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“あざとさの自己申告”が、個性派演出の定番フォーマットに?

  • SKE48須田亜香里

    SKE48須田亜香里

 ここ数年、女性芸能人の人気の浮沈を握るカギとして“あざとさ”がある。(あの娘、売名行為も目立つし、あざとくない〜?)なんて同性の女性たちに評されたら最後、炎上→好感度の低下…といったコースをたどりがちだったが、ここにきて“あざとさ”を自己申告することでプラスに作用する傾向も。あざといキャラクターを「個性的なポジション」とし、自らの“ウリ”として仕事に結びつけるケースが目立っているのだ。SNSの炎上商法にも通じる“あざとさ”の売り方の是非とは?

自虐、腹黒、ギャップ…を内包、“あざとい”キャラが躍進

  • AKB総選挙で文春砲のことを自己申告したNGT48中井りか

    AKB総選挙で文春砲のことを自己申告したNGT48中井りか

 “あざとさ”をウリにするケースは、たとえばアイドルで顕著に見られる。6月のAKB総選挙で2位に躍進したSKE48の須田亜香里は、総選挙前からバラエティー番組の「おブス」企画にたびたび出演し、自らをネタにして笑いをとったり、番組内であざとい女子キャラを演じたりと露出を急増させている。総選挙で2位ともなればさすがに路線変更するだろうと思いきや、総選挙直後に出演したバラエティー番組でもパンストをかぶったりしてネットニュースを賑わせた。

 またタイプは異なるが、総選挙で「文春砲」の標的になったことを“事前申告”したNGT48の中井りかも、「アイドルだっていろいろあるんだよ!」、「(同棲は)残念ながらしてないです!残念でした〜」といった歯に衣着せぬ発言をしながらもアイドル然としたふるまいを織り交ぜ、やはり「あざとい」、「小悪魔」、「腹黒」などと称されている。

 さらに、乃木坂46の秋元真夏も冠番組『乃木坂工事中』(テレビ東京系)の中で、私服はミニスカ、必ず肩を出すというこだわりを披露し、ファンの間でも“あざといキャラ”が浸透。一方で『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)や、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日系)などの番組に出演した際に才女ぶりを発揮し、そのギャップが評価された。3人に共通するのが、握手会イベントでは“釣り師”とも呼ばれている点だ。様々な“あざとさの形”があるが、いずれもそれを個性・ウリとして仕事に結びつけているようだ。

受け入れられるあざとさとは? 明暗を分けるポイントはネガティブと向き合う姿勢

 かつては、女性芸能人にとって“あざとさ”は命取りだった。実際、バラエティー番組に数多く出演していたグラビア系タレントが、本性を暴かれて一気に女性からのバッシングを受け、あっという間にテレビから姿を消した…なんてことは珍しいことではなかった。そのあざとさを自ら前面に出し、しかも個性とするなど隔世の感があるが、それでも“受け入れられるあざとさ”と“受け入れられないあざとさ”はあるようだ。

 “同性から嫌われる女子アナ”だった、現フリーアナウンサーの田中みな実は、オリエンタルラジオ・藤森慎吾との破局後、自虐話が増えて“こじらせ女子”にキャラが変化。「幸せに触れた後、ひとりで家で泣いてしまうことがある」、「毎日の不満をコラムに書いている」など、自身の抱える“闇”を赤裸々に告白。すると“敵”であったはずの女性たちから“共感”を得て、ついには「好きな女子アナランキング」の上位に登場するまでとなった。

 また、アイドル然とした美貌と“それっぽい”仕草から「あざとい」と言われていたTBSの宇垣美里アナは、「社会の不条理を感じたときは、『私はマイメロだよ〜☆ 難しいことはよくわかんないしイチゴ食べたいでーす』って思えば、たいていのことはどうでもよくなる」とし、独自のストレス回避術「マイメロ論」をコラムで紹介。するとこちらも日々の生活に悩みや葛藤を抱える読者やネットユーザーからの共感を勝ち取り、支持が拡大した。

 つまり、あざといキャラとして否定的に見られていても、自分のマイナス部分や本音をとことんさらけ出すことでアンチたちの中にもある“共通部分”の琴線に触れ、逆に(そういうのあるよね〜)的な共感を得られるようなのである。

SNS時代にあざとさを自己申告して先手必勝、炎上防止にも

 こうしてみると、あざといキャラたちの“自己申告”はSNS上の“炎上覚悟”とも似た心理が働いているようだ。今、『炎上覚悟』という言葉はネットで“流行語”となり、「#いいね!の数だけ炎上覚悟で本音言う」というタグがTwitterでも人気。発言内容とともに「#炎上覚悟」のハッシュタグをつけ、最初に断わっておいてから皮肉ったり、嘆いたり、辛辣な物言いをする。そこからは反発を見越して先手を打ち、“本音”を共有することを呼びかける意図が透けて見えるようだ。中には、至極まっとうな意見で、そんな大それたことでもない普通のことでも、「炎上覚悟」とするちょっと大げさな演出すらある。

 いずれにしろ、覚悟を決めて見せた発言には「よくぞ言ってくれた」、「あたりまえの意見だ」などの好意的な反応があがる傾向があるようだ。この構図はまさに芸能界の“あざとさの自己申告”に通じるのではないだろうか。

“本音の吐露”が裏表のない存在として認知 しかし、その策士ぶりこそが本当のあざとさ

 「あざとい」と叩かれる“前”に、進んで自己申告することは、視聴者やファンたちをひと呼吸冷静にさせ、感情的なボルテージをいったん下げることにもなる。自己申告は批判への“防波堤”になると同時に、“裏表がない人”という印象にもつながるのだ。

 前述のNGT48・中井りかは、文春砲に見舞われることを総選挙の檀上で“先に”告白した翌朝、Twitterで「腹へったわい」と普段と変わらぬ様子を見せて批判にもさらされたが、同時に「やっぱりこの人面白い」、「素直」、「アイドルって大変だな、飯も食えないのか」、「心配したけれど通常運転でよかった」等々、擁護する意見も見られた。SKE48・須田亜香里も番組で自ら“おブスキャラ”をネタにしていく度に、「全然そんなことない」、「すごく可愛いのに」、「本当の不美人に失礼」等々、まさに批判が和らいでいく反応が見受けられたのである。

 AKB系メンバーに「あざとさを自己申告する」アイドルが多いのは、多人数のメンバーの中で個人が埋没してしまうことへの危機感もあるだろうが、バッシングを逆利用してのし上がった指原莉乃の成功体験の影響も小さくないだろう。とは言え、こうした「あざとさの自己申告」がさらに“あざとい”と思われたら元の木阿弥だ。自己申告が欺瞞ではなく“本音”と思わせることができたら“勝ち”だが、それを見越してやっているのであれば、それこそ本物の“あざとさ”であろう。

 今はたしかに“いい子ちゃん”ばかりがもてはやされる時代ではないし、個性が埋もれるぐらいなら嫌われるリスクを冒して、本当の自分をさらけ出したほうがいいのかもしれない。そうして「あざとさの自己申告」も個性の演出法のひとつとして確立されつつあるのだ。

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