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「渋谷区観光協会」が語る“渋谷復権”への取り組みとは?

  • かつては雑誌『egg』から飛び出したようなギャル&ギャル男が渋谷中に溢れかえっていた

    かつては雑誌『egg』から飛び出したようなギャル&ギャル男が渋谷中に溢れかえっていた

 1990年代から2000年代にかけて、日本のストリートファッションカルチャーの中心は“渋谷”だった。しかし、SNSの普及、ギャル文化の細分化、原宿カルチャーの台頭などさまざまな要因で渋谷が持つ影響力は低下。いま、“若者の街・渋谷”としての存在感は希薄になっている。そこで今回、渋谷“復権”への展望を渋谷区観光協会の担当者と、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』のアイコンとして活躍した植竹拓(ピロム)氏に聞いた。

■80年代後半、アメカジ好きのチーマーの隣に必ず“キレイな女性”がいた

 1934年、駅直結の東横百貨店(現在の東急百貨店)が開業しターミナル駅としての存在感を強め、70年台に入ると「渋谷パルコ」「東急ハンズ」「渋谷109」が誕生。それ以来、若者のファッション文化を牽引してきた渋谷。80年代後半以降は、アメカジファッション(渋カジ)を身に付け、渋谷センター街にたむろする若者たちがチーマー文化を形成した。当時の渋谷について植竹氏は、「渋谷センター街の“危険な雰囲気”に憧れました。ヤンチャでハイセンスな人がたくさんいて、その隣にはキレイなお姉さんが必ずいる。そんな女性たちにモテたくて渋谷を目指しました」と振り返る。
  • “ゴングロメイク”で一大ムーブメントを築いたeggモデルたち(egg/大洋図書)

    “ゴングロメイク”で一大ムーブメントを築いたeggモデルたち(egg/大洋図書)

 90年代、ギャルの間では歌手・安室奈美恵の影響を受け、ミニスカートに上げ底ブーツの“アムラー・ファッション”が人気に。「渋谷109」のギャルブランドへのシフト、ギャル雑誌『egg』によるゴングロメイクブームなど、“渋谷発”のストリートカルチャーの影響力が日に日に強くなっていった。「雑誌やTVが渋谷を若者のブームとして取り上げると、オシャレに興味を持つ人たちは、雑誌のストリートスナップに載るため渋谷に集まるようになった」と同氏。雑誌に載るようなオシャレな有名人がいて、彼らのファッションを盗むために渋谷へ行く。すると、「同じ目的の奴らと見知った仲になって、彼らと横の繋がりもできていった」のだと言う。
 渋谷にいるオシャレな有名人を目当てにメディアや若者が集まる。そこから生まれる“出会い”や“刺激”を求めて、より多くの人が渋谷を目指す。このような好循環の元、渋谷系カルチャーは発展を見せた。その後、2006年には東急が男性向けのテナントフロア「109 MEN’S」を立ち上げ、渋谷ファッションカルチャーは成熟期に至る。しかし「ここがピークだった」と植竹氏は述懐する。

古き良き渋谷文化を担った“商店街”が力を失い、渋谷の個性が消えた

  • 1990年代後半から2000年代後半にかけて、“渋谷カルチャー”のアイコンとして活躍した植竹拓(ピロム)氏。

    1990年代後半から2000年代後半にかけて、“渋谷カルチャー”のアイコンとして活躍した植竹拓(ピロム)氏。

 2008年のリーマンショックによる不景気、消費税の増税、ユニクロに代表されるファストファッションの台頭などの要因から若者の消費行動が落ち込み、さらに、ネット通販の流行やギャル文化の細分化で“109神話”が崩壊。当時、ギャル&ギャル男カルチャーが急速に衰退していった状況について植竹氏は、「大資本が渋谷に入ってくると、古き良き渋谷文化を担っていた“商店街”が力を失い、渋谷の個性が消えていったのも要因のひとつでは」と説明する。渋谷には雑誌が提案するファッションをそのままトレースした若者たちが増え、オシャレなトレンドセッターたちはそれを嫌い、ハイブランドファッションに流れたり、あるいは渋谷系ファッションから卒業していった。

 そんな中、渋谷系ファッションの衰退と入れ替わる形で、歌手・きゃりーぱみゅぱみゅやモデルの藤田ニコルらがファッションアイコンとなり、“cawii文化”の原宿系ギャルが台頭。若者ファッションの聖地は“渋谷”から“原宿”へと移行していった。そうした流れもあって、『egg』『BLENDA』『nuts』といったギャルカルチャーの担い手だった女性ファッション雑誌が次々と休刊。渋谷系ギャルを中心に編集していた『Popteen』も原宿系ギャルを中心にするなど、明確にファッション・ムーブメントが変化していった。

