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“キャッチコピー先行型”タレントの復活、その背景とは?
キャッチコピー先行売りの定着、インパクト重視を狙う“新人タレント”
グラビア界でも『宮本から君へ』(テレビ東京系)にも出演する華村あすかは「グラビア界異例の新人」「原宿発のシンデレラガール」などと称され、他にも「尻番長」倉持由香、「なにわのブラックダイヤモンド」橋本梨菜、「神の造形」馬場ふみか、「黒船、再来。」アンジェラ芽衣など、タレントを売り出す際にキャチコピーを付けるのが、再び定番化してきているのだ。
関係者が明かす80年代アイドルキャッチコピー秘話「関係各所すべてに許諾が必要でした」
だが、中森明菜は「少女A」以降はアイドル然とした方向性ではなく、“大人びた少女”という路線に変更。デビュー時には“覚えてもらう”ためのフックとして必要不可欠だったキャッチコピーだが、それをどのタイミングで外すのかも難しいものであった。一方で “元祖バラドル”として現在も活躍する井森美幸は「まだ誰のものでもありません」と自らネタにしている。このように後世に残るフレーズとなったものもあり、タレントのキャッチコピーは視聴者に大きなインパクトを与えるものだった。
80年代に荻野目洋子や酒井法子などを擁したビクターで宣伝に関わっていた、現ビクタースタジオ飯田雅之氏に、当時のキャッチコピー文化について話を聞くことができた。「当時のアイドルは春先に一斉にデビューをする中で、各社が“推し”の新人を決めます。春、夏と年末にかけてレコードを3枚ほど出して、年末の賞レースで新人賞を狙うというのが王道の売り出し方でした。まっさらな新人の“売り”を伝えるものとしてキャチコピーは重要なものであり、タレントの魅力を表すシンプルな言葉が基本でした。新人なので宣伝費用がない中で担当者が主導となり、試行錯誤してプロモーション部門、制作部門それぞれの上司、さらに所属芸能事務所に了解を得た上で決めていました。それくらい重要なものだったのです」(飯田氏)
「1000年に1度の美少女」から“キャッチコピー先行”再び、SNSが浸透を後押し
橋本の特異性は、事務所の狙いではなく、一般のネットユーザーが投稿した写真と言葉が独り歩きをしていったストーリー性にあった。そしてもちろん、そのキャッチコピーを体現する個性・美貌を本人が持ち得ていたことが最大のブレイクの理由だろう。この橋本環奈のブレイクにより、一時はなりをひそめたキャッチコピーが見直されて、復活の流れに至る。その流れを後押しした背景には、AKB48をはじめとするグループアイドルブームの影響も多大にあるだろう。メンバーが膨大に膨れ上がる中で、タレント側が自己紹介の口上として自ら付けるパターンが定番となり、そこかしこでタレントのキャッチコピーが見られるようになっていったのだ。
「個性×ストーリー性」が浸透のカギ? キャッチコピー戦国時代に
そこから現在、出自のストーリー性と個性(魅力)を表すものに進化させているタレントが、認知度を高めている。「岡山の奇跡」桜井日奈子や「福岡一の美女」今田美桜など、冒頭で紹介したタレントたちはこのパターンだ。そのほか、ネットで一人歩きをして広まるキャッチコピーの流れも未だある。「顔面人間国宝」Sexy Zoneの佐藤勝利はテレビ番組の企画内でAIによる顔面偏差値調査で94点という高得点を記録。テクノロジーによる診断という点においても美しさを証明し、ファン以外の視聴者も納得させて「顔面人間国宝の佐藤勝利」と一般的な認知度をさらに高めた。
実際のタレントの美貌やポテンシャルを表した確かな説得力と、その背景にあるストーリー性との相乗効果で、芸能界でも頭が1つ抜きんでた存在になっていく。これら例のように“重要なもの”ではあるが、秀逸なキャッチコピーがあればタレントが売れるというわけでもない。ブレイクした後から付いてくるパターンもある。現在のタレントのキャッチコピーの在り方も多様化しつつあり、魅力を分かりやすく表現する一連の流れは今後も続きそうな気配だ。そんな、キャッチコピーの“妙”もタレントの魅力の一つとして楽しんでいきたい。
(文/Kanako Kondo)