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(更新: ORICON NEWS

“心の闇解放”が芸能界のトレンドに 共感とデトックス作用により相乗効果

  • ”心の闇”のカミングアウトで共感を得る田中みな実 (C)ORICON NewS inc.

    ”心の闇”のカミングアウトで共感を得る田中みな実 (C)ORICON NewS inc.

 近年、芸能人が“心の闇”を赤裸々に告白する姿がよく見られる。以前は“心に闇を抱えている”=“精神的に疲弊している”印象があり、たとえテレビで話してもカットされることが多かっただろう。しかし、最近はさまざまなジャンルの芸能人が、むしろ積極的に心の闇を打ち明けており、ある種の“個性”として取り上げられる傾向にある。きらびやかな芸能界に身を置く有名人が“心の闇”を話すことで、むしろ視聴者から「人間らしい」と受け止められ、共感を得ているのだ。

“心の闇”オープン化、続々とカミングアウトしていく芸能人たち

 これまで、カメラの前では常に笑顔で対応するのが芸能人の基本であり、“心の闇”が表に出れば視聴者やファンに“引かれてしまう”というのが一般的な認識だった。隠し通すのが芸能界の暗黙の了解だったが、近年は自ら“心の闇”を打ち明ける芸能人が増えている。

 その代表格といえば、フリーアナウンサーの田中みな実だろう。TBSアナウンサー時代にぶりっ子キャラで男性人気を得ていたが、フリー転向後はそのぶりっ子キャラを覆すようなネガティブキャラが炸裂。『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)に出演した際には、親友に「SOS」や“結婚への焦り”を送ったLINEを公開。更に「誰かから必要とされたいんです!」と訴えるなど、“心の闇”を赤裸々告白している。

 そんな赤裸々告白で、過剰なぶりっ子キャラに嫌悪感を示していた視聴者にも変化の兆しが。闇の深い発言をする度に「めっちゃわかる」「友だちになりたい」といった共感するツイートが多数見られ、かつては敵視していた女性からの好感度も急上昇。実際、2017 年の『好きな女性アナウンサーランキング』(ORICON NEWS調べ)では、前年の7位から6位へランクアップしている。

 また、“ネガティブモンスター”と呼ばれ、人見知りで女性不信を公言していたオードリーの若林正恭も“心の闇”を解放するキャラクターが定着。2010年に放送されたバラエティー番組内で現在交際中の南沢奈央が、若林に抱きしめられるシーンを収録中、ディレクターに「やりたくない」と若林が直訴していたと告白。これに若林は「女優さんを抱きしめるなんて遠い世界の話だった」「お茶の間の反感を買うんじゃないかと不安だった」とネガティブさ全開の言い訳をしている。そのような人見知りっぷりやネガティブさは、いつの間にか視聴者にも受け入れられており、交際報道で若林への親近感や好意に気付かされたと、じわじわとショックを受けるユーザーがSNS上で散見された。

 他にも、バカリズムが新番組『青春高校3年C組』(テレビ東京)の記者会見の席で、若いタレントたちに対し「定期的に力の差を見せつけると、ものすごく気持ちがいいんですよ」と、どこか屈折した“心の闇”をちらつかせた。さらに、中居正広が『なかい君の学スイッチ』(TBS系)で、近づいてくる女性が「金目当てとしか思えない」と明かしたことで反響を呼んだように、テレビで明るく振る舞う国民的なアイドルも、トーク番組などで“心の闇”を隠さず告白するのが当たり前の光景になっている。

芸能人が身近な存在に思える親近感 “心の闇解放”が“今っぽさ”に

 その他にも、V6の岡田准一が『ホンマでっか!?TVスペシャル』(フジテレビ系)で、「役に入り込みすぎると常にギリギリのところまで自分を追い込んでしまう」と語り、「夜、気づくと1人泣きながら歩いていることがある」と告白。また、インスタグラムに投稿されたセレブ生活で大ブレイクしたGENKINGも、SNSで華やかな生活をアピールする一方で借金を背負っていたことを『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)で明かしている。

 だが、そのように自分を追い込み、自尊心の裏で芽生える“心の闇”は、一般人でも起こりうること。あえて“心の闇”を明かすことで好感度が急上昇することが顕著に。

 その背景には、ブログやSNSでの自己発信が一般的になり、自然体で身近な存在が求められるようになったことが挙げられる。過酷な芸能界で完璧な姿を見せ続ける芸能人が、実は“心の闇”を潜ませていることに「やっぱりひとりの人間だ」と、多くの視聴者が共感。その土壌が近年、より形成されたことは大きい。

“心の闇解放”番組のデトックス作用、出演者と視聴者の“救いの場”として機能

 『今夜くらべてみました』、『有吉反省会』(日本テレビ系)のように、現在のバラエティー番組では、芸能人がより“オープン”になれる環境が整ったとも言えるだろう。VTRやMCのいじりによって“心の闇”を発掘して笑いに変える番組が定番化し、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)では、“しくじり先生”が過去の失敗と、それによって抱えていた“心の闇”を吐露。公にすることで過去を清算し、現在の成功に説得力を持たせることに。

 このように、テレビを通して多くの人に“心の闇”(=本当の自分)を打ち明けることは、ひとつのデトックス効果があると言える。また、視聴者にとっても成功している著名人たちが同じ悩みを抱えていれば、その闇を共有していることへの安心感が得られる。そこには双方にとっての浄化作用のような“救いの場”が存在している。

 過去、“心の闇”が育ってしまった結果、休養に入らざるを得なくなった芸能人は多数いる。これまでは誰にも言わずに隠し通すことがプロ意識だった。だが、“心の闇”をため込む前に“ネタ”として解放できる時代が到来したのは、芸能界にとって好循環をもたらしたことは間違いない。
(文/今 泉)

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