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「まるで格闘ゲーム」とネットで話題の大相撲、番組プロデューサーに聞いた若年層への訴求戦略

 2018年に入り、日本の国技である大相撲にある変化が起きている。インターネットテレビ局のAbemaTVが1月場所から中継を開始し、“お堅い”イメージの相撲を、格闘ゲームのような演出をしたり、力士をトレーディングカードのように表現している。その中継をみた若年層の視聴者から、「これなら相撲見るわ」「普通に面白い」とネットでも話題に上がった。5月場所を控えた今、その斬新な演出の意図をAbemaTVスポーツ局プロデューサー、鈴井聡太郎氏に聞いてみた。

大相撲をカッコいいものとして、若者に届けたい

――相撲中継を開始した狙いは?
鈴井P AbemaTVはマスメディアになろうとしている中で、日本中のメジャースポーツを視聴者に届けて行きたいと思っています。昨年は横浜DeNAベイスターズとお付き合いをさせていただいて、その反響がかなり良く、スポーツの力をまざまざと僕らも感じました。そこで日本のメジャースポーツと考えると、野球、サッカー、相撲です。日本での3大人気コンテンツを押さえていきたいという思いで、去年の夏から準備をして2018年1月場所から大相撲の番組を開始しました。

――相撲ファンは年配の方のイメージがありますがAbemaTVの視聴者は層が若いという印象があります。視聴者の乖離はないのでしょうか?
鈴井P  NHKさんの相撲中継の視聴層はおそらく50代からそれ以上が中心。僕らが狙うのはその下の10代から40代、いわゆるスマホ世代の方たちです。私たちはNHKさんですでに相撲を楽しまれている方ではなく、まだ相撲を知らない世代や、相撲中継は見たいが、その時間にテレビの前に座ることができない視聴者に相撲を届けていくべきだと考えています。

――どのような相撲コンテンツを展開していますか?
鈴井P 朝8時半から18時までの全取組の「生中継」と、幕内の取組の「見逃し放送」、、23時からその日の見どころをまとめた「ダイジェスト」を放送しています。その中でもダイジェスト版の反響が高いです。タイトルの通り、その日の取組を一挙にダイジェストでお届けするのはもちろん、独自のインタビューやVTRなど、AbemaTVでしか見ることが出来ないオリジナル要素を多く盛り込んでいます。

――AbemaTVならではの視聴者の反響は?
鈴井P 朝8時半からの若い衆の取り組みの中継を行っているのは今のところAbemaTVだけです。力士の友人や親御さんたちも見てくれているようですね。今まで地上波のテレビでは見られなかった部分なので、たくさん反響も頂いています。

――メジャーになる前から取り上げられることで、相撲ファンの育成にもつながる可能性もありそうですね。
鈴井P 若い衆の中にもダイヤの原石みたいな力士がたくさんいます。大鵬さんの孫、朝青龍さんの甥、そういう注目力士もいます。大鵬さんの孫と朝青龍さんの甥の“お宝カード”がある日はWebなどのニュース媒体でも取り上げられていますね。

力士の個性を視覚的に演出、身近に感じてもらいたい

――「格闘ゲームみたい」、「トレーディングカードみたい」と話題になっていますが、どのような狙いがあるのでしょうか。
鈴井P 相撲は誰もがどこかで触れたことがあるものです。ですが、どこか“自分が見るものではない”というフィルターをかけている若者も多いと思います。私たちは“若貴ブーム”を目の当たりにしていない、相撲をよく知らない若い世代に振り向いてほしい。そのために、日本の伝統的な国技である相撲を“カッコいいもの”として見せていきたいという思いがあります。若い力士たちが4 メートルほどの土俵の中で魂をぶつけ合っている。その臨場感を伝えるのが番組としての基本です。そのうえで、デザインに関しては花札をモチーフにして、演出のデザインなども考えています。

――パラメーター入りの力士の紹介画面が、「トレーディングカードみたい」と言われていますね。あれはどのように作っているのでしょうか
鈴井P 相撲メディアの関係者、記者さんなど、有識者の方々にご協力いただき作成しています。力士とも交流があり、人となりも分かっている方たちにアドバイスを頂きながら作っています。

