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“キャッチコピー先行型”タレントの復活、その背景とは?

  • 「1000年に一度の美少女」として知れ渡った橋本環奈

    「1000年に一度の美少女」として知れ渡った橋本環奈

 近年、キャッチコピーとセットで紹介されるタレントが近年、再び増加傾向にある。インパクトを狙ったキャッチコピーは、昭和のアイドル時代から続く定番の売り出し方であったが、「“国民的美少女”と言えば後藤久美子」のようにタレントの個性を表した昭和の時代と比べると、近年はキャッチコピーそのものが先行しているケースが目立つ。なぜそのような変化が起こったのか。80年代にアイドルの宣伝に携わった関係者の話を聞くとともに、昭和から現在にかけてのタレントとキャッチコピーの関係性について紐解いていく。

キャッチコピー先行売りの定着、インパクト重視を狙う“新人タレント”

  • 桜井日奈子は「岡山の奇跡」

    桜井日奈子は「岡山の奇跡」

 『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)に出演中の今田美桜は「福岡一の美女」、映画『マーマレード・ボーイ』で主演を務める桜井日奈子は「岡山の奇跡」、『私に××しなさい!』『ドルメンX』などViViモデルで女優の玉城ティナは「美少女すぎて息ができない」。これらのようにキャッチコピーとセットで紹介されるタレントが近年、再び増加傾向にある。Instagramから人気に火が付き「世界一の美少年」と騒がれている翔も今田と同じく『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』に出演しネットを賑わせた。

 グラビア界でも『宮本から君へ』(テレビ東京系)にも出演する華村あすかは「グラビア界異例の新人」「原宿発のシンデレラガール」などと称され、他にも「尻番長」倉持由香、「なにわのブラックダイヤモンド」橋本梨菜、「神の造形」馬場ふみか、「黒船、再来。」アンジェラ芽衣など、タレントを売り出す際にキャチコピーを付けるのが、再び定番化してきているのだ。

関係者が明かす80年代アイドルキャッチコピー秘話「関係各所すべてに許諾が必要でした」

 昭和時代のタレント(特に歌手)のデビューの際は、キャッチコピーとのセットが常だった。「あなたの心の隣にいるソニーの白雪姫」天地真理、「一億円のシンデレラ」榊原郁恵といった“ザ・昭和”感満載なものから、「ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)」中森明菜、「16歳、まだ誰のものでもありません」井森美幸という衝撃的なフレーズまで、今聞くと「えっ?」と驚くようなキャッチコピーが溢れていた。「国民的美少女」のキャッチコピーで名を馳せた後藤久美子は“美少女ブーム”のきっかけとなり、彼女のキャッチコピーを冠した『全日本国民的美少女コンテスト』は1987年から現在も開催され、上戸彩や武井咲や剛力彩芽など日本を代表する女優を多く輩出した。

 だが、中森明菜は「少女A」以降はアイドル然とした方向性ではなく、“大人びた少女”という路線に変更。デビュー時には“覚えてもらう”ためのフックとして必要不可欠だったキャッチコピーだが、それをどのタイミングで外すのかも難しいものであった。一方で “元祖バラドル”として現在も活躍する井森美幸は「まだ誰のものでもありません」と自らネタにしている。このように後世に残るフレーズとなったものもあり、タレントのキャッチコピーは視聴者に大きなインパクトを与えるものだった。

 80年代に荻野目洋子や酒井法子などを擁したビクターで宣伝に関わっていた、現ビクタースタジオ飯田雅之氏に、当時のキャッチコピー文化について話を聞くことができた。「当時のアイドルは春先に一斉にデビューをする中で、各社が“推し”の新人を決めます。春、夏と年末にかけてレコードを3枚ほど出して、年末の賞レースで新人賞を狙うというのが王道の売り出し方でした。まっさらな新人の“売り”を伝えるものとしてキャチコピーは重要なものであり、タレントの魅力を表すシンプルな言葉が基本でした。新人なので宣伝費用がない中で担当者が主導となり、試行錯誤してプロモーション部門、制作部門それぞれの上司、さらに所属芸能事務所に了解を得た上で決めていました。それくらい重要なものだったのです」(飯田氏)

