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千葉ロッテマスコット「謎の魚」が話題 “キモカワ”人気の裏にある非情なリストラ模様

千葉ロッテマリーンズの新キャラクター「謎の魚」

千葉ロッテマリーンズの新キャラクター「謎の魚」

 伝統と格式を持つ日本プロ野球界において、突如、千葉ロッテマリーンズの新キャラクターとして誕生した「謎の魚」。その奇妙奇天烈なルックスと立ち居振る舞いで、プロ野球ファンだけでなくネット住民を巻き込んだ「キモイ」「カワイイ」論争が起きた。マスコット界において、こうした“キモカワキャラ”が誕生する要因はどこにあるのか? そして、謎の魚の今後について、千葉ロッテマリーンズの球団広報に話を聞いた。

進化?を重ねるマスコット界のホープ「謎の魚」 そのインパクトは海を越えてMLBも震撼

 謎の魚は、「幕張の海に住む謎の魚」とされ、5月にZOZOマリンスタジアムのハイビジョンに初登場。この時はまだ第1形態で、見た目はチョウチンアンコウのような魚であった。しかし、6月に入ると魚の着ぐるみの下に脚が生えた第2形態に“変体”。主に5回裏に登場し、グラウンド内を回遊するという異常行動が目立つようになった。

 さらに、第3形態では魚から“骨”が飛び出すというシュールな姿となり、ここから一気にネット界隈がザワつきはじめる。そのインパクトは野球の本場MLBにも飛び火。MLB公式サイトの動画コーナー「Cut4」では、この突飛でクールな第3形態登場を受け、「スケルトンなのか? 我々は恐れるべきだろうか。喜ぶべきなのか? 頼む、助けてくれ」とユーモアを交えて取り上げるまでに。

 その後は、頭が巨大化した第4形態、そして“最終進化”と噂される第5形態ではシンプルな人型マスコットとして登場し、色んな意味で野球ファンを驚愕させた。千葉ロッテマリーンズ球団広報によれば、ファンからの評判は「『気持ち悪い』と『カワイイ』と言われる方の真っ二つに分かれます」とのこと。その人気は過熱ぎみで、謎の魚のグッズはすでに約50種類にものぼっている。ちなみに、謎の魚自身は海外も含めた反響について「海外の方はノリがいい。グフフフフ」と喜んでいるそう。

“キモカワ”の潮流を築いた唯一無二のマスコット「ドアラ」の功績

 そもそもこうした“キモカワ”マスコットの潮流はいかにして生まれたのだろうか。そこには、中日ドラゴンズの個性派マスコット・ドアラの存在が浮かびあがる。

 1994年に登場したドアラは、コアラをベースにしたキモカワルックスと、その奇天烈なパフォーマンスが支持され、マスコット界で1、2を争う人気キャラとして君臨している。しかし、ドアラが登場した当時、マスコット界はアクロバティックな大技パフォーマンスでちびっ子を喜ばせ、品行方正な対応でファン獲得を目指す“王道路線”まっしぐらな時代。

 そんな中、ドアラは、アクロバティックな大技を失敗したり、笑いを取りにいってスベったりという、ファンが求めるマスコット像の“ナナメ上”を行く行動で独自路線を確立。当然、観客からは冷めた視線にも晒されたのだが、ドアラはネット時代の“追い風”に乗り、動画投稿サイトなどでネタにされることで謎の大ブレイク。ネット民の支持を受けることで、徐々にその“キモカワの味”がプロ野球ファン以外の一般層にも認知されていく。これまでに書籍や写真集、DVDの発売経歴を持つほどだ。

“二匹目のドジョウ”を狙ったネタキャラ化が意図するものとは?

 ドアラに代表されるように、もはやプロスポーツ界においてマスコットは広報戦略を担う貴重な存在だ。94年、ドアラと時を同じくして登場したヤクルトスワローズのマスコット、つば九郎の活躍も目覚ましい。その可愛い見た目とは裏腹に、スケッチブックを使った際どい社会風刺や、ヤクルト選手たちとのシュールな絡みで人気に。例年、球団との契約交渉に臨む姿がTVやスポーツ紙で取り上げられるのも季節の風物詩として定着するなど、その広報パワーはドアラと並んでマスコット界屈指と言えよう。

 このように、昨今、マスコット界における“ネタキャラ”化が進んでいるのは、ドアラやつば九郎が築いたマスコットの“広報価値”が確立されたことが起因している。そのため、各球団がこぞって“飛び道具”となるネタキャラを乱立させる状態に拍車がかかっている。

 これまでも、漆黒のユニフォームの背中に「マスコット命」の文字、そしてサングラスの下は充血した目という、横浜ベイスターズのジョークマスコット・ブラックホッシーの登場。また、2014年にはヤクルトの新マスコット・トルクーヤが誕生。ヤクルト球団からは「ファンに愛される、お・も・て・な・しマスコット」と銘打たれているものの、そのあまりの「キモさ」にファンが若干引くほど。

 あえての“キモさ先行”で話題を取りに行くのは、バズを狙ったSNS時代の潮流と言えるかもしれない。実際、千葉ロッテ球団広報も、「基本的に『キモイ』、『意味不明』といった声が多いですが、それが一番の褒め言葉でございます」と、謎の魚の狙いを率直に明かす。と同時に、謎の魚がマスコットで意識しているのは、「東京ヤクルトスワローズのトルクーヤ」だと裏話を明かしてくれた。

キモカワ路線は飛び道具? 王道マスコットキャラがいてこそ輝く

 世間で注目を浴びる“ネタキャラ”マスコットたちだが、彼らのような“飛び道具”が輝けるのは、王道マスコットたる存在がいるからこそ。千葉ロッテにおける、マーくん、リーンちゃん、ズーちゃんといった地に足のついたキャラがいるからこそ、謎の魚も安心してネタに走れるのである。

 同様に、16年に誕生したソフトバンクホークスの奇抜な新マスコット・ふうさんも、イケメン家族で人気のホークファミリーがいてこその“飛び道具”だ。つまり、全方位でファンから支持を受けられる先輩マスコットがメインを張っているからこそ、“キモカワ”キャラたちは自身のキモさを最大限にアピールし、時には批判さえも受けながら活動できているのだ。

 その点について、千葉ロッテの先輩マスコットたちと謎の魚の関係性について聞くと、「お互い牽制しあっています」とにべもない回答。謎の魚の先輩マスコットへの忖度のなさ加減は、さすがは孤高のマスコットである。

引退もある厳しいプロ野球マスコット界 「私はあと数回変身する」かも?

 とは言え、偉大な先輩マスコットたちもウカウカとしていられないのがプロ野球マスコット界の厳しい現実。その歴史を紐解くと、実力不足や不人気によるリストラや引退が多いことでも知られている。

 05年から14年まで活躍したヤクルトの燕太郎。93年から11年まで長期に渡って横浜ベイスターズの顏であったホッシーファミリー。日本ハムファイターズのギョロタンとファイティーなど、引退やリストラされたマスコットたちは枚挙に暇がない。

 その点、変身キャラを確立させた謎の魚は、その時代におけるファンからの要望に応じて姿を変体させる臨機応変さを備えており、球団戦略の上手さを感じる。謎の魚の今後の変体について聞くと、謎の魚自身から「(変身を)残しているという大人のロマンを持たれても構いません。グフフフフフフ」との回答があった。今後、第6形態への変体があった際は、プロ野球ファン以外も巻き込んだ話題となることだろう。

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