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真野恵里菜、“アイドル女優”と呼ばれた5年の苦悩「アイドルとして残せなかったからこそ、後輩の道標になりたい」

 近年、話題作への出演が相次ぐ女優・真野恵里菜。アイドル卒業後は『みんな!エスパ―だよ!』(テレビ東京系)で腹黒い学園のアイドルを好演し大いにファンを裏切ってくれてから早5年。『とと姉ちゃん』(NHK総合)ではヒロインをいびる怖い先輩役、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)ではヤンママといった、かつてアイドルだったとは思えない振り切った芝居で女優としての評価を獲得。園子温監督作品をはじめ『不能犯』『坂道のアポロン』など話題作の出演が続き、この春はdTVの野島伸司脚本のドラマ『彼氏をローンで買いました』で主演を務める。

 そんな真野恵里菜へ奇しくもアイドルを卒業後、女優として5年目の記念日にインタビューを実施。最新主演ドラマへの思いや、“アイドル女優”として見られた苦悩などをストレートに吐露してくれた真野。過去の作品を絡めながら、デビューから現在に至るまでの女優活動について振り返ってもらった。

野島伸司さんから「役を託された」と信じて試行錯誤しています

 アイドル出身の女優として新たなポジションを築きつつある真野が、現代女性のリアルを描く野島伸司脚本のネットドラマ『彼氏をローンで買いました』(dTV、FOD配信)の主人公に抜てき。結婚という幸せを掴むために、猫を被りながら社会で生きるも、そのストレス発散の対価としてローンで彼氏を買うという大胆な役どころに挑戦している。まずは最新作の舞台裏について聞いた。

――数々の名作を残してきた野島伸司作品のイメージはいかがですか?
真野恵里菜 人間の“愛”について語っているイメージですね。6年前に『ウサニ』という舞台で野島さんとご一緒させていただきました。男はなぜ浮気をするのかっていうテーマで…舞台なので毎日演じる中で「男の人って…」って悲しい気持ちになったことがありましたね(笑)
――今作を演じてみての感想は?
真野恵里菜 タイトルを聞いて、「え?どういうこと?」って思って(笑)。情報解禁の時も衝撃的なタイトルに、ファンの方たちがざわついていました。現実感がありつつも、非現実感があって。野島作品はその時代の象徴となるテーマ、言葉が出てきますよね。自分には起こりえないと思っていても、ふとした時にドキッとしたりする。今作なら、「共働き家庭は離婚率が26倍」とか。現代ならではの恋愛事情、結婚事情が盛り込まれていて、きっと見ていて色々な気持ちが生まれる作品だと思います。
――今回のご自身の抜てきについて監督や野島さんから何か聞かされていますか?
真野恵里菜 実は…野島さんとは昨年の夏に何年か振りに「お元気ですか?」って連絡が来て私からも「元気ですよ」と返事をして以来、連絡を取れていないんです。この役を演じる上で注意すべき点や心掛ける点について野島さんに聞きたいなと思っていたんですけれど…。何も言葉がないということは、「真野、ちょっとやってみろよ」と野島さんから託されているのかなと勝手に解釈しました。今は自分なりに試行錯誤しながら撮影に臨んでいる真っ最中ですね。

――今作で演じる浮島多恵は真野さんと年齢も近く、美人受付嬢という設定もハマり役だなという印象を受けました
真野恵里菜 今まではわりとエキセントリックな役が多かったので、現代の社会人役をちゃんと演じるのは今回がほぼ初めてかもしれませんね。非現実的な役のほうが想像力を膨らませられるし、濃いキャラの場合であれば役を大きく作れるんですけど、今回はOLの役です。私は芸能のお仕事を16歳の頃からしているので、バイトも会社勤めも経験したことがありませんでしたので、難しい役だと思いました。
――ある意味、ひさしぶり(?)に“まとも”な人の役でしたね
真野恵里菜 そうですね。元ヤン母ちゃんだったり、超能力があったり(笑)。そういうエキセントリックな役のほうがやりやすいんですよね。でも視聴者の方でも実際にOLの方もいらっしゃると思いますし、そういう現実を知っている方を納得させないといけないのはプレッシャーでした。悩んでいた時にスタッフさんから「テレビ局の受付の子たちも人がいる時はピシっとしているけれど、人がいない時はお菓子をちょこちょこつまんだり、話したりしているんだよ」ってお聞きして、「あ、それなら私たちと同じだ!」って(笑)。

