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サッカー日本代表をメディアはどう報じてきた? 繰り返される“戦犯”作りの背景

  • ロシアワールドカップに臨む日本代表・本田圭佑選手(C)ORICON NewS inc.

    ロシアワールドカップに臨む日本代表・本田圭佑選手(C)ORICON NewS inc.

 サッカー日本代表が今、かつてない逆風にさらされている。ロシアワールドカップ(W杯)に臨む日本代表メンバーは、サプライズもなく大方の“予想通り”となった。本大会直前のハリル前監督の解任により「選手たちの造反があった?」といった疑義や、協会の対応の悪さもあり、風当たりは過去5大会と比べ最も強い。そうした批判に答える形で長友佑都選手が1日、「年齢で物事判断する人はサッカー知らない人」とSNSで発信し、炎上する騒ぎも。このように、W杯開催の度に繰り返される多様な人間ドラマ。そして、それに一喜一憂する「メディア」と「サッカーファン」の関係性について、元週刊サッカーダイジェスト編集長の山内雄司氏に話を聞いた。

「忖度ジャパン」、「年功序列」…かつてない批判にさらされる日本代表

 一時は本田圭佑選手、岡崎慎司選手、香川真司選手のいわゆる「ビッグ3を外すべきか」といった議論が成された時期もあったが、海外で充分な成績を収めた中島翔哉選手、堂安律選手、久保裕也選手ら若手を抑えての選出。この選考にネットユーザーは即座に反応し、「忖度ジャパン」、「年功序列かよ」、「期待できない」といった批判の声をあげている。

 さらに、ハリル前監督の解任理由として、「選手のクーデター」や「スポンサーへの忖度」を報じる一部メディアがあったため、今回の騒動に関して根拠のない“犯人捜し”や“レッテル貼り”が多く見られる状況にもなっている。

 もちろん、メディアによる批判的な論調はあって然るべきだ。だが、「そこに筋が通っていなければダブルスタンダードになりかねない」と危惧する山内氏。実際、メディアが“世間の流れ”に乗ってしまったケースは過去にもあるという。

「カズはいらない」 期待値が高ければ高いほど、その反動は大きいものとなる

 1997年、初のW杯出場を賭け、日本代表は翌年のフランス大会への出場権を得るべくアジア最終予選に臨んでいた。その時、チームの象徴とも言える存在であったのが“KING KAZU”こと三浦知良選手。1次予選で5試合10得点のゴールラッシュを見せたカズ選手は、最終予選初戦のウズベキスタン戦でも4ゴールをマークする大活躍。誰もが彼を称賛していた。しかし、残酷な運命が待ち受けていた。カズ選手はその後、まったく得点できなかった。そのため、彼の評価はジェットコースターのように激しく上下に波打った。当時の様子を山内氏は次のように語る。

 「初のW杯出場に向けて日本中が期待に満ちていました。初戦のウズベキスタン戦で4ゴールするなど、カズ選手は紛れもないエース。でも、3戦目の韓国戦で尾てい骨を痛めたことも影響して、その後は不調に陥った。大一番となった6試合目のUAE戦で引き分けた際は、国立競技場周辺はサポーターが暴動に近い状態になりカズ選手も罵声を浴びせられた。さらに、パイプイスや生卵が投げつけられる事態にも。私たちメディアも、カズ選手の扱い、つまり代表に必要かそうでないか大いに頭を悩ませることになりました」

 期待の裏返しほど裏切られた感覚は強まる。カズ選手の立場はエースから一転、“不要論”が巻き起こる危ういものとなった。果たしてそこにメディアによる先導があったのだろうか?

