸人で1位を獲得した野生爆弾くっきーの“白塗りものまね”だ。その名のとおり顔を白く染め(本人いわく「まず真っ白なキャンバス作ってから…」)、黒ペンでメイク(シワ?)を施すとくっきーのカオスな世界が繰り広げられるのだが、実際は「なんとなくわかる」「顔の特徴はついている」程度の似せ具合ながら、子どもが泣き出すほどのパワーを持っている。それでも浜田雅功や嵐の二宮和也などの白塗りものまねは、何とも言えない絶妙感があるとともに、ここまでくるともはや似ている・似ていないの批評を超え、おもしろいしなんでもいいやと“バカ負け”してしまうほどのインパクトがあるのだ。

 そんなくっきーの白塗りものまねの代表作のひとつが柴田理恵だが、7月21日に放送された『うわっ! ダマされた大賞2018夏』(日本テレビ系)では、「誰が一番柴田になれるか」を競い合う「柴田理恵選手権」を開催。くっきーは、ギャル曽根、アンガールズ・田中卓司、ロッチ・中岡創一、小梅太夫に次々と“柴田の白塗りメイク”を施していき、最後には柴田本人が登場して「似てる。うちのお母さんそっくり」と絶賛すると、くっきーも「ものすごいうれしい。いつかごあいさつしたいと思っていた。面と向かって言えてよかった」と告白。なぜか柴田も“柴田の白塗りメイク”に挑戦し、見事に優勝をかっさらっていったのだった。

 こうしてみると、くっきー×柴田理恵、レイザーラモンRG×細川たかし、チョコレートプラネット・松尾駿×IKKOなど、真似するほう・真似されるほうも仕事につながり(松尾などはひな壇に呼ばれるときも最初からIKKOだったりする)、双方ウイン×ウインの関係とも言える。元ネタを知る人であれば「似ている」「似ていない」で盛り上がり、知らない人でも「これって似てるの?」などと会話に花が咲く。ものまねは基本的にわかりやすく、悪意さえなければ、老若男女が楽しめる“健全”な笑いであり、考えなくても楽しめるシンプルな芸なのである。

 “経年劣化”の少ないものまねというコンテンツは、時流に寄り添い、いつの時代もみんなで笑える最強のエンターテインメントなのかもしれない。

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