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ジョイマンも再ブレイクの兆し? 一発屋芸人に好意的な潮流

  • チケット完売でファンに感謝するジョイマン(C)ORICON NewS inc.

    チケット完売でファンに感謝するジョイマン(C)ORICON NewS inc.

 2008年ころ、突如「ナナナナーナナナナー」というラップ調のリズムネタで大ブレイクするも瞬時に消え去り、忘却の彼方へと去っていったお笑いコンビ・ジョイマン。しかし、2014年のサイン会で「お客さん0人」を記録すると、その落ちぶれ具合がネットで反響を呼び、最近では解散をかけた単独ライブのチケットも無事に完売。ここにきてバラエティー番組にも出演するなど、まさかの“復活”の気配を見せている。ある種の同情票もありながら、「芸能人のどん底」を味わった芸人ならではの深みとネタの面白さが見直されている彼ら。このまま“再ブレイク”するのだろうか?

リズムネタ芸人の一員としてブレイク、早々に旬が過ぎて一発屋に

 ジョイマンは、ボケ担当の高木晋哉とツッコミの池谷和志によって2003年に結成。2008年ころ、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)や『エンタの神様』(日本テレビ系)などに出演すると、高木の高身長&黒縁メガネ、胸元を大きく開けた白シャツからは濃い胸毛が覗くという、アンガールズの田中卓志似の濃いルックスが“キモかわいい”と視聴者にも印象づけられた。

 ネタとしては、ラップ調のリズムに乗せて「ありがとう オリゴ糖」、「クリントン 二十トン」といった韻を踏んだ歌詞(ギャグ?)をユルく踊りながら繰り出すというもの。当時流行していた“リズムネタ芸人”の一員だったわけだが、「オダギリジョー 異常」のような毒っ気のあるネタに思わずクスっとしたり、独特の“ダラダラ感”も、ある種の“中毒”となって一躍ブレイクしたのだ。

 しかし、高木が二度にわたって美女とラブホテルに消えていく姿を写真週刊誌に撮られると、“キモかわいい”がただの“キモい”に成り下がり一気に急降下。2010年には、『タカトシ×くりぃむのペケ×ポン』(フジテレビ系)の「旬ものはどれだ」コーナーで「旬じゃない芸人ルーム」に追いやられるほど、長い“低迷期”へと突入する。

「お客さん0人」が話題になり解散回避、さらに『激レアさん』連続“出演”も

  • 解散回避し、笑顔のジョイマン(C)ORICON NewS inc.

    解散回避し、笑顔のジョイマン(C)ORICON NewS inc.

 2014年、山形や三重、東京の握手会で「お客さん0人」を記録。高木がそれをツイッターでつぶやくと、あまりに寂しすぎる風景にネットで話題になった。2017年7月放送の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)では、「あんなに勉強していい大学に入ったのに、何の役にも立っていない先生」(高木は早稲田大学中退)として登場。「月収13万円で妻子を養っている(当時。ブレイク時は最高月収180万円)」という極貧生活も明かした。

 こうした“自虐ネタ”も話題となったジョイマン。ついには、7月に行う単独ライブ『ここにいるよ。』のチケットを売りきらなければ解散、という重い公約を自ら掲げた。最終的には、412枚のチケットすべてを完売させ、無事に解散を回避。高木は完売後のサイン会で、「みんなに〜感謝、MISIAが〜納車」と相変わらずのユルいネタを披露する一方、「解散を宣言してから体がブルブル震えていたので、今は達成感に浸りたいです」と笑顔で本音を告白。話題となった「サイン会0人事件」についても、「芸能界の底についたと衝撃的で、ターニングポイントになった」としみじみ語ったのである。

