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“劇場型会見”増加のワケ 視聴者を辟易とさせながらも強烈な“画力”で圧倒

  • 離婚を「勝ち取りました!」とガッツポーズを決めた松居一代 (C)ORICON NewS inc.

    離婚を「勝ち取りました!」とガッツポーズを決めた松居一代 (C)ORICON NewS inc.

「離婚が成立しましたっ!」と、朝の情報番組を狙ったかのように早朝から(午前8時30分回見開始)松居一代がガッツポーズを見せたかと思えば、「こんな妻で申し訳ありません…」とすっぴん姿ですすり泣く藤吉久美子。いずれも、男女のドロドロ報道が続いた今年を象徴する会見と言えるだろう。こうした、視聴者を辟易させながらも、見る者を強烈な“画力”で圧倒する“劇場型会見”が近年増えつつある。増加傾向にある理由を、その変遷を振り返りながら検証してみたい。

90年代まで頻発した“劇場型会見”、多くの迷シーン、迷台詞が誕生

 この“劇場型”という言葉だが、かつては事件や政治などを形容する際に使われていた。たとえば1984〜85年に発生した「グリコ・森永事件」では、警察を手玉に取る犯人側が主人公で、警察が脇役にまわる“舞台”をマスコミと世間が観賞するという、まさに“劇場”のような構造になっていた。政治では、総理大臣が逮捕されるまでに至った1976年のロッキード事件。近年では、2005年の郵政民営化の是非を問うた総選挙で、“主演”の小泉純一郎首相(当時)に、“脇役”が自民党の抵抗勢力、それを報道したマスコミと有権者が“観客”という「小泉劇場」が繰り広げられた。こうした“劇場型”は、芸能人や有名人の結婚・離婚・不倫・謝罪会見でも同様の傾向が多く見られた。

 古くは美空ひばりの離婚会見における「理由をお話したいのですが、それを言ってはお互いに傷つける」(1964年)や、松田聖子が破局会見で泣きながら語った「生まれ変わったら一緒になろうね」(1985年)、果ては勝新太郎が逮捕後の会見で放った「もうパンツを履かない!」(1990年)などは、歌舞伎のようにケレン味たっぷりの台詞回しとも言え、“劇場型会見”を象徴する“名(迷)台詞”として今も芸能史に刻まれている。

 また、バブル期の芸能人・著名人同士の結婚では、バカでかいウェディングケーキに数百人の参列者への豪華な引き出物という数億円もかけた“ハデ婚”が主流となり、結婚式自体が壮大な“劇場”となった。だが、バブルも弾け、芸能人の結婚にも地味婚ブームが到来、それと比例するように“劇場型会見”も徐々に鳴りを潜めて行った。

文春砲に代表される特大スクープが良質な“脚本”となり、新たな“迷優”たちを生む構図に

 だが2010年代に入ると様相が一変。世間を騒がせた佐村河内守氏の“ゴーストライター”会見(2014年)や、野々村竜太郎氏の“号泣会見”(2014年)、小保方晴子氏の“STAP細胞はありま〜す!”会見(2015年)など、芸能人以外の人物が一躍“主役”に躍り出ることに。彼らのドラマティックな会見が開かれるや、またもやマスコミと視聴者がそれに飛びついたのである。

 ただ、それらの報道が以前と異なるのは、昨年のゲスの極み乙女・川谷絵音とベッキーの不倫騒動謝罪会見や森友学園・籠池泰典氏の会見にみるように、いわゆる“文春砲”的な週刊誌の特大スクープが、以前よりもさらに発端となっている点だ。週刊誌のスクープが脚本(もしくはプロット)となり、当事者たる人物が“主演俳優”として記者会見という“舞台”に立ち、視聴者が“観客”として巻き込まれるという流れになっている。

 今ではSNSの一般化により、多くの視聴者が一連の“ストーリー”を把握しており、会見自体を「いつだろうか?」と、その“初舞台”を熱望するエンタメ的なコンテンツにすらなっている。最近の大相撲暴行問題にしても、そうした流れの中で「何で貴乃花親方は公の場に出てこないんだ?」といった批判の声も上がってくる。そして会見があればあったで、衆人環視の中に引っ張り出され、内容の良し悪しや事のいきさつはともあれ、当の本人は“主演”を演じることとなるのだ。

同じ“息子の不祥事会見”でも明暗くっきり、立ち回り次第では諸刃の剣に

 “劇場型会見”が続くと、その過剰報道に食傷気味な人が多くなるのも事実。『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)でコメンテーター・長嶋一茂が、松居一代の会見前に「ごめんこれ、(番組終了後の)10時以降にできないかな」と辟易したり、連日の大相撲報道には『とくダネ!』(フジテレビ系)の小倉智昭が「聞いていて、だんだん私は腹が立ってきたんですけどね」と憤慨したりと、業界内からも疑問の声が上がるほど。だが一方で、松居の会見で「がんばれ!」エールを飛ばす謎の応援隊や、藤吉の会見前に披露された夫・太川陽介の「ルイルイ会見」もあったりと、主役に花を持たせるかのような“助演者”までが登場するなど、“劇場型”ストーリーにのめり込んでしまう人も多い。

 悲喜こもごもの“劇場型会見”。息子(清水良太郎)の不祥事の謝罪会見をする父親・清水アキラに同情の声が上がれば、同じく息子(高畑裕太)の謝罪会見で、視聴者の反感を買った高畑淳子のようにヤブヘビになる場合も。まさに十人十色の人間模様が浮きぼりになるこの舞台は、その立ち回り次第で諸刃の剣になのは間違いない。

 正直、大味すぎて“胃もたれ”を起こしている視聴者が大半だと思われるが、まだ見ぬ大物“迷優”の登場をどこかで待ち望んでいるのもまた、視聴者心理と言えるのかもしれない。

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