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(更新: ORICON NEWS

イケメン俳優の“おもしろオジサン化”がより顕著に? 大渋滞する俳優業界での「生存術」

  • CMでの“おもしろオジサン化”が話題となった俳優の伊藤英明 (C)ORICON NewS inc.

    CMでの“おもしろオジサン化”が話題となった俳優の伊藤英明 (C)ORICON NewS inc.

 俳優の伊藤英明が、漫画『北斗の拳』とボディーケア商品「デ・オウ」のコラボCMで主人公のケンシロウ役を演じ、その再現度の高さと振り切った“バカ演”で話題となった。近年、竹野内豊がCMでシュールな役柄を演じたりと、ミドルクラスのイケメン俳優が“おもしろオジサン化”し、新たな魅力を視聴者に提示することが増えている。イケメン俳優が30歳を超えて変化する理由とは? 若手イケメン俳優“一個小隊推し”の狭間で揺れるオーバー30俳優の生き残る術を探る。

オーバー30イケメン俳優の新たな魅力? “バカ演”で引き出しの多さをアピール

 伊藤がCMで演じたコミカルなケンシロウ役に対し、SNSでは「実写化は止めてほしいけどケンシロウが伊藤英明なら許せる」、「伊藤英明さんのケンシロウのCMじわるんやけど」などと評価する声が上がっている。『北斗の拳』の作画・原哲夫氏も「漫画の世界観をよく理解してくれている」とコメントするほど。

 伊藤はこれまでドラマ『救命病棟24時』(フジテレビ系)の医師役や、映画『海猿』シリーズの海上保安官役、映画『悪の教典』でのサイコパス教師役など、演技派俳優として王道を走ってきた。そんな中、今回のCMではケンシロウになりきって、「北斗百裂拳」を繰り出すかのように体を泡だらけにしながらザコ敵を撃破。「お前はもうニオわない」という決めセリフを言い放つインパクトある“バカ演”を披露している。(→【写真】『北斗の拳』を120%再現した伊藤英明の“バカ演”

 また、竹野内も数年前から“おもしろオジサン化”し、新たな魅力を獲得している。東京ガスのCM では「ガスの仮面」として目元を仮面で隠した格好で登場。「温まったら股関節も開く」とバレエのパフォーマンスも披露。さらに、大和ハウスのCMでは、天井が低いところが好きだが家族には言えない夫役をコミカルに演じた。こちらもネットでは大ウケで、「竹野内豊が出演してるCMは全部おもしろいなー笑」といった声や、「竹野内豊はカッコよすぎて普通のかっこいい人はやらせてもらえなくなったんだな…今の路線でいいけどw」といった深い意見も。

 さらに、竹野内が出演した映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』の井口奈己監督は、「竹野内さんは、演技力とかそういう基準では語れない良さがあるんです」と説明。昨今の竹野内が見せる俳優としての多面的な魅力を語っている。

若手イケメン俳優が大渋滞 “王子様推し”の中から抜け出す方法とは?

 こうした30代以上のイケメン俳優による“おもしろオジサン化”は、“30歳の壁”が起因しているのではないだろうか。というのも、若手のうちはルックスや王子様キャラなどで売っていける。しかし、昨今はジャニーズをはじめ、EXILEを筆頭とするLDH所属の俳優のほか、『仮面ライダー』や『戦隊モノ』などヒーロー出身者や、そして『テニスの王子様』や『刀剣乱舞』などの2.5次元俳優なども人気。このように、イケメン俳優や王子様キャラが雨後のタケノコのように出現し、大渋滞を起こしているのだ。

 さらに、イケメンファンといえば、顔だけのファンである“顔ファン”などの言葉もあるように、若いタレントにすぐに流れてしまう“浮気性”の傾向もあるという。複数のファンを掛け持ちする“カケモ”も多く、若手イケメン俳優たちは30歳となった際に、演技の実力の他に“プラスアルファ”がなければ、団子状態の中から抜け出すことができないのだ。

パーソナルな部分を解放した山田孝之と斎藤工、“30歳の壁”をブレイクスルー

 そんな中、イケメン俳優の斎藤工は“30代の壁”をブレイクスルーした1人と言える。2014年にドラマ『昼顔』(フジテレビ系)で不倫する教師を演じ、その演技力が高く評価さる一方で、15年には日清『カップヌードルライトプラス』のCMで頭に野菜を乗せた“野菜男”となってジャブを放つ。さらに、16年の年末『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! 絶対に笑ってはいけない科学博士24時』(日本テレビ系)で、芸人・サンシャイン池崎のネタをカバーした“サンシャイン斎藤”としてハイテンション芸を披露し絶賛を浴びたのだ。

 斎藤は演技派としての確固たる土台の上に“コミカルさ”を積み重ね、演者としての“幅の広さ”を印象付けただけでなく、「なんでもやる」、「なんでもできる」という制作側へのアピールにも成功している。クールに振る舞うだけではない、親しみやすさで男性ファンの好感度が増した点も大きい。

 同様に、俳優・山田孝之も、当初はドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系)など正統派若手イケメン俳優として活躍した1人。だが、ORICON NEWSのインタビューで山田は「20代の頃は、なんでこんなにつまらないのに生き続けなきゃいけないんだ? “生きるのめんどくせぇ”とずっと思っていた」と苦悩を明かしている。

 しかし、本人が「30代ってやりたいことがやっとできるようになってくる年代なので、とにかくやりたいことをやればいい」と言うように、年を重ねるごとに自身の趣味である“ゲーム好き”や“アイドル好き”といったパーソナルな部分を解放。昨今は特に、CM、ドラマ、映画で“振り切った演技”を見せ、幅広い層の支持を獲得している。5月19日にはSHIBUYA109で「ただひたすらにお客様のバストのサイズを測定し続ける」というイベントを行うなど、イケメンとのギャップで自身の魅力を何倍にも引き出している。

 山田もそうであったように、30歳前後がイケメン俳優にとっての節目となるのは間違いない。イケメン俳優の枠から抜け出し、コア・コンピタンス (ほかに真似できない核となる能力)をどう確立するかが、その後の俳優人生の成否を分けることになりそうだ。

一方で“おもしろオジサン化”失敗の可能性も!? リスクを背負う“覚悟”も問われている

 だが、昭和の大俳優・石原裕次郎や高倉健、吉永小百合といったキラ星たちは、“作られた役”に乗る必要がなく、自分の持つイメージで乗り切ることができた。先日、俳優業を引退した田村正和なども同様で、他には代えがたいスター性で“プラスアルファ”が必要のない役者もいる。

 つまり、ファンが望むものと役者としての表現が乖離しすぎた場合、それまで築き上げた“幻想性”が崩れ、視聴者やファンを白けさせてしまうリスクもある。一概に“バカ演”に走ったり、キャラ変することが必ずしも正解ではないのだ。だからこそ、“おもしろオジサン化”が失敗するリスクも理解し、そのうえで挑戦する覚悟も問われている。

 大渋滞する俳優界では、30代となってルックスや勢いだけで主役を張れるわけではない。ましてや、20代にはルックスと若さを武器にした“イケメン俳優一個小隊”が大増殖しており、下からの突き上げもある。

 そうした厳しい生存競争を勝ち抜き、どんな“おもしろオジサン”が登場してくるのか楽しみだ。

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