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「渋谷区観光協会」が語る“渋谷復権”への取り組みとは?
■80年代後半、アメカジ好きのチーマーの隣に必ず“キレイな女性”がいた
古き良き渋谷文化を担った“商店街”が力を失い、渋谷の個性が消えた
そんな中、渋谷系ファッションの衰退と入れ替わる形で、歌手・きゃりーぱみゅぱみゅやモデルの藤田ニコルらがファッションアイコンとなり、“cawii文化”の原宿系ギャルが台頭。若者ファッションの聖地は“渋谷”から“原宿”へと移行していった。そうした流れもあって、『egg』『BLENDA』『nuts』といったギャルカルチャーの担い手だった女性ファッション雑誌が次々と休刊。渋谷系ギャルを中心に編集していた『Popteen』も原宿系ギャルを中心にするなど、明確にファッション・ムーブメントが変化していった。
オタクカルチャーの“一般化“で秋葉原が台頭
「2000年代の中頃、オタク系の一部もギャル男ファッションをしていた」と植竹氏が語るように、テンプレ化されたギャル男ファッションはオタク系さえも取り込んでいた。しかし、2006年ごろからオタク文化が世間で“一般化”されはじめると、多くの人たちが、自ら「オタクである」と大手を振って言えるようになっていった。ちょうどその頃、秋葉原は再開発でオシャレな街へと変貌していた時期でもあり、コアなオタクだけでなく、アニメやマンガ、フィギュア好きが気軽に足を運べる“明るく楽しい街”として秋葉原が台頭。さらに、『AKB48』の躍進でアイドルの聖地として認知されたことで、若者の“渋谷離れ”に拍車をかけた。
“渋谷ブランド“の創造と確立を担う「渋谷区観光協会」の担当者はそういった若者文化の変化について、「オフィスビルの増床や、デジタルデバイス経由でのショッピングの普及などで、以前よりも渋谷に集まる若者が少なくなりました。また、10代が主役の時代から20代〜30代以上のビジネス世代にシフトしたため、渋谷の個性がぼんやりしてしまっているのでは」と分析する。
え、ホント!? 渋谷の盛り上げ役にパリピを任命
「若い世代の自由な発想で渋谷から新しいトレンドを発信したりイベントを行う事で、渋谷の街に日本を元気にするエネルギーが集まってくると思います。マナーやモラル感を忘れずに、渋谷で遊んでもらうことで本当の“カッコ良く遊ぶ”という文化が根付くことを期待したいと思います」と、若者カルチャーの旗振り役として、全日本パリピ選手権初代王者にもなったパーティーロッカー・あっくんを渋谷区観光大使パーティーアンバサダーに任命。さまざまな手法で渋谷“復権”に取り組んでいる。
現に、パリピの存在は今後の渋谷を盛り上げるためには欠かせない要素となっている。近年の渋谷を中心としたハロウィンの盛り上がりや、野外フェスの人気、ラブホ女子会、ナイトプールなど、パリピと呼ばれる人々が動かす経済効果は大きく、博報堂・原田曜平氏の著書『パリピ経済―パーティーピープルが市場を動かす―』(新潮新書)が話題にもなった。また、渋谷のギャル全盛期に憧れた女性たちの間で、全身を黄色、緑や紫などビビッドな原色系で染め上げた“異色肌ギャル”が誕生。「ネオ渋谷! ネオ新宿!」という掛け声で、異色肌ギャルたちも渋谷を盛り上げようとしている。
「年末カウントダウン」「盆踊り大会」渋谷復権のカギは“リアルで集まる“理由
前出の渋谷区観光協会担当者が強調するように、“若者が集まる渋谷”を取り戻すための動きは加速している。今年の8月5日、スクランブル交差点周辺から道玄坂、文化村通りで交通規制をおこない、渋谷のど真ん中で『第1回 渋谷盆踊り大会』を実施。30度を超える暑さの中、来場者数は総計約3万4000人におよんだ。さらに、10月21日から22日には、渋谷の街が音楽で満たされる『渋谷音楽祭』を開催。渋谷の街全体を音楽ステージに見立てた音楽イベントで若者を呼び寄せる。
こうした渋谷の新しいチャレンジについて植竹氏は「去年の年末は、渋谷駅前で年越しカウントダウンを行い、車道の一部を通行止めにして歩行者天国にするなどして7万人近い人を集めました」と渋谷の取り組みを評価する。2000年前後、週末の渋谷は歩行者天国になっており、多くのカルチャーがここから発信された点も忘れてはいけない、と同氏は強調する。
「今って、ナンパも、買い物も、仲間との繋がりも全部SNS上で済んでしまうけど、“リアルで集まる場所”からカルチャーが生まれる。今後、渋谷がどれだけ“人が集まる理由”を作れるのか、“渋谷復権“はその点が重要になってくると思います」(植竹氏)