アイドル時代、「役者をやりたいです!」と大きい声では言えなかった

――本日(取材は2月23日)は真野さんにとって女優デビュー5周年というメモリアルな日です。改めて女優活動を振り返ってみて、どんな5年間でしたか?
真野恵里菜 実はアイドル時代、お芝居とハロプロ活動の同時進行は厳しいなという場面に何度も直面しました。それによって時に大切なものを諦めなきゃいけないこともありました。舞台の『ウサニ』とライブが重なって、いろいろな方に迷惑をかけてしまって。どちらも大切だからこそ、どちらにも迷惑はかけられない。だからちゃんと自分の中で区切りをつけたいなと思い、お芝居の道を進む決心をしたんです。

 でも自分から「演技の道に進みたいです!」と大きい声では言えませんでしたね。どうしたら役者になれるのか分からない。私と同世代で、以前舞台で共演した高畑充希ちゃんみたいな本物の役者さんの演技をすぐ横で見ていたからこそ余計に焦りのようなものを感じていました。だからアイドル卒業の際は「歌とか演技の表現の幅を広げられるようにここを旅立ちます」と本当にふわっとしたコメントしかできなかったんです。ファンの皆さんは「卒業後何するの!?」って不安になったと思います。
――で、卒業後初の作品が園子温監督の『みんな!エスパーだよ!』でした。腹黒い女子高生で、パンチラシーンもあって衝撃でした!
真野恵里菜 皆さんを驚かせてしまいました(笑)。もしかしたらファンの方を傷つけてしまったかもしれないけど、『みんな!エスパーだよ!』みたいな作品ってアイドルを卒業したからこそできたと思うんです。
――卒業後は順調に経験を積んでいますね。特に最近は話題作へも続々出演、勢いがすごいですね!
真野恵里菜 そう言っていただけることが増えたんですが、自分では全然分からないです。朝ドラの時も何度も何度もオーディションを受けてやっと『とと姉ちゃん』(NHK総合)で役を頂けてすごく嬉しかったのを覚えています。でもちょうどその頃初めてのミュージカルも決まって両方の撮影時期と稽古が被ってしまったんです。それこそ、アイドル時代の『ウサニ』の時と同じ状況になってしまったのですが、周囲の方の協力をいただきながら、「あの頃の自分とは違う。今の私ならきっとできる!」って自分に言い聞かせて乗り切りました。そこからは『逃げ恥』や鈴木おさむさんの舞台にも出させて頂けるようになり、現在に至ります。アイドル時代の経験も含めて、今まで歩んで集めてきたピース(仕事)は全部色も形も違うけど、この5年間を振り返ると、最近やっとそのピースがハマってきているのかなって思いますね。

役者、アイドル、グラビア…私の職業は見てくれている方が決めることだと思っています

――真剣に女優として向き合う中で「元アイドル」という肩書はいいこともあれば、それにより不本意な思いをされた経験もあったのではないですか?
真野恵里菜 それは今でもありますね。この仕事をしている以上、さまざまなご意見をいただきますし、中には辛辣なことを言われることもあるんですが、私自身は何と言われても目の前のお仕事に真摯に向き合っていくことが大事だと思っていますし、今となってはアイドル時代があったから今があると胸を張って言えるようになりました。
――そんなつらい時、背中を押してくれたのは何でしたか? どう乗り越えてきたのでしょうか。
真野恵里菜 過去に女優として関わってきた作品が背中を押してくれました。つらいときは、出演作を見直すんです。当時はがむしゃらだったから気づかなかった、色々な発見があります。「こんなに台詞が多かったのをよくやれたな」「これだけやれたから次もきっとできる!」って自分を励ましてきました。
――真面目!
真野恵里菜 よく言われます(笑)。でも、今でも自分から「私は役者です」とは言いたくないんです。グラビアやモデル活動など、いろいろやらせてもらっていますが、そういう活動を見て皆さんから私はどう見られているんだろうって逆に思うんです。まだ私をアイドルだと思ってくれている方もいれば、逆にアイドル時代を全く知らないで女優だと思ってくれている方も、写真集を見たらグラビアの子だと思う方もいるかもしれない。誰かに認めてもらうことで初めて自分の職業が成立すると思っています。だからまだ自信を持って「私は役者です」とは言えないですね。皆さんにそう思ってもらえる日がくるようにもっと頑張ろうって思います。
――近年、女優に転身するアイドルからが増えていますが、真野さんはその先駆者だったのかなと思うのですが…?
真野恵里菜 いやいやいやいや〜! 全然そんなことないです。
――そんなことあるんじゃないですか?
真野恵里菜 全然そんなことないです。でも、卒業してからずっと思っていることは、ハロプロ時代に(アイドル時代に)自分が残せるものがなかったからこそ、卒業してからは少しでも女優をやりたいっていうハロプロの後輩のために“道”を耕せていたらいいなと。

