(更新:)
ORICON NEWS
“狂気”を演じられる若手俳優・望月歩 リスクも伴う狂気役は役者を選ぶ?
『ソロモンの偽証』俳優デビュー 14歳にして闇を抱えた人物が孕む“狂気”を演じる
望月歩という名前を目にして映画『ソロモンの偽証』を思い浮かべる方も多いだろう。2014年に公開された同作で物語のキーパーソンとなる中学生・柏木卓也役を演じ本格的な俳優デビューを飾った彼は、ここでの鬼気迫る演技で一躍注目を集め、若手の実力派という評価を高めることとなった。当時望月は若干14歳だった。
奇しくも、前述した『アンナチュラル』第7話も『ソロモンの偽証』も“いじめ”がストーリーの根底にある構成となっており、望月が演じる役柄はその“いじめ”の渦中で、葛藤とそこから派生する闇を抱えてしまう人物として描かれる。“いじめ”という社会問題を正面から受け止め、その演技によってストーリーに深みをもたらせ、人物に二重三重の輪郭を与えることを完遂した。
2015年には連続ドラマ『マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜』(TBS系)で、ひきこもりの不登校児童も演じている。こうした、数々の作品で彼が見せる、闇を抱えた人物が孕む“狂気”には思わず息を呑み、目をみはるものがある。
バッシングにつながりかねない狂気 成功者は“狂気”を醸し出せる選ばれし役者のみ
だからこそ、この分野で成果を上げた俳優には錚々たる顔ぶれが並ぶ。古くは、黒澤明の名作『天国と地獄』(1963年)での山崎努、同じく黒澤映画『影武者』(1980年)での萩原健一、『蘇える金狼』(1979年)の松田優作、『太陽を盗んだ男』(1979年)の沢田研二などが挙げられるし、映画ではないが、1983年放送の実録ドラマ『昭和四十六年大久保清の犯罪』(TBS系)に主演したビートたけしは、その圧倒的な演技力で役者として大きなステップを踏み、そこから監督業へと自身を高めていくこととなった。
近年に目を転じても、『怒り』(2016年)の森山未來をはじめ、妻夫木聡、松山ケンイチ、松坂桃李など、引く手あまたの実力派俳優には、“狂気”を宿した人物を演じているケースが少なくない。言い換えるなら、大成する役者の“登竜門”的役柄とも考えられる。そして、そんな“狂気”を奥底に漂わせる人物像を、望月歩は十代にして(望月は2000年生まれ)相次いで成功させてきた。演技力は並大抵のものではないと言えるだろう。
事実、彼は、昨年放送の『母になる』(日テレ系)において、“狂気”とは無縁な、他人を思いやる心優しい“ナウ先輩”を演じ、ここでも視聴者の心を揺さぶっている。今期は『モブサイコ100』(テレ東系)にレギュラー出演し、ここでも異彩を放つなど、その実力に知名度が徐々に追いついてきた。“才気”がもたらす“狂気”のオールラウンダー、望月歩が今後どのような役を演じていくのか楽しみである。
(文/田井裕規)