(更新:)
ORICON NEWS
メディアにより認知が広がる『LGBT』、教育現場の“取り組み”を文科省に聞いた
LGBTの割合は3〜8%とも “身近な存在”として認識することが大切
文部科学省の担当者にLGBTの現状について聞くと、「数年前からドラマなどでも取り上げられるようになり、以前に比べて認知が広がっている傾向は感じます」と回答。「そもそも、LGBTが周りにいることを“気づかない”人も多い。でも、ドラマなり漫画を見ることで、もしかしたら自分の周りにもいるかもしれない…? そんな“気づき”の契機となっている」と、メディアの効用について語ってくれた。
そうした世間の変化を受け、教育現場はLGBTの子どもとどう向き合っているのか? 「民間の調査になりますが、LGBTの割合については3〜8%だとも言われています。学校にも、一定数の割合でLGBTの子どもがいると教師たちには伝えています」と担当者は語る。つまり、40人学級のクラスだとした場合、1人か2人はLGBTの子どもがいると考えるべきなのだろう。それほど身近な問題なのだ。
LGBTについて対応が定まらない教師たち 国の制度も後追いに
担当者によると「以前は、研修に集まった先生から『LGBTの子どもにほとんど会ったことがない』という回答もありました。また、『どういう対応していいか分からない』という声も聞かれました」と教師たちの困惑ぶりを明かす。しかし、「LGBTの周知に努めたことや、昨今のメディアでの取り扱いもあり、最近は『うちの学校にもいます』という声が増えてきた」とのこと。
しかし、これだけ身近な問題となりながら、LGBTのことを扱う授業などは決まっていないのだそう。「文科省として、学校に対して『この授業の中で必ず取り上げて下さい』という通知などは行っていません。現状は、LGBTの児童がいた際に“適正な配慮”と“柔軟な対応”をお願いしている段階」とのこと。高まる国民の“意識”に対して、まだまだ国の制度が追いついていない印象だ。
認知・理解が進むと“安直な対応”になりがち? 「“マニュアル対応”が子どもを傷つける」
「教師たちのLGBTへの理解や認知は進みましたが、一方で対応の画一化、つまりマニュアル化された対応をしがちになっている」と担当者は指摘する。実際、生徒から相談があった時に、「周りの人にも言っていいのか?」と相談してくる先生もいたという。
「この件に限らずですが、認知が進むと安直な対応をしがちです。そうした行為が悩みを抱える人を“傷つける”こともあります」と担当者は懸念する。“安易な行動”という面でいうと、ある大学ではLGBTであることを友人にバラされてしまった学生が自殺するという痛ましい事件も起きている。
いま、アウティング(本人の了解を得ずに、公にしていない性的指向や性同一性等の秘密を暴露する行動)が学校で起こらないようにすることは重要な課題だと担当者は強調する。子ども同士の場合、アウティングだけでなく、カミングアウトの強要などの恐れもあるのだという。
「以前に比べてLGBTの理解は進んではいるものの、LGBTであることを気軽にカミングアウトしたり、それを自然に受け入れられる状況にはなっていません。また、教師の研修がある際は、アウティング問題を重点的にやっています」(文科省・担当者)
近年、個人の権利への関心は高まっている。特に2020年の東京五輪に向け、こうした傾向はより強まっていくだろう。LGBTの方が差別されたり、普段の生活で困ることがないよう、小中学校での教育はより重要度を増していくはずだ。と同時に、こうしたテーマの認知や理解に繋がるドラマや漫画の存在も忘れてはならない。今後、LGBTの認知拡大や、情操教育にも役立つコンテンツが生まれることを期待したい。