私がデビューした時にはハロプロも既に長い歴史がありましたし、17歳の女の子がデビューして早々に2000人規模のライブができるなんてやっぱりあり得ない話だと思います。ハロプロ時代は先輩達が築いてくれた道を歩かせて頂いていました。ですので、私も後輩達の道標になれたらいいなと思っています。

女優としての“今”が楽しい。でも、今もライブやりたいと思っちゃうんです

――実際、ハロプロの後輩であり、モー娘。を卒業した工藤遥さんも今は女優としてスーパー戦隊のヒロインをやられていますね。工藤さんもアイドルを卒業して女優の道に進む際、真野さんに相談したと聞いています。
真野恵里菜 工藤は工藤できっと「真野さん」って名前をたくさん聞くと思うんですよね。目指している道も違いますからかわいそうだと思うし、私のことは意識しないで自分らしく進んでほしいと思います。
――真野さんはご自身の女優としての武器についてはどのようにお考えですか?
真野恵里菜 私は単純だと思います。よく落ち込むんですが、一度爆発したらあとはスッキリ、次の日は元気です。(笑)。単純というか…。おいしいもの食べたら元気になるし、早起きがつらくても睡眠時間が少なくても現場にいったらやっぱり楽しい。
――役が入りやすいし、抜けやすいってことですかね?
真野恵里菜 そうですね。ドラマでも、ワンシーン撮ったら次のセリフ、もう一度同じことやってくださいっていわれたら、難しいです(笑)

――今はミュージカルがブームですし、女優さんは舞台や芝居でも歌って踊ることも多いですよね。アイドル経験のある真野さんも歌って踊れて、強い武器だと思うんですが…?
真野恵里菜 たぶん私、(世間のイメージでは)“歌って”って付いていないと思いますよ?(笑)
――そうですか? 女優さんとしてまた歌を披露する可能性は?
真野恵里菜 昨年の『覆面系ノイズ』や『黄桜』のCMなど歌う仕事は、アイドル時代に培った経験があったからこそいただけたお仕事だと思うんです。自分から「歌をやりたいです!」と言える程の自信はないけれど、もしそのような場を頂けるのであれば全力で向き合いたいですね。
――きっとニュースになりますよ!
真野恵里菜 今でもやっぱり“ライブもやりたいな”って思っちゃうんですよね〜。今ライブをやりますって言ったら、どのくらいの人が集まってくれるのかな…? もし、もし今後ライブをやる機会があれば…おそらく年に1度とかだと思うので、その日は真野のためにスケジュールを空けておいてもらえたら嬉しいです(笑)!

(文/kanako kondo、写真/近藤誠司)

真野恵里菜 『彼氏をローンで買いました』インタビュームービー

dTV×FOD共同製作ドラマ『彼氏をローンで買いました』

大手外資系商社の受付嬢として働く浮島多恵(真野恵里菜)は同じ会社に付き合って1年になる将来有望な彼氏・白石俊平(渕上泰史)がいる。非の打ち所のない彼氏だが、俊平と結婚するために日々猫をかぶり本音を言えない多恵。猫を被り続けることに限界を感じていたある日、かつての先輩・麗華(長谷川京子)に相談し、自分をさらけ出せる彼氏(横浜流星)をローンで購入することを提案される。

脚本:野島伸司
演出:加藤裕将
出演:真野恵里菜、横浜流星、久松郁実、小野ゆり子、淵上泰史 長谷川京子
オフィシャルサイト:https://pc.video.dmkt-sp.jp/ft/s0007006

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