 山内氏は「思い返すと、悲願のW杯出場へ向け、メディアもファンも含めて代表を取り巻く皆が冷静さを失っていた」と振り返る。今回の件で言えば、本田選手もまた期待値が高かったからこそ、批判の対象となっている一人だ。日本代表94試合36得点(W杯2大会で3得点)の輝かしい実績を持ち、イタリアの名門・ACミランの10番を背負った日本代表の中心選手。また、「伸びしろを感じている」、「リトルホンダがミランと答えた」、「俺はもってる」など、“有言実行”の姿勢も評価されていた。ところが、14年ブラジルW杯の予選リーグ敗退を境に潮目が変わる。

 「本田選手はW杯で“優勝を狙う”という高い目標を掲げましたが、予選リーグでの敗退という結果に失望感が広がってしまった。これは本田選手への期待が高かったことへの裏返しでもある」と山内氏。この頃から、ファンの間で親しまれていた本田語録が裏目に出るようになる。インパクトのある本田選手の発言を切り取り、ネットユーザーと本田選手の対立を煽るようなメディアもあらわれたのだ。

「売らんかな」主義で“レッテル貼り”や“犯人探し”に走るメディアも?

 さらに山内氏は、「“ビッグ3”の実績が際立っているため、彼らを追い抜く若手の存在がなかなか現れていない。世間から見れば“マンネリ”」と指摘する。それは視聴率も如実に表れ、W杯アジア最終予選の平均視聴率は、ここ7大会で最低の数字を記録。前回のブラジル大会に比べると10%以上の開きが出ている。

 それゆえ、部数やネットのアクセス数が欲しいメディアは、数字に結びつきやすい“スケープゴート”探しや、対立構造を意図して作り出しているとも言えるだろう。W杯出場が絶望視された1997年の“カズ不要論”や、期待値が低かった2010年南アフリカW杯の“岡田武史監督批判”もそうした背景が読み取れる。

 このように、“スケープゴート”作りは繰り返されている。98年のフランスW杯では、カズ落選によって世間が“カズ不要論”から“カズ同情論”に鞍替え。ワイドショーなどでもカズを落選させた岡田監督への批判が展開された。さらに、カズ選手の後にエースの座を担った城彰二選手は、本大会で結果を出せなかったこともあり、次なるスケープゴートとして批判に晒された。W杯からの帰国時、成田空港で心無いサポーターから水をかけられたシーンはあまりに有名だ。

 当時について山内氏は、「急にエースに指名された城さんの苦悩まで思いを巡らせるほど私自身は冷静ではなかった。当時は編集長ではなくペーペーの記者だったのですが、それは言い訳にはなりませんね」と自戒する。それほど、メディアも国民もW杯初出場の熱気に魅せられていたのだ。

メディアに求められる客観性「報じる側も批判される“覚悟”が必要」

 視聴率や世間の関心度、そしてネット上でも批判ばかりが目立つ現在の日本代表。とは言え、こうしたマイナス評を一気に覆す方法はシンプルだと山内氏。それは「ロシアW杯で決勝トーナメントに進出すること」だと強調する。

 実際、2010年の南アフリカ大会も、岡田ジャパンは批判の声の方が大きかった。しかし、岡田監督は不調のエース・中村俊輔選手をスタメンから外し、本田選手をFWに置く守備的システムへの変更により本大会で快進撃を披露。結果、岡田監督批判を展開していたメディアもネットユーザーも、途端に岡田監督賛辞の“掌返し”を見せることとなったのだ。

 “スケープゴート作り”や“レッテル貼り”により、世間の評価がふとしたキッカケで乱高下する現代のネット事情。だからこそ、メディアには客観性のある記事が求められると山内氏は言う。

 「検証記事もどれだけ冷静に語られているかが大切です。さらに、時流に流されたもの、冷静さを欠いたものがあれば、読者の方々も声をあげる方法はいっぱいある。そうしたメディア批判も含めて、報じる側も“覚悟”を持たなければならないでしょう」

 さて、ロシアWカップはどのように報じられるのだろうか。西野ジャパンの一挙手一投足を詳細に見つめつつ、報道にも注視してみようではないか。それは確固たる現実を伝えているのか? そして、未来を見出すことができるのか?

 コロンビア戦まであと16日と迫っている。

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