――パラメーターに関して苦情や意見はないのですか?
鈴井P 実際に意見やクレームを頂いたことはないですが、あった場合はもちろん受け付けます。パラメーターは、技・力・速さ・体力は共通項目として置き、右下の項目だけは力士のパーソナルな魅力を表すため、力士ごとに異なった項目にしています。人格者としても知られている横綱の鶴竜関は「優しい」、逸ノ城関はMr.ビーンが好きなので「ビーン」、御獄海関はバナナが大好物なので「バナナ」、千代丸関は「寝る」、魁聖関はかなりのゲーマーなので「ゲーム」、格闘技のトレーニングを取り入れている石浦関は「格闘」といった項目になっています。
――力士が成長していけばこのパラメーターも変わっていくわけですね
鈴井P 皆さんのトレーニング状況や、巡業での成績も加味して随時更新していきます。同じ意図でキャッチコピーも独自に付けさせていただきました。現在の日本相撲協会の広報部長を務める芝田山親方にも相談した際には、「これ、力士たちが嫌な気持ちになってないか?」と仰った後に「俺だったら右下はスイーツだな」なんてご意見をいただきました。相撲は“お堅い”イメージが世間にはあるかもしれませんが、実際はそんなことはありません。
――なぜそのような項目を設定したのでしょうか?
鈴井P 「歌の人ね」「バナナの人ね」そういう風に相撲以外の入り口で力士を憶えてもらうためです。そういう心に引っかかる部分を作ることを意識しています。

プロポーズ秘話まで!? 力士の人間味に着目、本番の期待感をあおる

――番組中のテロップなど、相撲に関係ない情報も多く盛り込んでいますね。
鈴井P ベイスターズの野球中継で成功した演出を取り入れています。「阪神の鳥谷選手が、息子の保護者リレーに出場してごぼう抜き」というようなテロップを放送中に入れたところ、「そりゃそうだ!」と視聴者の間で話題になり、何万リツイートもされたんです。相撲では「プロポーズを切り出せずに、観覧車を3周した」という喜風関のテロップを入れたところ、「力士もかわいいところあるんだね」と、ネットでバズりましたね。

――こういったテロップの情報はどうやって取得しているのですか
鈴井P 現場にいる記者の方々とのネットワークで力士の情報を取得しています。“記事にするまでもないけれど、面白い”というネタをみなさんすごくいっぱい持っているんです。スポーツ記者の方々は、やっぱり業界を盛り上げたい気持ちをみなさん持っていて、非常に協力的ですね。

「一瞬の魂のぶつかり合い」を際立たせるための“演出”

――世の中の格闘技・スポーツの中で一番早く決着がつく種目という側面があります。取り組み開始までの“待ち”の時間も楽しんでほしいというような演出意図でしょうか?
鈴井P そうですね。あとは、AbemaTVはチャンネルがたくさんあり、スワイプで次のチャンネルにすぐ移動できるという側面があるので、視覚的に今は何の番組で何の時間なのかを、見た瞬間すぐに分かりやすく伝える意図もあります。制限時間いっぱいになって本番に差し掛かる時にはBGMを切ってしんとした空気を演出するほか、間に幕内力士のインタビューを挟んだりして、それが終わったら時間いっぱいになる、というようなリアルタイムの編集を行っています。力士の緊迫した表情を抜いたり、土俵の上に上がっている力士と優勝争いをしている別の力士を土俵の下で抜いたり。現場の臨場感を意識したカメラワークを心掛けています。

――若者の相撲に対するイメージを変えていきたいということでしょうか
鈴井P 力士に感情移入をしてもらい、“推し”の力士を作ってもらいたいんです。“応援していきたい”という要素がないと見続けることができないと思います。今は格闘ゲーム風に情報を出したり、バラエティー要素を盛り込みつつ力士の個性も伝えていき、思い入れを持ってもらうというフェーズです。力士の方たちはみんな驚くほど若い。話を聞くと、「ヒップホップ大好きです」といった方もいたり、普通の若者と変わらない感性をもっています。現場で取組を見ていると、ものすごい音を出してぶつかり合って、命をかけて土俵の上で戦っています。ものすごいパワーがあるスポーツであり、無差別級格闘技。そういう相撲の“凄さ”や頑張っている力士の姿、力士自身の“個性”を見せて、“若貴ブーム”の再来といえるムーブメントを作りたいですね。

鈴井P 世の中に色々な職業がある中で、力士という生き方を選んでいる方達は、みなさんそれぞれにドラマがあります。若い衆に話を聞くと、みなさん口をそろえて「一瞬に命をかけている姿を見てほしい」と仰います。“年配の方がおせんべいを食べながら見る”という昭和から続くイメージは未だにありますが、僕らの使命はそういう若い力士が活躍している姿や魅力をもっと多くの世代にも知ってもらい、そしてファンになってもらうこと。それが最終的に視聴に繋がっていくのだと信じています。
■AbemaTV 大相撲LIVE 5月場所
<幕内>
https://abema.tv/channels/world-sports/slots/E86QQBfNg7cGib
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