 そんなジョイマンだが、最近、人気の深夜バラエティー番組『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)になぜか2週連続で登場。“字幕放送の文字入力者が、ジョイマンのネタを間違いなく入力できるか”と“カラオケのハモリボイス担当者が、ジョイマンのネタのハモリができるか”というVTRのミニコーナーに出演した。どちらも“激レアさん”たちの能力の高さを示す“お試し例”としてのネタ披露だっただけで、ほんのチョイ役にすぎない。だが、SNSでは「ジョイマンのネタに厚みと深みが!」、「私の中でジョイマンがブレイク中」、「準レギュラーになってほしい」、「最近ジョイマンにはまった」などなど、ブレイク時を知る人からも知らない人からも、好意的に受け入れられたのだ。

地方営業や芸風の変化、主戦場を変えて生き残る先輩“一発屋”

 じわじわと再ブレイクの兆しを見せているジョイマンだが、同じく“一発屋”としては「ゲッツ」のダンディ坂野や「なんでだろう」のテツandトモ、「オッパッピー」の小島よしお、ハードゲイネタのレイザーラモンHGらが思い出される。

 もともとはネガティブな言葉だった“一発屋”だが、最近ではバラエティーで一発屋芸人の特集が組まれることも多く、一概に悪いイメージとは言えなくなってきた。一時期の人気が収束しても、主戦場をテレビから地方営業に移す者、ネタをアレンジしたCMで露出し続ける者、芸風を一変して再挑戦する者など、何だかんだと生き残っていることが多くの人に知られるようになっている。

「お客さん0人」が逆に苦境を救う、“不憫さ”への同情票とネタの再評価

 一方、大きく芸風を変えるような目立った方向転換もなく、テレビ以外の活躍もなかったジョイマン。だからこそ「お客さん0人」状態に陥ったとも言えるが、彼ら自身もそれを素直に認め、現状をSNSで隠さず見せている。そして、そのあまりの“不憫さ”が彼らの窮地を救うという思わぬ展開を生むこととなった。不憫アピールや自虐ネタは、やりようによっては反感を買ったり、引かれたりすることもある。だが、ツイッターで拡散されたジョイマンの「お客さん0人」姿はあまりにも衝撃的で、有無を言わさぬインパクトがあり、無駄な演出の入り込む隙間などなかった。ちなみに前述の『激レアさん』でも、VTRでネタをやる姿が映っただけで、ひと言もしゃべらず、演出も説明もなかった。

 もちろん、ジョイマンの再ブレイク(の兆し)は“不憫さ”への同情だけが要因ではない。高木はツイッターで、『「ジョイマン知ってる〜ていうお友達いるかな?」そう子供達に問いかけた後の沈黙が、数時間経った今でも耳に張り付いている。無愛想に通り過ぎていく木枯らしのざわめきすら、今の僕には優しく響く」といった調子のつぶやきを発信しているのだが、その表現が「詩的すぎる」として話題になっているのである。『人はなぜ一発屋になるの。夜空に問いかけても、星は静かに瞬いているだけ。あの小さな星には一発屋はいないのだろうか。遠い星の芸能界に想いを馳せる。僕は目を閉じ、夢を見る』などのツイートには、たしかに「芸能人の底」を知った人間だからこその深みが感じられる。

 そして2018年、彼らの全盛期を知っている世代からは「一周回って面白い」と見直され、ジョイマンを知らない若い層からも「新鮮で面白い」との評価を受けている。現在、ジョイマンはレイザーラモンHG、レギュラー、天津木村、ムーディ勝山らといった一発屋仲間たちとともに『一発屋オールスターズ』という公演に出演。もともと小劇場を舞台としていたが、最近では新宿ルミネtheよしもとを満席にするほどに“成長”してきているのだ。

 一発屋たちが“一発屋であること”を持ちネタのようにして活躍する昨今。彼らが、山あり谷ありの人生を語る企画も定番となっている。自身も一発屋の一員である髭男爵・山田ルイ53世は、『一発屋芸人列伝』なる書籍を上梓し、評判となった。このような流れを見ていると、一度は“底”を見た芸人だからこそ、かもし出すことができる面白さ、深みというものがあるようだ。ジョイマンが本格的にブレイクする日も、近いのかもしれない。

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