「1000年に1度の美少女」から“キャッチコピー先行”再び、SNSが浸透を後押し

  • 今では貴重な姿、アイドル時代の橋本環奈

    今では貴重な姿、アイドル時代の橋本環奈

 その後、90年代のCDセールス最盛期を経て、CD不況が叫ばれる2000年代に差し掛かるとキャチコピーとセットで売られるタレント・アイドルは減少していく。そんな、タレントのキャッチコピーの在り方に大きな変化が起こったのが2013年。世間を賑わせた「1000年に1人(1度)の美少女」橋本環奈の登場だ。橋本のキャッチコピーのインパクトは、インターネット掲示板やSNSで拡散されていき、彼女の認知度は地方のローカルアイドルから一気にお茶の間の女優クラスに。その後の活躍ぶりは周知の通り。また、橋本の「1000年に1人の美少女」をもじるかのように、その後も「2000年に1人の〜」「1万年に1人の〜」といったキャッチコピーを付けたアイドル・タレントが続出。現在は「1000年に1人」と称されるのは橋本環奈以外にも複数人存在し、1000年に1人なのにも関わらず“一般化”している印象すらある。

 橋本の特異性は、事務所の狙いではなく、一般のネットユーザーが投稿した写真と言葉が独り歩きをしていったストーリー性にあった。そしてもちろん、そのキャッチコピーを体現する個性・美貌を本人が持ち得ていたことが最大のブレイクの理由だろう。この橋本環奈のブレイクにより、一時はなりをひそめたキャッチコピーが見直されて、復活の流れに至る。その流れを後押しした背景には、AKB48をはじめとするグループアイドルブームの影響も多大にあるだろう。メンバーが膨大に膨れ上がる中で、タレント側が自己紹介の口上として自ら付けるパターンが定番となり、そこかしこでタレントのキャッチコピーが見られるようになっていったのだ。

「個性×ストーリー性」が浸透のカギ? キャッチコピー戦国時代に

 先述の飯田氏の言葉の通り、昭和時代のキャッチコピーはタレント個人の魅力を表す内容が主流だった。しかし、現在の傾向は、「後藤久美子といえば“国民的美少女”」ではなく、「ああ、国民的美少女のあの子だね」といった具合で逆転、つまりコピーが先行していることにある。そこで重要なのが、いかにしてコピーが認知・浸透されていくかだ。テレビやレコードが中心だった昭和の時代と現代の違いは、SNSやネット文化の発達により各所で情報が発生し、拡散していく点にある。さらに、“当事者”であるタレント側が付けるインパクトを狙ったものではなく、ネット・SNSユーザーやメディア側の“第三者の視点を介したもの”、つまり作られたものではなく“自然発生した言葉”として最初から設定され、拡散されていく。その結果としてキャッチコピー先行という現象になっているのだ。

 そこから現在、出自のストーリー性と個性(魅力)を表すものに進化させているタレントが、認知度を高めている。「岡山の奇跡」桜井日奈子や「福岡一の美女」今田美桜など、冒頭で紹介したタレントたちはこのパターンだ。そのほか、ネットで一人歩きをして広まるキャッチコピーの流れも未だある。「顔面人間国宝」Sexy Zoneの佐藤勝利はテレビ番組の企画内でAIによる顔面偏差値調査で94点という高得点を記録。テクノロジーによる診断という点においても美しさを証明し、ファン以外の視聴者も納得させて「顔面人間国宝の佐藤勝利」と一般的な認知度をさらに高めた。

 実際のタレントの美貌やポテンシャルを表した確かな説得力と、その背景にあるストーリー性との相乗効果で、芸能界でも頭が1つ抜きんでた存在になっていく。これら例のように“重要なもの”ではあるが、秀逸なキャッチコピーがあればタレントが売れるというわけでもない。ブレイクした後から付いてくるパターンもある。現在のタレントのキャッチコピーの在り方も多様化しつつあり、魅力を分かりやすく表現する一連の流れは今後も続きそうな気配だ。そんな、キャッチコピーの“妙”もタレントの魅力の一つとして楽しんでいきたい。

(文/Kanako Kondo)

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