オタクカルチャーの“一般化“で秋葉原が台頭

 また、若者の“渋谷離れ”の要因として秋葉原の台頭もあげられる。かつて、“オタク”は一部のマニアックな趣味を持った人たちの総称であり、“秋葉原”は彼らのホームグラウンドであった。しかし、2000年代中盤ごろからオタクへの印象が変化。2005年にはオタクを主人公にした『電車男』がTVドラマ・映画化され大ヒットするなど、“オタク”への世間のイメージは少しずつ変化していく。

 「2000年代の中頃、オタク系の一部もギャル男ファッションをしていた」と植竹氏が語るように、テンプレ化されたギャル男ファッションはオタク系さえも取り込んでいた。しかし、2006年ごろからオタク文化が世間で“一般化”されはじめると、多くの人たちが、自ら「オタクである」と大手を振って言えるようになっていった。ちょうどその頃、秋葉原は再開発でオシャレな街へと変貌していた時期でもあり、コアなオタクだけでなく、アニメやマンガ、フィギュア好きが気軽に足を運べる“明るく楽しい街”として秋葉原が台頭。さらに、『AKB48』の躍進でアイドルの聖地として認知されたことで、若者の“渋谷離れ”に拍車をかけた。

 “渋谷ブランド“の創造と確立を担う「渋谷区観光協会」の担当者はそういった若者文化の変化について、「オフィスビルの増床や、デジタルデバイス経由でのショッピングの普及などで、以前よりも渋谷に集まる若者が少なくなりました。また、10代が主役の時代から20代〜30代以上のビジネス世代にシフトしたため、渋谷の個性がぼんやりしてしまっているのでは」と分析する。

え、ホント!? 渋谷の盛り上げ役にパリピを任命

  • 「ウチらが一番カワイイし」という書き込みとともに、『異色肌』にギャルファッションを組み込んで広めたmiyakoさん。

    「ウチらが一番カワイイし」という書き込みとともに、『異色肌』にギャルファッションを組み込んで広めたmiyakoさん。

 “渋谷1強”の時代は終わり、原宿や池袋に若者が流れていく中、“渋谷復権”のための取り組みが進められている。そのための施策のひとつとして、渋谷区観光協会は“パリピ“(パーティーピープル)が持つ行動力や発信力、そして横の繋がりに期待を寄せている。
 「若い世代の自由な発想で渋谷から新しいトレンドを発信したりイベントを行う事で、渋谷の街に日本を元気にするエネルギーが集まってくると思います。マナーやモラル感を忘れずに、渋谷で遊んでもらうことで本当の“カッコ良く遊ぶ”という文化が根付くことを期待したいと思います」と、若者カルチャーの旗振り役として、全日本パリピ選手権初代王者にもなったパーティーロッカー・あっくんを渋谷区観光大使パーティーアンバサダーに任命。さまざまな手法で渋谷“復権”に取り組んでいる。

 現に、パリピの存在は今後の渋谷を盛り上げるためには欠かせない要素となっている。近年の渋谷を中心としたハロウィンの盛り上がりや、野外フェスの人気、ラブホ女子会、ナイトプールなど、パリピと呼ばれる人々が動かす経済効果は大きく、博報堂・原田曜平氏の著書『パリピ経済―パーティーピープルが市場を動かす―』(新潮新書)が話題にもなった。また、渋谷のギャル全盛期に憧れた女性たちの間で、全身を黄色、緑や紫などビビッドな原色系で染め上げた“異色肌ギャル”が誕生。「ネオ渋谷! ネオ新宿!」という掛け声で、異色肌ギャルたちも渋谷を盛り上げようとしている。

「年末カウントダウン」「盆踊り大会」渋谷復権のカギは“リアルで集まる“理由


 前出の渋谷区観光協会担当者が強調するように、“若者が集まる渋谷”を取り戻すための動きは加速している。今年の8月5日、スクランブル交差点周辺から道玄坂、文化村通りで交通規制をおこない、渋谷のど真ん中で『第1回 渋谷盆踊り大会』を実施。30度を超える暑さの中、来場者数は総計約3万4000人におよんだ。さらに、10月21日から22日には、渋谷の街が音楽で満たされる『渋谷音楽祭』を開催。渋谷の街全体を音楽ステージに見立てた音楽イベントで若者を呼び寄せる。

 こうした渋谷の新しいチャレンジについて植竹氏は「去年の年末は、渋谷駅前で年越しカウントダウンを行い、車道の一部を通行止めにして歩行者天国にするなどして7万人近い人を集めました」と渋谷の取り組みを評価する。2000年前後、週末の渋谷は歩行者天国になっており、多くのカルチャーがここから発信された点も忘れてはいけない、と同氏は強調する。
 「今って、ナンパも、買い物も、仲間との繋がりも全部SNS上で済んでしまうけど、“リアルで集まる場所”からカルチャーが生まれる。今後、渋谷がどれだけ“人が集まる理由”を作れるのか、“渋谷復権“はその点が重要になってくると思います」(植竹氏)

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